CXを追求すると得られる「商品の本質的価値」とは
では、CXを追求すると、何が得られるのだろうか。山崎氏はそれを「商品の本質的価値」という言葉で説明する。
「今、私の目の前にボイスレコーダーが置かれていますが、このボイスレコーダーの価値は、人によって変わります。かつ、先週時点と現時点で違う可能性もあります。たとえば、今週になって後継機種が出たら、目の前のボイスレコーダーの価値は下がるでしょう。後継機種によって大きな値下げが行われれば、逆に価値を感じやすくなるかもしれません。
人によって、本質的な価値というのは違います。CXを追求すると、価値を感じる条件を発見しやすくすることができるのです」(山崎氏)
この説明をより具体的にイメージするために、商品を検討する場面を思い浮かべてほしい。「自分にとって、この商品がふさわしいかどうか」といったことは誰もが知りたいはずで、特に機能性が求められる商品に関しては、なおさら本質的価値を把握したいだろう。
「車、洋服、時計など、他者からの見え方も重視された商品は除き、多くの企業で行われているこれまでのイメージ先行の広告では商品の本質的価値を伝えるのは難しい。すなわち、広告による上書きされたイメージは参考(購入の決め手)にならないということです」(山崎氏)
さらに現代はスマホファースト。いつでも様々な情報が手軽に確認できる。企業から発信する情報の他にも、インフルエンサーが発する情報、消費者の口コミといった幅広く大量の情報が見られる状況にあるのだ。
「商品の透明性」を実践した表示ができるか
こうした現状を踏まえ、ゼロスタートが提供を開始したのがレビューエンジン「ZETA VOICE」だ。
「これも対外的に語ってきたことですが、昨今オウンドメディアのアーンドメディア化が進んでいます。たとえば、Amazonはオウンドメディア、アーンドメディアどちらに属しているかを考えてみましょう。私はどちらとも属したメディアだと考えています。というのも、米国では口コミを確認するためにAmazonを閲覧するユーザーもかなりの数います」(山崎氏)
口コミを見ると商品の素の姿が見えてくる。広告で作り込んだイメージ写真ではなく、消費者が撮影した投稿写真のほうが、商品の本質的な価値が伝わりやすいという。
「海外だと、日本よりもはるかに返品率が高いんです。店頭だと、購入カウンターの横で返品カウンターが、しかも存在感を放ってエリアを占有するほどの店舗があるくらいです。今後は、どれほど商品が売れているかではなくて、どれほど商品が返品されているか、情報としては都合の悪い返品率や返品数の順番で商品の並べ替えができるようにもする。こうした情報も含めた全開示こそ、ゼロスタートでは“商品の透明性”と呼んでいます」(山崎氏)
ゼロスタートでは、この透明性の向上に向けた取り組みを現在模索している。たとえば、返品率の他にも価格の推移、在庫数、納期、カスタマーサポートの満足度など、あらゆる観点で商品の確認できるようにするのも今後可能にしたいという。各条件を揃えて、選べて、ソート(並べ替え)して表示できる仕組みがあれば、自分の中にある商品の本質的価値の順番で表示できるようになるからだ。