SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第99号(2024年3月号)
特集「人と組織を強くするマーケターのリスキリング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究(AD)

バイラルを生み出す、ユーザーサプライズファーストの仕事術~ミクシィXFLAG スタジオの現場に迫る

 スマホアプリ「モンスターストライク」をはじめ、様々なエンターテインメントコンテンツを提供するミクシィのXFLAG スタジオ。ネットやTVなど様々なチャネルで施策を展開しているが、どのような考え方のもと、マーケティングは行われているだろうか? 同社で活躍するプロモーショングループ マネージャー 根本悠子氏と、同グループ 第1宣伝企画チーム リーダー 岡野吾朗氏に仕事の進め方を取材した。

SNSもゲームもコミュニケーションが主役

 根本氏はアパレル業界でキャリアをスタートし、インターネットサービス会社でのウェブコンテンツのプランナーを経て、2007年にミクシィに入社。求人サイト「Find Job!」のコンテンツのプランナーを担当した後、2008年SNS mixiのプロモーションチームに異動し、mixiのプロモーションやプロダクトオーナーを歴任。2014年に産休および育休から復帰後、現在はプロモーショングループのマネージャーとして、同社が展開するゲーム“モンスターストライク”(以下、モンスト)や、新規タイトルを含む様々なプロダクトのリサーチや宣伝、PR、販促、集客などの施策を統括している。

左:株式会社ミクシィ XFLAG スタジオ プロモーショングループ マネージャー根本悠子氏、右:同グループ宣伝第一企画チーム リーダー 岡野吾朗氏
左:株式会社ミクシィ XFLAG GAMES プロモーショングループ マネージャー根本悠子氏
右:同グループ宣伝第一企画チーム リーダー 岡野吾朗氏

 岡野氏は、前職でゲーム会社に所属し、ゲームの宣伝やCMなどの施策まで、様々な業務に携わった後、2015年にミクシィに入社。現在は、プロモーショングループ 宣伝第一企画チームのリーダーとして、メディアのプランニングやリサーチなどを担当している。

 両氏が所属するXFLAG スタジオといえば、モンストを提供しているイメージが強いが、実際はどのような事業を展開しているのだろうか? 率直に尋ねたところ、根本氏は次のように説明してくれた。

 「もともとミクシィは、求人サイト『Find Job!』から始まってSNS『mixi』で大きくなった会社。人と人とのコミュニケーションをとても大切にしていて、すべての企画にその考え方が踏襲されています。そのためXFLAG スタジオの理念としても、コミュニケーションが活性化し『みんなでワイワイ集まって楽しむ』という思想をゲームであれマーケティングであれ、全てに織り込むことにとても注力しています。そのなかで、いかにケタハズレなことをやるか。新しいことや驚きで、みなさんにバリューを感じていただけるコトを提供できるかを日々考えています。

 私達は『友達や家族とワイワイ楽しめる、“アドレナリン全開”のバトルエンターテインメントを創出し続ける』というスタジオミッションを掲げ、そのミッションの実践を通して、親しい友人や家族とともに楽しむ“バーベキュー”のように≪みんなと一緒に熱く盛り上がれる場所≫を提供するというB.B.Q.(バーベキュー)という戦略コンセプトを有しています。“ユーザーの方々がひとりではなく、みんなが集まって一緒に楽しめる空間をプロデュースすること”、そこに、私たちならではの付加価値があると考えています。これはまさに、ミクシィがこれまで培ったDNAがいまなお根付いている一つの例だと思います」(根本氏)

 さらに根本氏は、各プロモーションのキャンペーンにおいても、本当に興味を持ってもらえるのか。視聴者やユーザーにまだ見ぬ驚きを提供できているのか。常に意識し、その答え合わせをクイックにできる組織だという。

“モンストやるなよ”キャンペーンが生まれた背景とは?

 ゲームアプリのマーケティングというと、リテンションやアドテクノロジーを活用したウェブプロモーションを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。もちろん、同社ではその領域にも強みを持っているが、もう一つ重要視しているものがある。

 「もちろん数字も大事ですが、安いCPI(Cost Per Install)で沢山の新規ユーザーを獲得できたとしても、そのユーザーにゲームで楽しんでもらえなければ意味がありません。そのため口コミや話題が広がるような施策を組み込むことも意識しています。“これってどうバイラルするの?”という言葉は、もう呪文のように繰り返してますね」(根本氏)

 どうバイラルさせるか、またどうバイラルしたかは、数値化しづらく説明も難しい。そこで、岡野氏のセクションでは施策の効果を検証するときに、様々なSNSでのユーザーや消費者の声、グループインタビュー等をあわせて、定量と定性の両方から見るようにしているという。

 「たとえばモンストはゲームですが、コミュニケーションツールとしての側面が強いです。それがどう機能しているかも非常に気にしています。しかし定量データだと、コミュニケーションに関する効果は観測しにくい。ですから、ユーザーに直接インタビューして、どのようなコンディションでモンストをプレイしているのか、誰かにゲームの話をしたくなった瞬間はあるか等を聞いています」(岡野氏)

 ユーザーへのインタビューはアプリ内のアンケートから協力者を募ることもある。2013年にリリースされた息の長いサービスであるため、熱量の起伏や、ゲームにどう向き合っているかの変化など、ユーザーの声から見えてくるものが沢山あるという。

