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求められるのは、マーケティング視点~リクルート「Airレジ」が取り組む、最新カスタマーサポート

 リクルートライフスタイルのPOSレジアプリ「Airレジ」のカスタマーサポートは、プロアクティブに顧客とのコミュニケーションを行っている。特徴は、チャットやメールといったデジタルチャネルと、電話や対人サービスカウンターの設置といったリアルチャネル両面からのサポートを行う点だ。その運用を支えるZendeskの活用事例と、マーケティング視点のカスタマーサポートについて、担当者である同社カスタマーエクスペリエンスチームの遠田望氏に話を聞いた。

アカウント数が30万超、POSレジアプリ「Airレジ」とは

MarkeZine編集部(以下、MZ):まず遠田さんが、どのような業務をされているかお聞かせください。

リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 Air事業ユニット プランニンググループ カスタマーエクスペリエンスチーム 遠田望氏
株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 Air事業ユニット
プランニンググループ カスタマーエクスペリエンスチーム 遠田望氏

遠田:Airレジは、0円でカンタンに使えるPOSレジアプリです。iPadやiPhoneにアプリをダウンロードし、レシートプリンターやキャッシュドロアなどの周辺機器を用意するだけで、スモールビジネスをはじめる方々が導入コストを圧倒的に抑えてPOSレジを導入することができます。

 2013年の11月にサービスをスタートし、主に飲食や小売、サービス業を中心に、おかげさまで2017年9月時点で30万アカウント以上のお客様にご利用いただいています。

 私のカスタマー・エクスペリエンスチームではお客様がAirレジのアカウントを登録してから実際にレジとしてご利用になるまでを、メールと電話、チャットなど複数のチャネルを用いてサポートしています。その際、各種問い合わせ対応についてはZendeskを活用しています。

重要なのは、Airレジが使えることではなく、顧客の事業支援

MZ:具体的には、どのようなサポートを行っているのでしょうか。

遠田:特徴的なのは、リアルとデジタル両方のチャネルでサポートを行っていることです。まず、お客様とのリアルな接点として、ビックカメラさんと協業して一部の店舗にAirレジ サービスカウンターを設けています。そこでは周辺機器の販売のほか、Airレジ導入に関するご相談やサポートも受け付けています。

 また私たちは、マーケティングオートメーションツールを使って、お客様に積極的なサポートを実施しています。DWH(データウェアハウス)とも連携しアカウント登録後の設定状況を分析した上で、アウトバウンドで電話をかけ、Airレジを実際にお使いいただくところまで支援しています。

 またお問い合わせをいただいたときも、お客様がどの設定でつまづいているのか推測することができるので、的確なサポートが可能です。従来のリアルの手法とデータドリブンによるデジタルのサポート、両方からのサポートが徹底できている数少ない企業だと自負しています。

MZ:問い合わせを受けるだけではなく、企業側から積極的にサポートを行っているのですね。カスタマーサポートにおけるKPIを教えてください。

遠田:一般的なカスタマーサポートと同様、電話の応答率や24時間以内のメール回答率、メール1回の返信でお客様が解決に至ったかなどを見ています。ただ一方で、通話時間はあまり重視していません。限度はありますが、長く話すことでお客様に納得いただけたのであれば、良いユーザー体験だと捉えているのです。

 あくまで私たちの事業におけるゴールは、Airレジをご利用いただくことではなく、お客様のスムーズな開店や事業の運営を支援すること。アウトバウンドで電話をかけるときも、Airレジの使い方や機能についてではなく、業務上何にお困りなのか、その上でAirレジは何ができるのか、という視点でヒアリングをするようにしています。

Zendesk導入で、ユーザー自身で問題解決できる環境を構築

MZ:AirレジのカスタマーサポートにZendeskを導入したのは約3年前とのことですが、その経緯をお聞かせください。

遠田:当時はAirレジ事業がスタートし、アカウントの増加に合わせて電話でのお問い合わせも増え続けているという状況でした。しかしオペレーターを増やす対応だけでは、コストもかさんでしまいます。

 そこで新しいサポートチャネルとしてチャットの導入を行うのに加え、FAQを充実させ、お客様自身で問題解決ができる基盤を作りたいと考えていました。その先にはプロアクティブなカスタマーサポートを描いていましたし、そのためにCS業務とCRMや各種データベースの連携も必要だったのです。

