ストーリーの限界
コンテンツが長時間見られる方法としてストーリーは有効ですが、限界もあります。ストーリーは謎やトラブルをどう解決するかが鍵ですが、謎が解けてしまえば終わってしまいます。解き終えたパズル本のように、もはや見られる事はありません。
一回きりのコンテンツならそれでいいのですが、シリーズ物の企画を求められた場合、ストーリーだけではコンテンツの生産量が足りなくなってきます。
「どうしたら謎/トラブルを量産できるか?」という量産化の発想が求められます。探偵や用心棒などの謎を解くキャラクターを立てて解決するというコンテンツをシリーズ化するフォーマットを作る必要が生じてきます。
キャラクターはシリーズ化の設計図
たとえば「ドラえもん」は、のび太が起こしたトラブルをドラえもんが道具を渡して助けますが、調子に乗ったのび太が失敗してオチがつく、というフォーマットを延々と繰り返しています。
トラブルメーカーがのび太で、トラブルを解決する用心棒がドラえもんというキャラクター設定自体が、どう連載を続けるかの設計図になっているわけです。
マンガやアニメに限らず、エンタメの世界では量産化の発想はよく見られます。ゲームの「テトリス」は、パズルの断片が常に落ちてくることで、謎解きの量産化に成功しました。量産化を目論むのは工業メーカーだけではありません。
余談ですが、私がマンガ原作を習っていたとき、マンガはストーリーではなくキャラクターだと散々教え込まれました。マンガには「キャラクターが立たないと連載できず、連載できないと食えない」という切実な事情があったためでしょう。
今後はシリーズものの広告が増える
果たしてWebにシリーズ化って必要なの? と思う方もいるでしょう。特にバズ目的の映像コンテンツは、現状は単発で短尺なものが主流です。しかし、これはSNSやアドネットワークなどの分散化されたメディアに最適化しているためです。
つまり配信枠の構造によってそうなっているのですが、今後はシリーズを配信する仕組みができてくると予想しています。アメリカでもシリーズ化は様々な形で試されていますし、日本でも広告主側からシリーズ化の要望が強まっています。
これはブランディング目的のネット広告が試されてきたことに関連しています。新商品やキャンペーンの告知など一過性のものではなく、既存商品のブランディングなど長く行っていくものは、auの三太郎シリーズやサントリー「BOSS」の宇宙人ジョーンズのようにシリーズものが合っています。
シリーズ化の需要はあるのに、それを提供する枠とコンテンツがないという状況が続いているので、いずれ供給側は需要とマッチします。配信枠と合わせてコンテンツ制作でもシリーズ化の用意を進める段階に来ています。