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「死に時間」を「消費機会」に。ナイトタイムエコノミーのポテンシャル

教育や交通も含まれるナイトタイムエコノミー

 ナイトタイムエコノミーとは、日が落ちてから翌朝までに行われる経済活動の総称だ。レストラン、居酒屋、バーなどの飲食サービスが代表格で、ライブハウスやクラブ、劇場での娯楽・エンターテインメントも含まれる。

 それだけではなく、社会人向けのゴルフスクールや英会話教室などの教育関連事業、タクシーや深夜バスなどの交通サービスなどもナイトタイムエコノミーとして扱われる。こうした、いわゆるアフターファイブ以降の時間帯を中心に、主にライブで(同時に)行われる経済活動は、「狭義のナイトタイムエコノミー」である。

 それに対し、「広義のナイトタイムエコノミー」とは、夜間操業の各種産業に対して財や役務を提供する「昼」の産業も含む概念。(狭義のナイトタイムエコノミーに)ビール会社やおしぼりの業者などが加わるということだ。

  狭義のナイトタイムエコノミーだけでも高いポテンシャルのある巨大産業なのだが、広義になると、その経済規模は無視できないほどになる。

「街歩き」の演出で成功した新宿ゴールデン街

 本書でナイトタイムエコノミーの成功例の一つに挙げられているのが新宿ゴールデン街だ。東京・新宿歌舞伎町の約2,000坪ほどの狭い区画に約200店もの飲み屋など小規模店舗がひしめく飲食店街である。近頃は、日が傾き始めるころから、地元民だけではなく、国内外からの多くの観光客で賑わっているという。

 今や都内有数の人気スポットとなったゴールデン街だが、バブル崩壊のあおりを受けて客足が途絶え、ゴーストタウン化の危機を迎えた時期もあった。

 だが、商店主たちは、危機を逆にチャンスと捉え、長らく放置されていた各種インフラの整備にとりかかった。その結果、近代的な設備が整いつつも、レトロな雰囲気を残した街並みを維持する地域として、徐々に「夜の観光地」として人気が広がっていった。

 著者によれば、ゴールデン街が振興に成功したのは、「街歩きの楽しさ」と「飲酒をともなう消費」という2つの要素を満たしたからだ。ゴールデン街を訪れた客は散策しながら昔ながらの街並みを楽しみ、気になった店に入り酒を飲む。店はいずれも数坪程度と狭く、長く腰をすえて飲める環境ではない。そこで、少し飲んだら次の店を探しにいく。そうやって2軒、3軒とハシゴ酒をするのが、多くの観光客のパターンなのだ。

 日本は自然に恵まれ、長い歴史で培われた伝統文化や、文化財が豊富だ。世界でも有数の観光国と言えるのではないか。しかし、経済効果を見込める「観光消費」の観点では弱い。文化遺産・文化財、自然の風景のみによる集客では収益は微々たるものだからだ。たとえば観光寺院に、外国人を含む多くの人が訪れたとしても、拝観料などでの一人あたりの収入は数百円、最大でも1,000円程度に過ぎない。

 そうした場で観光客の主目的は、「消費」ではない。また、自然や史跡・文化財などを楽しむのは、主として「昼間」である。

 そこに新宿ゴールデン街のような観光施設があれば、同じ観光客が夜の時間にも消費活動を行うはずだ。昼の観光資源と客の奪い合いにならないばかりか、得られる収益が昼間とは桁違いになる。ナイトタイムエコノミーは、純粋に観光消費を上乗せすることになり、経済成長に大いに寄与するのである。

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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/07 10:42 https://markezine.jp/article/detail/27053

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