 これらを実現するのに欠かせないのがZendeskでした。APIが提供されているため、データ連携もしやすく柔軟にカスタマイズできるところが魅力的でした。

MZ:Zendeskをどのように活用されていますか。

遠田:まず、Zendesk Guideを使ったFAQページの更新に力をいれています。

 Zendeskの履歴を分析し、お問い合わせの多い順にカテゴリーごとの優先度を決め、該当するページを改善・更新するのです。このFAQページはZendesk Chatを使って、一定時間ページに滞在しているユーザーへ「何かお困りですか」と自動的に話しかけ、チャットをスタートさせています。

MZ:Zendeskの機能で、欠かせないものはありますか。

遠田:トリガ機能ですね。Zendeskはお問い合わせを「チケット」と呼びますが、トリガ機能を使うと「チケットが更新されたらこのアクションをする」「最終回答後に一定期間返答がなければ満足度アンケートのメールを送る」などのルールが自動化できます。カスタマーサポートの運用が属人的にならず、システムに紐付くという点は実用的で良いと感じています。

電話中心からチャットへスライド、顧客との強い関係構築も

MZ:チャット対応を進めてきて、その利点はどのようなところにあるとお考えですか。

遠田:やはり、一度に複数のお問い合わせを対応できるという点です。もちろん多すぎると対応が中途半端になるため、オペレーターのスキルに合わせて同時対応できる人数はコントロールしています。

 また電話やメールに比べ、気軽に相談できるというところもメリットです。私たちもチャットであれば、質問の意図やお客様が本当に知りたいことをリアルタイムに聞くことができ、結果としてコミュニケーションにかかる工数を減らせています。

 Zendeskを導入した頃はお電話でのお問い合わせが9割でしたが、今では3割から4割がチャットからになっています。

MZ:Zendeskの導入で、業務の負荷やお客様の満足度に変化はありましたか。

遠田:お客様のアカウントが増えている中、お問い合わせ数は横ばいという良い傾向が出ており、オペレーターの増員を抑えることができています。また負荷が軽減されたことで、オペレーターチームの業務が広がり、新しくAirレジ以外のカスタマーサポートも担当するようになりました。

 お客様満足度もアンケートで可視化されるため、サポート履歴を振り返り改善に生かすこともできていますね。また半年に1回行うCSアンケートでは、担当者の名前を挙げサポートを評価いただくケースや、「この人に対応してほしい」と指名をいただくこともあります。カスタマーサポートを通してお客様との関係構築ができていると感じます。

リアルタイムなサポートを目指す

MZ:お客様からのフィードバックをもとにサービスの改善などは行っていますか。

遠田:ビックカメラさんとの協業は、お客様の周辺機器を実際に見たい・触ってみたい・相談したいといった声が多く集まったことから実現しました。実際、多くのお客様がAirレジ サービスカウンターに足を運んでいただいていることから、リアルな接点でサポートすることの重要性を感じています。

MZ:これからどのようにサポートを強化していきたいですか。

遠田:お客様のリテラシーやAirレジ サービスカウンターの実績を考えますと、やはり人を介したサポートは欠かせません。引き続きリアルとデジタル両軸でのサポートを心がけたいです。

 また将来的には、AIやチャットボットというテクノロジーを取り入れ、夜間やお客様のご都合に合わせた24時間のサポートも必要になってくると感じています。

 その上でZendeskには、チケットの履歴からユーザーの傾向を導き出す機能があると心強いですね。たとえば「お客様の苦手ポイントを分析し、サポートの手法を提案する」というアシスタントのような存在であると、オペレーターも自信をもってより良いサポートができると思います。

カスタマーサポートもマーケティングの一部である

MZ:最後に、遠田さまの考えるカスタマーサポートの未来図についてお聞かせください。

遠田:カスタマーサポートそのものの役割が、変わってくると考えています。たとえば、「Airレジを導入したいのですが」というお客様へのサポートは、本来はマーケティングやセールスが担う領域でしょう。

 しかし、お客様から見れば同じAirレジというサービスに接している状況ですし、担当部署により対応に違いがあってはいけません。一気通貫のコミュニケーションをするために、CXチームがマーケ・セールスの領域へストレッチしているのです。カスタマーサポートがマーケティング分野へ近づいていると感じています。

MZ:ビックカメラとの協業事例からも、カスタマーサポートを起点にビジネスやマーケティングを考える機会が増えてきそうですね。ありがとうございました。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/01/31 11:00 https://markezine.jp/article/detail/27735