「お客さま」を主語にした改善提案が可能に
ここまでを総括すると、CC企画部が、数々の試行錯誤を通じて、顧客になりきり、顧客感情の可視化をファクトベースで徹底検証し、分析結果の裏づけとしてCJMに表現したといえる。
CJMは実在する顧客の困りごとそのものであり、可視化こそ「お客さまのことを一番よく知る部門になる」ための第一歩であるわけだ。
こうした取り組みが、全国のコールセンターに波及。7月には全国のコールセンター内のCX担当者が一堂に会する会議を開催し、ファクトベースのCJM作りなど、ブレのないCX向上策推進を行った。
「今秋時点で20件以上のCJM(=困りごとと、それにまつわる仮説)が完成しました。全国のコールセンターメンバーが力を結集してくれた結果です。各コールセンターにおける提言書作成はとても大変だったと思いますが、お客さまの真因を把握して、「お客さまのお困りごと(ペインポイント)」を明確に可視化することができたと思います。さらに“お客さまが●●●だから、XXXすることで課題解決でき、年間△△△円のコストを削減できる”などと、お客さまを主語として経済効果も示せる改善提案が可能になりました」(坂上氏)
改善とは名ばかりで関連部署に面倒事を押し付けるような提案ではどの部署も動いてくれない。CC企画部に集まってくる顧客の困りごとをファクトベースのCJMによって可視化し、それに基づいた改善提案は提案された部署にとっても受け入れやすい。
お客さまのことを最も知っている部門として
次の目標は、浮かび上がった課題をCC企画部が一丸となって改善提案先となる他部署に連携し、早期に解決の方向性を導出することだという。ここでポイントとなるのは、提案を受けた関連部に共感してもらうことが大前提であることだ。提案と改善を通して「自分たちが一番お客さまのことを知っている部門」として社内に認識してもらうことで、CC企画部がプロフィットセンターでありマーケティングセンターであることの体現となる。
「単なる定量データの集計だけではダメなんです。定性データの定量化が必要です。その実践があってこそが、CXのための改善提案が出せるのであり、いつでも“一番お客さまのことを知っています”と言い切れる部門へと脱皮できるのです」(坂上氏)
最後に両氏の立場からも、今後の課題や展望を語ってもらった。
「まず私が直接担当している各種WebページやWeb完結型の海外旅行保険等から課題解消に向けた動きに着手しているところです。今後もCXの改善が経営に反映されることを示しながら、お客さまも担当部署も経営層も三方良しとなる関係性を作れるようにしたいです」(河原氏)
「お客さまになりきった先に見えてくるCXの追究が、ブランディングにもつながります。今後もこのようなCX向上策の取り組みを継続していきたいと考えています」(坂上氏)
カスタマージャーニー研究プロジェクトメモ
カスタマージャーニーマップは、フレームワークを使って最適な顧客コミュニケーションとは何か? という仮説を構築していくプロセスです。今回の損保ジャパン日本興亜さんの例は、架空の顧客ペルソナをスタートにすることではなく、事実ベースで顧客の課題を落とし込んだアプローチ。お客さまになりきって描いたCJM=仮説は、現実の課題を解決する強力な武器になると言えるでしょう。
損保ジャパン日本興亜さんのCJM活用方法は、示唆に富んだ好例として非常に参考になるのではないでしょうか。
カスタマージャーニー研究プロジェクトとは?
MarkeZine編集部とセールスフォース・ドットコム マーケティングディレクターとして、各企業とジャーニーを研究してきた加藤希尊氏を中心に共同でカスタマージャーニー研究プロジェクトを立ち上げました。本プロジェクトでは、「顧客視点のマーケティング」における成功例を取り上げ、様々なアプローチ方法をご紹介していきます。
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