ファーストパーティデータを合意ベースで
Zimmermann氏のFacebookにCTI.IOのドローン広告を表示されるが、ここで利用するのはファーストパーティのデータだ。Zimmermann氏はスターウォーズの”フォースを使え。ダークサイドに気をつけよ”を引用しながら、「ファーストパーティのデータを合意に基づき利用する。文脈に基づいて統合しなければならないし、GDPRにも遵守しなければならない」と述べた。GDPRとは欧州連合の新しいデータ保護法「一般データ保護規制」のことで、欧州に顧客を持つ企業はすべて遵守しなければならない。2018年5月に施行に入ることもあり、イベント中ホットなトピックの1つだった。
プロファイル管理の「SAP Hybris Profile」を見ると、Zimmermann氏の位置情報、セッション、ページビュー、クリックしたイベントなどの情報がわかる。

いよいよ購入となり、3つある選択肢からセンサーのついたIoTドローンをZimmerman氏が選ぶと、部品交換などの保証がついた追加のパッケージを提案する。選択せずにリアルタイムデリバリーボタンをクリックし、エクスプレスチェックアウトにより決済完了。これらの背景には、最新のCustomer Experience(CX)があり、Profileから得られた洞察をベースに、文脈に基づいた体験を提供できるという。
今後Profileはさらに強化される。SAPは9月にコンシューマーID管理のGigya買収を発表しており、コンシューマーIDと合意の管理が加わることになる。この分野では、顧客の多くがサードパーティのソリューションを利用しているが、CXの成熟とGigyaの買収により不要になる、とZimmermann氏は述べた。
サブスクリプション時代の到来、すべてが顧客体験の一部に
コマースの強化も続ける。クラウドへの取り組みを進めてきたが、Dockerに加えてKubernetesのサポートも発表した。「これにより、プライベートクラウドとパブリッククラウドを利用した開発、自動化、実装、テスト、運用を大幅に簡素化できる」とZimmermann氏は効果を説明した。モジュラー化も進めており、カスタマイズの分離、フロントの疎結合により柔軟性を得られるという。
これらはスピードの強化につながる。SAP Hybrisは、”YaaS”(「Hybris as a Service」)として早期から機能単位のマイクロサービスを組み合わせて拡張やアプリケーションを構築するマイクロサービスアーキテクチャの開発を進めており、SAPのパワフルなクラウドプラットフォーム「SAP Cloud Platform」上で動くようになった。YaaSを利用して、差別化につながるような機能や拡張を迅速に構築できるという。YaaSはまずCommerce Cloudで導入、2018年中にはすべてのコマースの拡張をネイティブにYaaSで使うことができるようになるという。「開発生産性を75~100%アップできる」とZimmermann氏は述べた。
ビジネスモデル側では、Revenue Cloudが支援する。製品のサービス化が進んでおり、これまでとは異なる課金モデルが必要になるが、Revenue Cloudによりサブスクリプション、製品とサービスのバンドルといった新しい課金方法を実現できるという。
Zimmermann氏は会場に向かって、「あらゆる業界でサービス化は起こる。顧客と直接つながりエンゲージできるかどうかが成功の鍵を握る」と伝えた。
ビジネスモデルの変化とともに、重要な要素にあげたのは顧客体験だ。サブスクリプションでは優れた体験を提供しなければ、顧客はすぐに契約を解除して他社に移行する。「ビジネスモデルの変化に体験もマッチしなければならない。製品の使用、保証、問題発生時の対応……すべてが体験の一部になる」とZimmermann氏は指摘する。