他部門と密接に関わるマーケティングの業務
セッションは、モデレーターの早稲田大学大学院の川上智子氏による「マーケティング・イノベーション・プロセス(MIP)」図の提示からスタートした。
上記の図からもわかるように、マーケティングは非常に多岐にわたり、かつ長期的な業務で、R&Dとも各段階で必ず調整が発生する。伝統的に“ものづくり”が強い日本だとなおさらだ。「R&Dとの連携に関するマネジメントは、重要な研究テーマのひとつ。マーケティングと営業の間でも、マネジメントが必要なのと同じでしょう」と川上氏。
約30年にわたりBtoB企業を支援してきたシンフォニーマーケティングの庭山一郎氏は、マーケティングというテーマについて「飽きた瞬間は一秒もない」と語る。その幅広い領域の中で、リードを営業につなぐデマンドジェネレーションの部分に特化してきた同社だが、マーケティングと営業とのインターフェースに触れ、「これが今、日本の非常に弱いところ。この部分を強化しないと世界に太刀打ちできない」と指摘する。
かたや、約30年間インテルジャパン(現インテル)に勤め、マーケティングや技術開発・製造技術の統括、そして取締役を経て昨年より横河電機に参画している阿部剛士氏は、「有名な『Intel Inside(インテル入ってる)』のワードは日本発。ブランディングの奥深さ、マーケティングの重要性を知った」と話す。
マーケにおける日本と米国の違い 感覚的に15年遅れている……
今回のセッションでは、以下のアジェンダが掲げられた。
(1)デジタル時代のマーケティング組織はどのように変革すべきか?
―米国と日本の違い
―営業や他部門との連携
―成功している企業の共通点
―テクノロジーの活用がもたらす組織変化
(2)組織において求められる人物像について
ICTの進化によって業務が変われば、最適なマーケティングの組織のあり方も変わってくる。まず、日本に比べてマーケティング先進国といわれる米国との違いについて、庭山氏は「感覚的には日本は15年遅れをとっている」と指摘する。マーケティングオートメーション(以下、MA)ひとつとっても、米国で普及したのは2000年。日本の進歩以上に米国での発展が著しいため、世界と戦うには組織変革を含めてさらにスピードを上げる必要がある。
阿部氏は日米の違いについて、マーケティングの地位とマーケティング資産に対する感度という2点を挙げる。日本は第二次世界大戦後の復興時に“ものづくり”で躍進し、メイド・イン・ジャパンのブランドを確立した。質を重視し成功したため、マーケティングの地位がそれほど高くならずにここまできているのだ。マーケティング資産の捉え方も狭く、広告やコミュニケーションに関することにフォーカスしがちだが、実はR&Dも資財の調達能力も、特許も工業デザインも「すべてが資産」だと阿部氏。その上で、資産をどう利活用するかを考える必要に迫られている。
実際、純日本のトラディショナル企業である横河電機で、阿部氏はマーケティングコミュニケーションだけでなく、R&Dや特許室、新規事業開発、M&Aに関する部署も管轄しているという。