入電=お客さまの困りごとと定義せよ
損保ジャパン日本興亜の保険契約者数は国内最大規模の約2,000万人。そのうち、入電数は年間180万件を超える。CC企画部ではこの事象を「約1割の方が問合せをしてくるということは、保険に向き合った瞬間に問い合わせをせざるを得ない状況になってしまっているからだ」と切実に捉えることをスタートラインとした。
「お問い合わせ=お客さまの困りごとである、という認識を持つことをコールセンター全体で共有しました。今まではAという問い合わせがあれば、効率的に相当する回答を返すことだけを良しとしていました。まず、そこから改めよう。なぜお客さまはAというお問い合わせをしたのかを敏感に察知し、徹底してその真因を掘り下げよう、と」(坂上氏)
BtoBtoC モデルの同社において、CC企画部は顧客と直に接点を持つ限られた部門だ。顧客の声の徹底分析を成し遂げて、顧客一人ひとりの困りごとの根源を探し当て改善できれば、顧客の理解が進むと同時に、同様の問い合わせも解消できるはずだ。
「何らかのきっかけや刺激を受けて不安やストレスを感じて検討した結果、それでも解決しない方たちが仕方なく電話をくださるわけです。コールセンターの応対者は球を打ち返すだけではなく、一人ひとりが“何があったのですか?”と考えるようにならないといけない。CX向上策推進を通じてこの意識改革・行動改革を実現したいのです」(坂上氏)
分析はお客さまになりきって
「2016年9月ころは、懸命にペルソナを設けて、マーケティングファネルを念頭に置き、火災保険の問い合わせ電話をした人が、その後代理店経由で申し込むという、コンバージョン向上策のジャーニーなどを作成しました。しかし、やればやるほど、“嘘ジャーニー”の追究になってしまった。このペルソナのお客さま、当社に絶対アクセスしてこないよと(笑)」(坂上氏)
というのも、分析する対象はマーケティングプロセスではない。しかも既に実際の問い合わせが存在する。ファクトを前に、「こうしたお客さまがいるだろう」と想像したペルソナの設定自体が、無理があると気づいたのだ。
「保険という商品の特性を考慮すると、お客さま一人ひとりの保険契約は千差万別で、典型的な例が立てづらい。ペルソナの設定が保険という商品だと相性が良くないとわかったんです」(河原氏)
そこで、CJM作りから何かを洗い出すのではなくて、実際のコールセンターへの問い合わせに基づいて、入電時の顧客の感情を想像しながら、問い合わせに至るまでのジャーニー、つまりファクトベース・逆算のCJM作りに行き着いた。
そこで、重視したのが全国のコールセンターに集まった声の分析だ。コールセンターのAD(アドバイザー)やSV(スーパーバイザー)を中心に、顧客とのデプスインタビューを行い、日々の応対のスクリプトも徹底的に分析された。
2017年2月には、秋田コールセンター室をモデルケースと定め、重点的にCX推進策(CJM作り)に注力した。
「コールセンターの現場では日々お客さまに接することで、ちょっとした違和感や“この問い合わせが多い”といった暗黙知を蓄積しています。それらを、お客さまになりきって分析を進めることで徐々にお客さまの感情、当社が改善すべきスポット(ペインポイント)がつかめてきました。そして、それぞれの困りごと別にお客さまの行動や感情をCJMに落とし込んでいったのです」(坂上氏)
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