2桁成長の背景にあった組織改革
――大手企業数社のデジタルリードエージェンシーとなるなど、デジタルマーケティング業界でユニークなポジションを占めているアイ・エム・ジェイ(以下、IMJ)ですが、近年創業以来の大きな成長局面を迎えているとうかがいました。今日はその背景と戦略に迫るため、竹内CEOにお話をうかがいたいと思います。
竹内:おっしゃる通り、構造的な問題を抱えていたため過去数年は年成長が数%にとどまっていたのに対して、この1、2年だとその数倍にあたる2桁成長を実現し、創業初期以来の急成長のさなかにあります。
クライアント企業からの引き合いに応え切れていない状況なので、人材を増やして組織を大きくしつつある状況です。
※デジタルリードエージェンシーとは、デジタル領域に専門性を持ち、マーケティングコミュニケーションのプランニングから実施までを行っていくエージェンシーのこと。企業の課題にとって最適なテクノロジー活用を提案し、実現に向けて企業担当者を支援しながら企画を推進していく。
――大型案件が増加しており、引き合いに心ならずも応えられていない状況とのことですが、なぜクライアント企業からの指名が御社に集まるのか、その理由をどうお考えですか?
竹内:いちばん大きいのは、クライアント企業が抱える課題のレイヤーやデジタルマーケティングを掌管する人のレイヤーが上がるにともなって、IMJも組織を変えてきたことでしょう。
具体的にご説明しますと、今まではIMJが一緒にお仕事させていただくのは、デジタル(Web)マーケティング部門の担当者、もしくはマーケティング部門のマネージャー層の方々がほとんどでした。
ところが最近は、クライアント企業の社長みずからが自社のサイトを見て「なんだこれは」と部下にハッパを飛ばすようなことが普通に起きています。経営課題のひとつとして、「デジタル以外のタッチポイントをこれ以上最適化しても伸び代はないんじゃないか」「デジタルのタッチポイントを改善しない限りは本質的な事業改善、成長にはつながらないんじゃないか」とエグゼクティブクラスが考えるようになったからです。
僕らが向き合うビジネスパーソンの職位という観点でいうと、今まではデジタルマーケティング部門の部長や課長と向き合っていたのが、最近では営業本部長や管掌役員といったレイヤーの方々に直接ご提案差し上げることが多くなりました。
それにともなって、案件の内容もサイトリニューアルといった個別案件にとどまらず、「そもそも売上やブランド認知を上げるには何が必要ですか」というより根本的な課題からもう一回考えたいという要望をいただくようになったのです。
営業改革でオールIMJでのアウトプットを実現
――スケールの大きい課題と向き合うことが必要になるなか、どのように組織を変えたのですか?
竹内:クライアントのエグゼクティブクラスからのご期待にこたえるには、支援する側も経営の視点を共有して、つまり市場環境とクライアントが取るべき戦略をみすえたうえで、使える手段を選び取り、最適な解決策として提案する必要があります。
IMJもこの数年は、専門性が高まるデジタルマーケティングの各領域に対応するなか、機能がサイロ化していたのですが、こうした状況を受け、すべてを一気通貫して連携できるように統合したのです。
たとえば、いままではWeb制作や運用の部隊が独自にお客様と結びつき、部隊の中で成果を最大化すべく努力していました。同時に、データを活用する部隊も独立してお客様と向き合い、さらにまた別のチームはシステム開発もやっているというように、部門ごとにお客様の課題と対峙してきました。
お客様からすると、自社の課題を解決したいだけなのに「IMJの◯◯部署に発注しよう」と考えなくてはいけないのは不親切ですし、IMJとしても部署間の連携・シナジーが生み出しにくいので組織改革を行ったのです。
改革のひとつとしてIMJとしては史上初めて、アウトバウンドの営業部隊を作りました。実はこれまでは既存顧客の案件だけで年数%ですが右肩上がりの成長を実現できていたので、専門の営業部隊は存在していなかったんです。
でも、私たちはこれからWeb制作や運用にとどまらず、「課題の発掘と解決策の提案、実装までをオールIMJで対応できる」ことを価値として提供してきています。こうした取り組みを組織的に強化していくために、多彩な専門部隊を束ねてクライアントと対峙する営業部隊を創設しました。
彼らのミッションは、Webインテグレーションのような制作・運用ソリューションを提案することでもなければ、データ分析やマーケティングプラットフォームの導入支援を働きかけることでもありません。
単純に個々のサービスを売るのではなく、お客様の課題を深掘りし、専門性を持った各部門を見渡し、オールIMJとして価値ある提案をすることが営業部隊の使命となりました。この変化が、さらにお客様の信頼を勝ち得ることにつながっていると感じています。