認知拡大とユーザー獲得のためにTV・ソーシャル・アドネットワークを活用
――「DELISH KITCHEN」様はレシピ動画メディアとしてアプリダウンロード数(※)、SNSファン数ともNo.1を誇り、女性を中心に高い人気を獲得されています。サービスローンチ当初は料理のレシピ動画を各種SNSアカウントで先行して提供し、アプリを昨年12月にリリースされました。
※日本国内両OS合計ダウンロード数1位 (AppAnnie 2017年上半期調査)
2017年8月現在アプリが800万インストールほど、SNSのフォロワー数はFacebookが150万、Instagramが100万、他YouTubeやTwitterなどを加えると合計300万を超えるとうかがっています。ユーザーに動画の魅力やサービスの細やかさが評価されたからこその成功だと存じますが、動画作りにおいて心がけていることはありますか。
中村:動画は自社スタジオで撮影しており、最初に完成カットを、次に調理工程をテンポよく見せるスタイルで約1分にまとめています。料理は難しいと感じている人にも、動画でレシピを見ることで「自分でもできそう、チャレンジしてみよう」と思っていただきたいので、テンポを重視しながらも、レシピを丁寧にわかりやすく伝えることを大切にしています。
また、調理スタッフは全員が管理栄養士や栄養士、ベテラン料理研究家などの「食のプロ」であるため、レシピの再現性の高さ、クオリティ、美味しさにも自信を持っています。
――確かに、短い動画なのでさくっと見られるのに、手順がきちんと記憶に残りますよね。それに、どれもすぐに作ってみたくなる魅力的なレシピです。こうしたサービスのクオリティが多くのユーザーに高く評価され、満を持して積極的な広告キャンペーンを展開されている印象です。プロモーション展開について、一連の流れをお聞かせください。
中村:アプリは立ち上げ時から小規模にプロモーションをしていたのですが、先行してSNSでファンになっていただいた方にリーチできたこともあり、アプリのリテンション(利用継続率)を中心としたKPIがかなり好調でした。その流れに弾みをつけるため、今年の4月から6月にかけて大型のキャンペーンを計画しました。
認知拡大とユーザー獲得を見込んで、テレビCMとSNS広告に加えAppLovinのアドネットワークを通じてモバイルアプリの配信面への出稿を一気に展開した形です。キャンペーンを通じて大切にしたのは、広告で獲得したユーザーのリテンションでした。
テレビCMとシナジー生みつつ、テレビ離れ層にもリーチするアドネットワーク
――それぞれの施策は、やはり目的を分けて組み合わせたのですか。
中村:そうですね。まずSNS広告の目的は、既に各SNS上でDELISH KITCHENを知っていて、レシピ動画を見てくださっている方々にアプリのユーザーになっていただくことです。
次に、テレビCMは、DELISH KITCHENをまったく知らない人に知っていただく、認知獲得と興味喚起の役割が大きいです。実際に、AppStoreとGoogle Playでのランキングが上昇し、同時に1位になるなどインストールも増えました。
最後に、アドネットワークは、テレビCM等を見てDELISH KITCHENを知っていただいた後に、「アプリを使うなど何となくスマホを触っている」ようなシーンでの刈り取りを狙いました。
――なるほど。AppLovinさんとしてはマス広告との組み合わせはどうご覧になっていますか。
林:企業によっては、テレビCMの出稿中はテレビに予算を集中させデジタル広告は予算を減らす場合もありますが、私たちからすると「もったいない」と感じます。テレビCMで認知が上がったタイミングこそ、デジタル広告の合わせ技で捉えるべき絶好のタイミングです。事実、今回のDELISH KITCHENさんの場合もテレビCM効果により、クリック率とコンバージョン率が大きく上昇したことで、結果として非常に多くのインストール数が獲得できました。
