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清水誠直伝!スローガンで終わってしまいがちな「顧客視点のマーケティング」を着実に進める方法

 昨年3月にWebアナリティクスの第一人者 清水誠氏がナイルのデジタルマーケティング戦略顧問に就任した。そもそもどういった狙いがあったのか。そして就任から約一年が経ち現在どのような感触をえているのか。清水氏とナイルの今崎氏に話を聞いた。

顧客体験を重視する姿勢に共感

MarkeZine編集部(以下、MZ):Webアナリストとして著名な清水さんがナイルさんの戦略顧問に就任されてから約一年が経ちました。ニュースを聞いた時は意外に感じたのですが、改めて就任のきっかけや背景を教えていただけますか。

ナイル デジタルマーケティング事業部 デジタルマーケティング戦略顧問 清水誠 同 営業部門 部門長 今崎善秀
ナイル デジタルマーケティング事業部 デジタルマーケティング戦略顧問 清水誠氏(写真右)
同 営業部門 部門長 今崎善秀氏(写真左)

今崎:元々のきっかけは私たちからのアプローチです。弊社はおかげ様でSEOやコンテンツマーケの領域では、ある程度認知されています。一方で、近年お客様から求められるニーズが、SEOやコンテンツマーケでカバーできる範囲を越えることが増えています。効果検証やWeb解析など、現状ノウハウがない領域を強化するには、社内で育てるよりも外部からノウハウをインストールしたほうが早いと考え、清水さんにコンタクトを取らせて頂きました。

清水:顧客体験を重視する姿勢に共感しお受けしました。これまでSEO領域にはあまり縁がなく関わる機会が少なかったのですが、実は自分がやってきたことと親和性が高いのではと最近感じております。

 SEOとコンテンツマーケはセットの話です。企業がコンテンツマーケに注目している背景は、広告からの集客だけでは限界に近づいてきているという証し。一方で検索結果の上位表示や話題性あるコンテンツ作りだけを目的に行うのは、あまりにも短期的な発想です。

 ユーザーに対してどういう態度変容を起こしたいのか、気持ちをどう動かしたいのかという視点を持つこと、そしてその行動をしっかりとデータで計測し評価をすることが大切で、私はそれを提唱し続けています。その視点に立ってSEOやコンテンツマーケ、必要であれば他の手法を駆使すれば総合的な顧客視点のマーケティングが実現できるのではと考えております。

スローガンで終わってしまいがちな「顧客視点」

MZ:「顧客視点」については、随分前から清水さんは様々なところでおっしゃっていたと記憶しておりますが、SEOやコンテンツマーケの領域ともつながりはじめたということですね。

 ところでSEOやコンテンツマーケに対する見方は近年変わってきているのでしょうか。たとえばSEOであれば「検索結果で上位表示されればOK」のような認識がいまだに多いように思いますが。

今崎:そうですね。やはり、そのような認識はいまだに多いです。しかしそうした中でも、顧客のためになるものを提供しないと、結果がついてこないことに気づき始めたお客様も、多くなってきているなと感じます。弊社へお問い合わせいただく企業様に限っては、だいぶ変わりました。

 コンテンツに関する問い合わせは、相変わらず増えていますが、中でも多いのが「取り組んだものの、思ったより効果がでない」という声です。こういったケースの大半は「お客様にどうなってもらいたい」という、コンテンツが顧客に与える価値提供の考えを置き去りにして、対策キーワードの順位だけを目的にしたり、自分たちが伝えたいことだけの観点で先行して始めてしまったからですが。

清水:Content is kingという考え方が徐々に定着しつつあり、それと並行して検索体験が重要という認識が広まっています。よい方向に進んでいますが、まだまだサイトへたくさん人が来ればいいという短絡的な考え方が多いのも事実です。

 「顧客体験が大事」というわりに、それをきちんとデータとして把握しているケースが少ないですよね。結局、その行動によってお客様がどう変わって、最終的にどう利益に結びついたのかがわからないと顧客視点は定着しません。

 経営理念に「顧客」という言葉が入っているケースは非常に多いですが、本当に顧客のことを理解している企業がどれだけいるのでしょうか。正直「スローガンで終わってしまっている」ケースが多いです。

図解とデータで顧客体験を見える化

MZ:「スローガンで終わってしまう」という話は自ら振り返っても耳が痛いですね……。これまで様々なツールが登場しデータ活用の重要性も叫ばれていますが、定着している例は少ないと感じます。

清水:今はデジタルの時代で、データがとりやすい環境になりました。Web上の行動データ、購買データ、心理系のデータ、属性データ……オンライン、オフライン含めそれらのデータを集めると昔ではありえないぐらいのレベルで「顧客理解」が可能です。

 顧客理解といっても一人ひとりを調べるということではなく「パターン化して抽象化・モデル化する」ことが大切。そうしてはじめて横展開ができ様々なところで活用され広がっていきます。

