「世界一の豪華寝台列車」という新たな夢
2009年、著者はJR九州の社長に就任した。それまでの改革が実を結び、会社は順調に成長を続けていた。そして2011年には国鉄時代からの悲願だった九州新幹線の開業も成し遂げられた。だが著者は満足しなかった。「次なる夢を描かなければいけない」と考えた。夢がなくなった組織は、進むべき方向を見失い、どう努力すればいいのかわからなくなりがちだからだ。
そこで著者は全社に向けて新たな提案をする。「世界一の豪華寝台列車を走らせよう」。こうして、今やチケット倍率200倍にもなる大人気のクルーズトレイン「ななつ星 in九州」実現に向けてのプロジェクトが始まった。
技術者たちは、自分たちの持つできる限りの技術と思いを車両製作にぶつけた。“世界一”という言葉が彼らの胸を熱くした。
客室乗務員は、社内の1,000人以上から接客に優れた12人を選考。それに加え社外からも採用を行うと、国際線ベテランCA、ホテルマン、バーテンダーなどサービスのプロフェッショナルから多数の応募が。みな“世界一の列車”というスローガンに惹かれてきたのだ。
これがもし、ただ「豪華寝台列車を走らせよう」というだけの夢だったとしたら、関わる人たちの姿勢は大きく違っただろう。前代未聞のアイデアであるということに加え、“世界一”というスローガンが関係者全員のやる気を引き出した。そのやる気こそが、ななつ星の成功の最も重要なファクターだった。
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