萬野:テレビCMで見てサービスを知っていると、その後にデジタルで接触した際に「試してみよう」と思うユーザーは格段に増えます。「あ、テレビで見たやつだ」と思うんですね。加えて、いくらテレビで認知しても、検索するのはユーザーにとって手間です。そこで動画広告が流れてくると、ポチッとクリックするだけでいいので、インストールを促進できるのだと思います。
――やはりテレビのアトリビューション効果は大きいですね。とはいえ、テレビをまったく見ない若者も増えていますよね。
萬野:その通りで、DELISH KITCHENさんのターゲットである20代から40代の女性はテレビにまったく接触しない人も増えています。そのため、例えば、AppLovinでカバーしているアプリのユーザーがその補完になったと見ています。
重視したのは、配信先の透明性とリテンションへの貢献
――動画広告のクリエイティブ面の工夫についてもお聞きしたいです。DELISH KITCHENさんはそもそも動画を軸としたサービスなので、テレビCMや動画広告にも専門的なノウハウが活かされていると思います。今回、テレビとオンライン広告で映像の作り分けはされましたか。
中村:はい。テレビCMにもオンラインでの動画広告にも、実際のサービスで提供しているレシピ動画を活用していますが、クリエイティブは分けています。
当時レシピ動画サービスの認知度がまだまだ高くない中、テレビCMでは、「DELISH KITCHEN」というサービス名、「レシピが動画で見られるアプリ」というサービスの概要、「作りたい!が見つかるレシピ動画」というコンセプトの、3つの基本的な情報がしっかり伝わるよう、丁寧に作りました。
デジタルの動画広告では、大きく二種類のクリエイティブを用意しました。ひとつは、テレビCMを流用したものです。テレビCMと同じくサービス名、サービス概要、コンセプトを伝えるのが主眼です。もう一つ、”レシピ推し”のクリエイティブもたくさん制作しました。こちらは、人気のあるレシピを使ってアプリをダウンロードしてもらう狙いですね。
――なるほど。クリエイティブについてお話をうかがえましたので、今度は配信面について聞いてまいります。DELISH KITCHENさんはオンライン広告ではソーシャル広告を中心に展開されてきて、今回新たにアドネットワークを活用されたわけですが、今回AppLovinさんのアドネットワークを選んだ理由をうかがえますでしょうか。
中村:アドネットワークを選定する上で私たちが特に重視しているのは、配信先の透明性と、DELISH KITCHENを継続的に使ってくれるユーザーに対してどれくらい効率的にリーチできるかです。
まず透明性について、配信される媒体がわからないネットワークには出稿していません。AppLovinさんは管理画面で配信先を100%確認でき、さらに配信面ごとのパフォーマンスまで確認できるため安心して出稿できました。
また、リテンションにつながるユーザーの獲得については、AppLovinさんは弊社のターゲットユーザー層に合った配信面を持っていて、しかも配信先ごとにリテンションデータを使って最適化してもらえるため、ユーザーの質を維持しながらボリュームを増やせるというのが非常に魅力的でした。
さらには、グローバルで展開されているという信頼性を感じたことも大きいですね。実は、AppLovinさんを知ったのは、媒体社様から、効果の出やすいアドネットワークだと紹介してもらったのがきっかけでした。
実際に走らせてみると、想定以上に獲得パフォーマンスが高く、優良な配信面ばかりでした。長くDELISH KITCHENを使ってくれるユーザーがいそうなアプリの配信面に確実に当てることができた印象です。
アプリ利用状況データを活用して優良顧客獲得に向け配信面最適化
――AppLovinさんでの配信は、どうしてリテンションにつながる質の高いターゲットへの配信につながりやすいのですか。
林:アドネットワークによっては最初から配信面を選定することで広告主の商材に合いそうなユーザーへの配信を目指すものもありますが、AppLovinの場合はいったん出せる配信面にすべて出し、それから自動で最適化を図って効果を伸ばします。人間の先入観よりもアルゴリズムの方がより正確に、ふさわしい配信面を見つけることができるんです。
