進む内製化の流れへの適応
塩見:紹介された3つの事例は一人でやられたのですか?
廣澤:SEMは一人ではできませんが、重回帰分析とBLSの検定は自分でやりました。その時、たまたま統計検定の勉強をしていたからなのですが、皆さんが必ずしも自分でやらないといけないわけではないと思います。
塩見:分析は時間もかかります。習慣化し、組織的に知見を蓄積するのは何が重要になるのでしょうか。
廣澤:我々がまずやってみたのは若手同士の勉強会です。統計に強い人や機械学習を勉強している人を呼んで、知見を聞くというものになります。よくあるのが、専門性の高い人が、その高い専門性をビジネスに活しきれていないケースです。専門性が高い故にアウトプットがビジネス上の必要なそれとイメージがズレてしまうこともあります。プロになるほど、自分のスキルや技術を会社のためにどう活かせるのかを共有しないといけないと思います。本当はもっと組織的にできるといいのですが。
要所での外部の活用
塩見:外部と一緒にやっていこうという取り組みはどんなことですか?
廣澤: Amazon Web ServicesやGoogle Cloud Platformの動向を見ると、プラットフォームやインフラに限る話ではありませんが、事業会社の内製化を前提としたサービスの発展が著しいと感じています。こういったサービスの活用や社内への啓蒙について外部の知見を借りながら発展させていくことが重要だと思います。IT部門や情報システム部門が面倒を見てくれるとは限らない。これからのマーケターには、ツールを使いこなす力やインフラを知る力が求められると思います。土台がわからないとWebサイト1つ取ってももいいものは作れないですし、内製化の流れの中でも、外部と知見を交換しながら協働する一緒にやる力をつけたいですね。
塩見:ある程度を内部でやる中で、要所を外部にということでしょうか。花王さんのように、オフラインのコンバージョンの割合が多いと、効果測定は難しい。テレビや店頭も含めて全体の構造を明らかにするのは永遠の課題です。そこを追求すると同時に、シンプルに紐解いて次のアクションにつなげることが大事だと思います。いろいろなデータソースがあるからこそ、それに溺れるのではなく整理をしましょう。調査会社に集まるデータに限度があるのは事実ですが、外部の協力会社も含めて事業会社と一緒に課題に取り組んでいきたいと思います。
廣澤:マルチタッチアトリビューションのような比較的新しい分析手法の動向を見ていると、データがより一層増えた上で整理までされてくると、分析から導ける解は一義的になるのではないかとも思います。マーケターとしては、いかに生活者へ偶然のハピネスを届けられるかが、常に考え達成しなければならない課題なので、なんでもかんでもデータで明らかにしたいとは思いませんが、最適化と偶然の出会い(セレンディピティ)のバランスをとるところが今後のテーマです。広告効果の検証は、まだまだ明らかにする余地は大きいと思います。