顧客視点を反映したマーケティングを実践するためには、チームメンバーで共有できる「カスマタージャーニー」作りが重要だ。しかし、実際にその作成・施策への落とし込みを実践する段階で、足踏みをしてしまう企業も少なくないのではないだろうか?
セールスフォース・ドットコムとMarkeZineでは過去複数回「カスタマージャーニーマップ作成キット」を使ったワークショップを実施してきた。ワークショップに参加した企業は、その後、カスタマージャーニーマップをどのように活用しているのか? 参加企業の“その後”を紹介したい。
お客様の声に対する対策の優先順位、その根拠を明示したい
らでぃっしゅぼーやは、有機・低農薬野菜などの会員制宅配事業を約30年続ける国内大手のリーディングカンパニーだ。
同社CS推進部は、マーケティングの最適化や改善のために、顧客満足を図る指標の一つ「NPS(ネットプロモータースコア)」を2017年より導入することに決め準備を進めてきた。
さらにNPSを効果的に活用するために、カスタマージャーニーマップ(以下、CJM)の構築を検討し、2017年3月にCS推進部から2名がCJMのワークショップに参加。その後、持ち帰った社内でも複数回に渡ってCJMのブラッシュアップを続け、社内全体で各部横断的にCJMの浸透を徹底したい狙いも持つ。
そもそもCS推進部は、社内の「カスタマーサティスファクションマインド」の醸成と向上を図る部門。だからこそ、きちんとした根拠を示して顧客のニーズを社内の各部門に伝えたい。その他、会員の新規獲得向上とともに既存顧客のロイヤル化や離脱防止にも本腰を入れたい意図もある。
「元々、社員や業務委託先からの提案を“気づきの声”として集約したり、お客様からのご意見やご要望について、毎週メールで全社的に配信したりしています。毎月1回開催しているCS委員会では社長や役員も参加して、お客様からのクレームやネガティブな生の声を実際に聞きます。お客様の声には敏感な会社なのです。
さらに毎年一度、お客様に顧客満足度調査を実施しています。紙を用いており、実施から集計までに時間がかかっていました。顧客ニーズの可視化を短期的に集約して効果的に活かせて、利益にもつなげる具体策として、NPSやCJMを導入したわけです」(竹内氏)
「たとえば、お客様からいただくご意見の内容一つとっても、声が少ないか多いかや、自分たちの主観で重要性を判断していたため、根拠としての弱さを痛感していました。もっと納得できる判断や根拠が示せれば、社内の各部門も提案を受け入れやくなると考えています」(北氏)
リスク要因も反映したカスタマージャーニー
今回、取材にあたってワークショップで作ったCJMを見せてもらった。
ペルソナは会員のボリューム層を意識して、住んでいる地域や年齢といった大枠を設定。さらに、料理好きだが外食も好き、園芸が趣味など中身も細かく想定されていた。
ジャーニーは同社サービスへの「入会」に焦点を当て、「定期購入」をゴールに定めてCJMの作り込みを竹内氏、北氏の2名で進めた。
「弊社のサービスはお客様が欲しいな、と思った時に都度ご購入いただくことも可能ですが、理想は定期購入をしていただき継続的な関係性を築くことです。らでぃっしゅぼーやの入口である “お試しセット”を経て、定期購入への申し込みをゴールに据えました。
もちろん、お試しセットよりも前の段階で、有機野菜に興味を持たれるタイミングや、競合サービスとの比較なども想定しています。テレビや雑誌の“おいしい野菜特集”を見たり、職場の同僚や友だちと食材や夕食の話題で盛り上がったりするなど、具体的なシチュエーションを思い描くようにしました」(北氏)
全体を通じて特徴的だったのは、リスク管理もきちんとCJMに反映した点だ。
「たとえば、お試しセットを申し込まれたお客様が指定した時間帯に受け取れず、再配達で受け取り直した場合です。生鮮品だからこそ、受け取りまでに発生するラグはストレスを感じさせるでしょう。こうしたネガティブな感情もマップに書き込むようにしました」(竹内氏)
「期待を膨らませて箱を開けたら、一部野菜が傷んでいてコールセンターに連絡が入る、といった接点も考えられます。こうしたCJM作りを通して、お客様の想像(期待)とギャップが生じる場面が、定期購入への障壁であることを浮き彫りにできました」(北氏)
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