 このような顧客視点でのマーケティングを実行するための方法論として、私は以前からコンセプトダイアグラムという手法を提唱しています。コンセプトダイアグラムは、企業が戦略的に望む顧客の変化と、それに対して企業が取り組むべき施策の関係性を図解化したコミュニケーションの戦略マップです(詳細はこちら)。

 望ましい顧客の変化を図解でモデル化した後は、行動・心理・属性データを統合して顧客を状態ごとにセグメント化する「カスタマーアナリティクス」を実践することで、××状態の人たちを次のフェーズへ進めるために何をいつどこでどう伝えるべきか、という施策を具体的に検討します。

 予算やツール、施策ありきではなく、戦略的に望む顧客の態度変容を起点とし、顧客をデータで理解した上で顧客体験を設計し、長期的な企業価値を高めていくのです。

今崎:様々な企業様の例を見ていると「何のためにやるのか」という、そもそもの目的が抜け落ちているケースが非常に多いと感じます。しかしカスタマーアナリティクスを取り入れると「顧客にこういう風になってもらいたい」という視点が芽生えてきます。

 ページビューやコンバージョンといった「数字」の話ではなく、具体的にデータで顧客の状態を把握し評価できるのでチームのみんなが共通言語をもって語ることができる点もポイントです。

 たとえば、コンテンツマーケ一つをとっても、記事制作担当、SEO担当、ソーシャル担当など色々な役割の人がいます。ソーシャル担当とSEO担当の役割は必ずしも共通ではなくばらばらに役割を持ちサイロ化してしまうケースが多い。

 しかし、カスタマーアナリティクスの視点を取り入れれば、ソーシャル担当はユーザーをこういう気持ちにするためにやっている、SEO担当はこのキーワードで入ってきたユーザーをこういう気持ちになってもらうためにする、といったように各施策に関わっている人の仕事に役割と目的を持たせ、ユーザーがこういう風に態度変容したからよかったよと評価できる。こういう視点が生まれると、ソーシャルに関しては効果がでたからさらに予算を投下しようなど「正しい投資判断」にもつながります。

自分たちの視点が一段階レベルアップ

MZ:たしかにユーザーの態度変容を指標にすれば、良かったのか悪かったのかの判断がわかりやすいので、次のアクションにもつながりやすくなりますね。現在5つのプロジェクトが動いていると聞いていますが、具体的にどのような状況なのか目立った変化や成果があれば教えてください。

今崎:まず清水さんに顧問として入っていただいたことで、自分たち自身の視点が変わりました。一つひとつのキーワードやコンテンツに対する意味や役割を考え、それは何のためにやるのか? ユーザーに対してどういう影響を与えたいのか? という思考がインストールされました。

 そもそも「顧客の態度変容を効果検証できる」という発想がなかったので、その考えが事業部全体に浸透し、より高い視点を持ったアウトプットが生まれていると感じます。

MZ:自分たち自身の視座が高まったということですね。実際にプロジェクトを進めているクライアントさんにはどのような影響がありましたか?

今崎:一番印象的だったのは求人系の案件です。元々はSEO関連の引き合いで、特定のキーワードでの検索流入を増やしたいというやりたいことがはっきりしていました。

 通常はキーワードの洗い出し等の作業を進めていくのですが、そもそもどういうお客様にどういう体験を提供したいのか、御社だからできることはなんでしょうか? という「顧客視点での取り組み」を提案し、コンセプトダイアグラムおよびカスタマーアナリティクスを取り入れたワークショップを行いました。

清水:ワークショップに取り組む際のポイントは、既存の思考や枠組みを取っ払ってディスカッションすることです。そうすると自分たちはユーザーに対して色々な体験を提供できると、次々とアイデアがでてきます。それらのアイデアが実際に上手くいったかどうかを、カスタマーアナリティクスを活用しレポートに落とし込んでいきます。

 一年ぐらい継続してやっていくと、おもしろいようにガラガラと変わっていきますよ(笑)。「顧客視点」という軸の元、具体的に社内の会話が変わったり、部署を越えた協力体制ができたり。

 よく耳にするのが「社内で企画を通しやすくなった」という声ですね。このコンテンツは○○をやるために企画しました。しかし、それだけだと態度変容しないのでソーシャルも含めて企画しますみたいな話につながる。

 提案する企画の幅が広がってさらにそれが理解される。提案される側もわかりやすくなり、提案する側もイキイキと能動的に考えて提案するようになる。チームが一丸となって取り組めるように変わる。その変化は非常に気持ちがいいですね。

今崎:もちろん、目の前の課題に対してもしっかり応えます。ただ、それだけでは短期的な効果に留まってしまうのでマーケティング戦略全体の絵を描きつつという点がポイントです。今は第一フェーズが終了してこれから第二フェーズに入るあたりですが、これからの取り組みも楽しみです。

