1,000万DL超のマンガアプリ「GANMA!」
MarkeZine編集部(以下、MZ):ブランディングにはじまり、現在ダイレクトレスポンス系にもInstagram広告が効果を発揮しています。今回はマンガアプリ「GANMA!」で活用された最新の広告フォーマットであるカルーセル形式のストーリーズ広告についてうかがいます。はじめに、今回の施策に関する座組みを教えていただけますか?
伊崎:現在私は「GANMA!」のマーケティング担当として、プロモーションの広告戦略立案やクリエイティブの監修などを行っています。今回の施策は、どういった作品をどのようにアピールするかは社内で戦略を立て、それを元にセプテーニに相談し、クリエイティブのディレクションと運用を進めてもらいました。また、クリエイティブ制作自体はSepteni Ads Creativeで進めました。
MZ:「GANMA!」の特長と規模感、そして通常はどういったメディアプランを立てているのかうかがえますか?
伊崎:「GANMA!」はオリジナルマンガを150作品以上配信しており、現在1,000万DL(2018年4月時点)まで伸びています。コアユーザーは10代・20代を中心とした若年層で、このゾーンに強みをもつメディアを中心にプロモーションしていくのが基本的な戦略です。
より身近な写真や動画がアップされるストーリーズ
MZ:その中で、Instagramはどのように活用されていたのでしょうか?
伊崎:Instagramには昨年から広告出稿しており、女性若年層のアクティブユーザーがどんどん増えているのを広告効果からも実感していました。それに対して、私たちも年明けからプッシュする作品を、若年女性からも多くの人気を得ている『外れたみんなの頭のネジ』の一本に絞り、リソースを全投入することで改善してきました。
MZ:Instagramはプラットフォームとして成長中ですが、生活者の間で利用動向はどのように変化してきていますか?
金子:中心ユーザーは変わらず若年層ですが、最近では上の年代の方にも広く使われるようになってきていて、ユーザー層自体が拡大しています。また、以前はInstagramといえば「オシャレな写真や動画が見られる場所」として認識されていましたが、24時間後に自動的に投稿内容が消えるストーリーズが登場して、楽しみ方も広がっています。
MZ:通常のフィードとストーリーズでは、受け止め方が違うのでしょうか?
金子:使い分けされている印象があります。フィードでは従来通り特別な一枚を投稿しているのに対し、ストーリーズは投稿内容が自動的に消えるという特徴から気軽に投稿できるため、より身近で気取らない写真や動画をアップするユーザーが多いように感じます。ストーリーズはフィードに比べると、より若年層での普及スピードが著しいようです。
より多くのユーザーにアプローチできるチャンス
MZ:今回ストーリーズ広告のカルーセル形式という、新しいフォーマットを試すことを決めた理由とは?
金子:今回のストーリーズ広告のカルーセル形式を先行してテスト導入できたのはFacebook社に認定されているパートナー企業のみだったのですが、カルーセル形式になることでクリエイティブの幅が拡がり、「GANMA!」というサービスをより深く表現できる広告フォーマットであると思い、すぐに提案を進めました。
伊崎:昨今はマンガに限らず、映像や音楽など様々なサービスにおいてモバイルシフトは加速しており、多くの選択肢の中から「GANMA!」を使っていただくことの難易度は高まっています。Instagramで以前より出稿していたストーリーズ広告は、ユーザー層が「GANMA!」のコアユーザーと合致していることに加えてターゲティング精度が高いこともあり、獲得効率には満足していました。一方、獲得ボリュームに課題を感じてもいました。そこへ、新しい広告フォーマットとしてカルーセル形式が加わるとうかがい、より多くのInstagramユーザーに対してアプローチできるチャンスと捉え、すぐにテストケースに手を挙げました。
MZ:ストーリーズは縦型でフルサイズのフォーマットのため没入感が得られやすく、それが広告効果にもつながっているのでしょう。これがカルーセルになると、どんな違いが出てくるのですか?
金子:フォーマットとそれによる没入感は、これまで通りだと思います。CTAの仕組みも同じですが、今までは15秒再生のひとつの動画に限られていたのが、カルーセルだと最大3点の動画や静止画を入稿できるので、より柔軟な表現が可能になりました。
MZ:特に期待していた効果は?
伊崎:カルーセル形式になることで、ページをめくるというマンガコンテンツ自体を疑似体験してもらえる点が大きかったですね。「GANMA!」は「第一話から最新話まで全話無料」という点も特徴的ですが、ユーザーに興味を持っていただき「GANMA!」に触れてもらうために伝えるべき価値は「コンテンツの魅力」になります。広告フォーマットがカルーセル形式になることでページをめくるという動きが加わり、コンテンツのおもしろさ、魅力を伝えるための表現の幅が広がることを期待していましたし、結果としてこれまで以上に獲得ボリュームを得られたこともカルーセル形式を活かせたからこそと考えています。
CTRは1.7倍、CPIは9%改善へ
MZ:施策の具体的な成果をうかがえますか?