そのために重要なのが、DELISH KITCHENアプリの「インストール後の利用状況データ」との連携です。トラッキングツールとAppLovinとの間でAPI連携しているため、トラッキングツール側の管理画面上で設定いただけます。
具体的には、例えばアプリの起動データを使い、配信面ごとのリテンションをAppLovin側で計測し、ダウンロード後1日目の利用状況(起動率)や7日目の利用状況(起動率)を使い、リテンションの高い配信面に広告配信を寄せていきます。
このデータ連携によって、ただのインストールではなく、「より継続的に使っている優良なユーザーのインストールが多い配信面」など、本質的な目標を達成している配信面に予算を配分することが可能になります。
――実際には、どんな媒体で優良なユーザーが効率的に獲得できたのですか。
萬野:若い女性層が多いカジュアルゲームや、非ゲームだとフリマや写真加工、家計簿といったアプリの効果が高かったですね。
広告主の「ワガママ」のKPI化が成功の秘訣
――今、データ連携のお話が出ましたが、広告主がAppLovinさんでの広告配信効果を高めるための最重要ポイントは何でしょうか。
萬野:広告主様と私たちの連携は大きな要素ですね。最初に広告主様とお打ち合わせをするとき、「なるべくワガママを言ってください」とお伝えしているんです。「これはできないんじゃないか」と思っていらっしゃることも、実現可能なことが多いです。「ワガママ」をKPIに落とし込めると、満足いただける結果につながりやすいです。
KPIと最終的なゴールをしっかりすり合わせることができれば、私たちはそれに合わせて提案できるので、どんな業種や商材でも使っていただけると思います。
林:仮に広告主様がCPI目標を示されて、アドネットワークが目標を達成したとしても、獲得したユーザーのうち10%しか継続してくれなかったら意味がないですよね。まったくサービスを使ってくれないユーザーを大量に獲得して、CPIだけ下がっても仕方ないのです。
広告主様が本当に望んでいるのが、継続的に利用するユーザーの獲得なのか、課金の確率が高いユーザーなのか、インストール後に目指しているKPIを話してもらうことが、効果を最大化するのに重要ですね。
萬野:クリエイティブ面でいいますと、今回はDELISH KITCHENさんが縦動画をお持ちだったことも、効果が高かった要因のひとつだと思います。動画コンテンツ視聴以外は、カジュアルゲームを含め縦でスマホを使うことがほとんどなので、UXとして縦動画のほうが適している配信面も多くあります。なので、通常の横動画に加えて縦動画を追加することでパフォーマンスを最大化できます。
リテンションのためのリターゲティングを今後模索
――最後に今後の展望をうかがえますでしょうか。
中村:DELISH KITCHENとしては、まず新規獲得でいうと、よりROIの高いプロモーションを実施して、なるべく使い続けてくれるユーザーの獲得を狙っていきます。同時に、今使っていただいているユーザーのリテンションを促すリターゲティングのアプローチもAppLovinさんと検討しています。
林:現状だと動画広告への出稿はゲーム系広告主様の方が積極的に利用されております。ただ、弊社のプラットフォーム自体は多くの非ゲームの企業様にもご利用いただいていますし、ゲーム企業様以上に規模が大きく効果が出ているキャンペーンも多くあります。
今後は、より非ゲーム企業様に積極的にご出稿いただけるようなサポート、例えば、こういった事例を紹介する機会を増やしたり、またより非ゲームクライアントさんに効果が高い、プレミアム媒体の配信面を増やしていく予定です。
萬野:クリエイティブについてお話ししますと、「これが効く」という法則は難しいものの、「この方法はまずい」というのはわかってきています。バナーと違って動画広告では大規模なABテストは難しいので、グローバルでずっと動画広告配信をしてきた知見を活かして、広告主様のクリエイティブ最適化をより支援したいと思っています。