適切な投資判断をサポートし、本質的なコンサルを

MZ:そうですね。これからも非常に楽しみです。改めて清水さん、ナイルさん、それぞれの立場から、このプロジェクトを推進することでどのような価値を提供していきたいとお考えか教えていただけますか。

今崎:弊社としては既存の強みであるSEO・コンテンツマーケに加えて、清水さんの知見をインストールすることで2つの新たな価値を提供したいと思っております。

 1つ目は弊社とご契約頂いているお客様が、ユーザー中心のマーケティングに取り組んでいくにあたって、正しい投資判断をできるコンサルティングを提供していくことです。これは、清水さんが提唱されている「カスタマーアナリティクス」を通じて行うことができるようになります。

 担当者様ご自身はユーザー中心を理解し推進したいと思っていたとしても、現実には目の前の業務を遂行し短期的な数値も上げていかなければいけないジレンマにさらされています。こういった状況の中で、どのような取り組みから着手すれば良いのかわからなくて困ってるという声をもよく耳にします。

MZ:顧客視点の取り組みを進めたいと思いつつも、歯がゆい思いをする。まさに理想と現実のギャップですね。

今崎:そのとおりです。そのため弊社は、お客様以上にユーザーを中心に据えて考える最後の砦でなければならないと思っています。このプロジェクトは「何のためにやるのか」「目的はなんなのか」「その結果、ユーザーはどういう状態になっていれば成功したと言えるのか」を見失わずに、ユーザーの行動や気持ちなどの態度変容をデータで可視化することで、適切な投資判断をコンサルティングしお客様の事業成長をサポートさせていただきたいと考えております。

 もう1つは「コンセプトダイアグラム」を通じて、経営理念から戦略に落とし込み、さらに競合優位性を高めていくコンサルティングを提供したいと考えています。お客様それぞれには経営理念があり、その企業だからこそのプロジェクト、サービス、サイトを立ち上げることで強みが生まれます。

 やみくもにSEOで検索順位を上げる、流入を増やす、コンテンツマーケで記事を大量に作る、という事ではなく「獲得したいお客様を獲得していくための施策」「ユーザーが求めていた(出会いたかった)サービスとの出会いを創出していくための新たな施策」というように、質の高いお客様を獲得するために、企業が取り組むことを示唆していけるようなコンサルティングを行っていきたいと考えています。

 繰り返しになりますが「お客様がユーザ-満足度を高めるための正しい投資判断をサポートさせて頂き、最終的にお客様、ユーザーともに満足度が高まる本質的なコンサルティング」を、清水さんと共に提供していきたいと考えております。

もったいないを無くす/デジマ格差の解消

MZ:清水さんからもお願いします。実践に重きを置く姿勢は理解しておりますが、どのような価値を提供していきたいとお考えでしょうか。

清水:実践にこだわる理由は開発した概念・手法が机上の空論にならないようにするため。検証と実践の手段としてリアルなプロジェクトを持ちたいと考えています。もちろん結果にもこだわります。そういった意味だと、今回のプロジェクトは非常に親和性が高いと感じていてこの先も楽しみです。

 そもそも、自分がなぜ顧客視点にこだわっているのかというと、顧客視点が抜け落ちているため使いづらいと感じる商品やサービスが多く、もったいないと感じることが多々あるためです。

 社内政治でこうなってしまったんだろうな……なんてことも透けてみえてしますのですが(苦笑)、そういう状況を打破したい。打破するためには、現場がただひたすら長時間頑張ればいいという話でもないし、正しい判断ができていない経営側が悪いというだけでもない。コンセプトダイアグラムやカスタマーアナリティクスで顧客を見える化し、経営と現場のギャップを埋め一丸となって進んでいける世界を作っていきたい。

MZ:経営と現場のギャップを埋めるためにまさに「顧客視点」は必要ですね。

清水:そのとおりです。さらにもう1つ野望があります。SEOに関心を持ちはじめた理由の1つでもあるのですが、デジタルマーケティングの世界が成熟していく中で「デジマ格差」が生まれている。大企業でもないと1,000万を超えるツールの導入は現実的ではありません。

 ツールありき、手法ありきでできることや、やれることが決まってしまいがちな傾向になっているのが歯がゆいです。SEOやコンテンツマーケを軸にすれば、比較的少ない投資で顧客体験を高めることができると可能性があると思いますし、少ない投資でできた方が日本全国へのインパクトが大きいと思う。

 高騰しているデジタルマーケティングの世界ですが、スモールスタートでも成功できるモデルを作りたい。いずれにせよこれからが本番です。継続してアクションを起こし一つでも多くの成功事例を作っていきたいです。

事業領域を拡大するナイルの特長をさらに知りたい方はこちらへ

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/03/09 10:00 https://markezine.jp/article/detail/27900