伊崎:従来のストーリーズ広告に比べてCTRが1.7倍になり、CPIは9%抑えられました。CTAを介してダウンロード画面に遷移してからのCVRはカルーセル形式以前から高かった事もあり、大きな変化は見られませんでした。しかし、CTRが上がった事で流入数の増加、ひいてはダウンロード数の増加につながりました。さらには配信アルゴリズムに対する優位性にもつながり、現在では獲得効率の改善に至っています。
MZ:他に定性的な反応などはありましたか?
伊崎:『外れたみんなの頭のネジ』という作品はジャンルでいうとサイコホラーです。「怖い」という表現は、非日常であるからこそ目を引きやすいという特徴を持っている一方で、その特徴を生かした過度な表現は、苦手な方からのお問い合わせにつながる傾向もあります。コンテンツの魅力を伝えるための表現には様々な反響を踏まえながら試行錯誤していますが、カルーセル形式のストーリーズではコンテンツの魅力を適切に表現できたと感じています。
MZ:その理由はなんだと思いますか?
伊崎:ユーザー自身が能動的にページを読み進めることで、作品の特徴である「独特の不気味さ」を感じてもらえる、という流れをカルーセル形式の広告表現で作れたからだと思います。作品の特徴を広告という限られたスペースの中で正しく伝えることができると、ユーザーが「GANMA!」を利用した時も広告とのギャップを感じることなくアプリを楽しんでもらえるため、ダウンロード後の継続率が高いというポジティブな結果も併せて得られています。
ネイティブなユーザー体験の中に異質感を演出
MZ:作品の世界観を伝えるコマ選びなどを含めて、今回のクリエイティブで注力したことは?
伊崎:ユーザー体験はネイティブに、でも内容自体は作品の持つ異質感やマンガの紙面に近いザラザラした感じがよく伝わる、そんなクリエイティブを目指しました。
具体的には、ストーリーズ広告はオーガニック投稿に並んでユーザーに接触することになるので、画像に過度な装飾をしたりして広告として目立たせるのではなく、パッと見はユーザーがスクリーンショットを撮って上げたようなシンプルな体裁にしました。一方で内容は、前述のように絵柄のインパクトではなく前後の文脈で異質感が出るように設計しました。イントロがありクライマックスに向かうような、徐々に作品の異質感に「あれっ?」と気づいて引き込む体験をつくれればと考えました。
MZ:こちらは金子さんディレクションの下、Septeni Ads Creativeで制作したとのことですが、コマの組み替えなどもしているのですか?
金子:そうですね。クリエイターが漫画を実際に読み込んで、先ほどのインパクトとのバランスを考慮しながら引きの強いシーンを切り取り、作品が持つ独特な世界観を表現できるよう組み替えながら制作しました。カルーセルは動画と違い、ユーザーが前後の画像への遷移を自分で操作できるので、漫画に文字量が多くても読みたいペースで進められます。文字量を制限しなくてよかったことも、効果につながったのではないかと思います。
リテンション目的の活用にも期待
MZ:ストーリーズ広告のダイレクト系の活用では、CTAが重要になりますが、その点での工夫は?
伊崎:ユーザーの視線動線を考えると、従来のマンガは右上から左下へコマを読んでいきます。でもストーリーズではシンプルに上から下へ誘導し、そのままCTAへつなげるほうがいいと考え、自然な視線動線を再現できるように広告クリエイティブ内のコマ配置、大きさ等を配慮しました。
MZ:Instagramを使ってセプテーニとして取り組みたいことは?
金子:セプテーニは、ソーシャルメディアにおける広告運用をいち早く取り組み始め、実績を積んできました。それによる、運用ノウハウも非常に充実していると自負しています。その中でもFacebookやInstagramにおける広告においては、現在Facebook社よりパートナー企業として認定されていることもあり、普段から密に情報交換をさせていただいているので、広告主にとって有益な情報提供をスピーディに行える体制を組んでいます。今後も、Instagram広告をはじめ、広告効果の最大化に向け、広告主と媒体社とともに様々な挑戦に取り組んでいきたいと考えています。
MZ:Instagram広告への期待をお聞かせください。
伊崎:Instagramはアクティブアカウント数の伸びに勢いがあり、常にユーザーがアクティブに接触しているメディアであることに加え、高いターゲティング精度をもとに、的確に狙ったユーザーへリーチできる点が、「GANMA!」を知ってもらう場として非常に有効であると感じています。
ただ、ユーザーが増えれば増えるほど、一口に「10代・20代女性」と言っても趣味や生活スタイルは多種多様で複雑化しており、デモグラ配信のみでは、マンガアプリと親和性が高いユーザーに配信するのは難しくなると考えています。
その為、ノンターゲティングでも効率よく、獲得ボリュームを担保できるよう、ターゲティング、アルゴリズム精度の高さに甘んじず、広告出稿側もよりコアターゲットに届くデザインや訴求方法を模索、研究していく必要があると考えています。また、そういったクリエイティブにどんどんチャレンジできればと思います。今後は新規獲得に限らず、リテンション目的でも活用したいと思っています。