目指すべきは最高のユーザー体験
モバイル時代のCRMと題し、顧客と常にともにあるモバイル向けのコミュニケーション方法をメールやLINE、SNS、アプリなどチャネル別に解説してきた本連載(過去の連載はこちら)。最終回となる今回は、これらを組み合わせたマーケティング戦略の策定と実行について考えます。
コミュニケーションのデジタル化によって、顧客接点は増加し複雑に絡み合うようになりました。くわえて、ブラウザでの検索以外にもSNSでの情報収集など調べる手段が多様化しており、商品やサービスを選定する視点はより多角的になってきています。
このような背景をふまえ、私はブランドプロモーションとCSR、セールスプロモーション、CRM全ての顧客接点を通じて得られる体験「ユーザーエクスペリエンス」(以下、UX)を考えることが最も重要になると考えています。
デジタルを活用することで、様々な体験を創出することができます。現在注目されているAR、VR、AIといった技術で今まででは考えられなかった体験はもちろん、ターゲティングやマッチング技術の進化でより個人にあった体験の提供が可能になりました。そして肝となるのは、多くの選択肢の中から、どういった体験をユーザーに提供するのか取捨選択し、データや情報をどのように連携して伝えていくかを考えることなのです。
どこまで考えるのがUXなのか
昨今、UXの重要性は様々なところで問われていますが、そもそもUXとは何なのでしょう。あいまいな使い方をされることも多いキーワードですので、今回は日常のよくあるシーンを例に説明します。
突然ですが、もうすぐクリスマス、皆さんはいつまでサンタさんがいると信じていたでしょうか。今もいると信じている方、この質問は忘れてください(笑)。
さて、ここでは子供が欲しかったおもちゃをクリスマスに手に入れるシーンをもとに解説します。まず、子供にとってこの時の最高のUXとは何でしょうか?
きっと、単に欲しかったおもちゃを手に入れたということではなく、「サンタさんが寝ている間に欲しかったおもちゃをプレゼントしてくれた」と感じてもらうことが重要だと思います。
子供がこの最高のUXを体験するためには、クリスマスの飾りつけをしたり、クリスマスソングを歌ったりといった事前体験をしておく必要があります。親も、「いい子にしていないと、サンタさんが来てくれないよ」とサンタさんがいることを伝えておくべきでしょう。そして、サンタさんが来てくれたことを一緒に喜んであげるといった、事後の共感による満足度向上が何よりも重要です。
つまり、UXとは事前事後含めた全ての体験を指し、その全てを作り上げる活動がマーケターには求められています
では、今回の例に出てきた親は来年どうすべきでしょうか。例えば、子供が思っていたよりも遅くまで起きている可能性を想定して、サンタの衣装を着て直接渡すといったプランも考えられますね。このように、変化を踏まえてPDCAを回すことも、UXを高めていく上では大事になります。