 さらに、これらの調査を踏まえて、2016年10月のリリース3周年記念には、今のユーザーのテンションが上がるような施策として“モンストやるなよ”キャンペーンを展開。タレントの上島竜兵さんを起用して、“モンストをやってね!”というメッセージを逆説的に“モンストやるなよ!”とメッセージングしたTVCMを放送したり、モンストを立ち上げるだけでゲームアイテム1年分や漫☆画太郎の似顔絵といったプレゼントが当たるという“モンストハッピーくじ”を実施したりした。

 「たとえば、長年付き合ったカップルのような間柄には盛り上がる時期とそうでない時期がありますよね? サービスも少し似ていて、以前よりも“ユーザー間の会話が減ってなんとなくゲームをしている”方が増えているように感じていましたし、グループインタビューやインサイト調査結果でも熱量が以前よりも下がっているような印象も見えました。モンスト3周年のキャンペーンは、熱量を上げるきっかけ、会話のきっかけになるようなものにしなくては、と考えました。たとえば“モンストやるなよ!”なら、CMなどを見た時に“モンストが変な広告で「やるなよ」って言ってるよ、どういうこと?”と誰かと会話したくなるのではないか、という仮説のもとコミュニケーション設計がスタートしました」(岡野氏)

友達から“面白いよ”といわれる仕掛けをつくる

 XFLAG スタジオが企画を考える上で大切にしていることが、他薦感だと根本氏は語る。

 「バナー1つにしても自薦にならないようにしています。ユーザー目線で考えたら、企業から上から目線で“売上ナンバーワン! 是非やってみて!”とドヤ顔でいわれても、やる気になりませんよね? 友達から“面白いよ。やってみて”といわれるような仕掛けをメッセージやコミュニケーション設計にも反映できるように心がけています」(根本氏)

 清涼飲料水のCMかと思ったら途中から様子がおかしくなって、実はモンストのCMだったと判明するというように、ユーザーがつっこみたくなる、SNSで拡散したくなるような仕掛けを意識しているという。

右脳も左脳も納得する企画を徹底する

 もう一つ、企画を考える上で大切にしているのが、“右脳と左脳の両方で、ストーリー戦略を考える”ことだ。

 「右脳的に直感から出てくる企画は面白いものが多いですよね。そのような企画は突拍子がないように見えても潜在意識ではロジックがきちんとあって、今のタイミングでするべき理由もあるんじゃないかと考えています。ですから、なぜこれが面白いのか、一生懸命考えて分解していき、ロジックを解明する。そして、課題解決に沿った仮説が立てられれば、一見変わったものでも実行する。こういった流れです。ただただ、面白いことをやろうぜ! というわけでもないんです(笑)。

 そのため仕事はPDCAサイクルよりもOODAループ(「Observe:観察」「Orient:方向付け」「Decide:意思決定」「Act:実行」)に近いかもしれないですね。走りながら考えて効果測定を素早く行い、次を考えています」(根本氏)

マーケティングのスキルより、コミュニケーションへの興味が大切

 このように、コミュニケーションファーストの企画を展開するためには、マーケティングのスキルよりも柔軟性が大切だという。

 「我々の部署でいうと、マーケティングの経験はそこまで重要ではありません。ナレッジは後から習得できますから。実際、社員も前職はゲーム会社、玩具メーカー、制作会社、マスメディアと様々で、必ずしもマーケターだったわけではありません。

 それよりも、コミュニケーションや新しい価値をつくること、また、それをどうやって伝えるか柔軟に考えられることの方が重要です。“あのお店美味しかったよ”と話し合う経験は誰にでもあると思います。それと同じように“モンスト面白いよ”という会話を、どう日常に生み出せるかを考えていますから」(根本氏)

 コミュニケーションを大切にしているのは、社員間も同じだという。

 「社員同士もチャットとリアル半々で、常にコミュニケーションを取ってますね。特に、私が入社して驚いた文化が、週1で上司や部下と1対1で話す時間を設けられていること。定期的に直接コミュニケーションを取れるので、お互いの理解が深まりますし、仕事にもかなり良い影響を与えています」(岡野氏)

手前味噌禁止とはいえ……/次のモンストを探す

 最後に両氏に今後の展望を聞いたところ、モンストの展開だけでなくXFLAG スタジオの今後が楽しみになる話が聞けた。

 「先ほどお話ししたように、手前味噌はスタジオの風土としては禁じられているのですが、私はモンストがとても好きです。ですから、知らない人にも知ってもらう機会をつくって、遊んでもらいたいと思います。ゲームはみんなのスマホに入っている1ツールという位置づけになってきています。ゲームの間口は明らかに広くなっているので、みなさんにもっと遊んでもらえるような仕事をしていきたいですね」(岡野氏)

 「私自身は現在、新規タイトルのマーケティングを担当しています。どうモンストを超えるのか、新たな価値を提供して市場を拡大するかを考え、実現していきたいと考えています」(根本氏)

●XFLAG スタジオでは、様々な職種でキャリア採用を行っています。詳細はこちら(リクルートサイトに移動します)。
今回の記事は2回構成になっております。第2回の記事では、根本さんと岡野さんに仕事の環境や社風、実際の業務、マーケターに求められるマインドなどを聞きました。よりXFLAG スタジオで働くイメージが理解できる内容となっております。詳細はこちら

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター 出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2017/05/23 10:38 https://markezine.jp/article/detail/26283