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第107号(2024年11月号)
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読者と一緒に企画を作る!MarkeZineで共創編集会議をやってみた

 2018年4月、MarkeZineは共創マーケティングプラットフォーム「Blabo!」に1つの企画を投稿しました。それは「もしもMarkeZineの編集部員だったら、どんな特集企画を考えるか」を尋ねるもの。読者と共に企画を考える共創編集会議、その模様をお届けします!

MarkeZine初、共創編集会議とは?

  雑誌やWebメディアを読んでいて、「もしも自分が編集者だったら、こんな記事を作りたい!」と考えたことがある人は、意外と多いのではないでしょうか。MarkeZine編集部が、2018年4月13日〜同年5月8日に行った「今日からあなたも編集者に!? もしもMarkeZineの編集部員だったら、どんな特集企画をしたい?」は、まさにこうした読者の思いをターゲットにした企画です。

左から:Blabo 坂田直樹氏、キリン 島袋孝一氏
スマートニュース 菅原健一氏、三井住友カード 福田保範氏

 この企画は、生活者一人ひとりがプランナーとなってアイデアを実現する共創マーケティングプラットフォーム「Blabo!」を通じ、読者が読みたいテーマを募集したもの。こうして集まったテーマを元に、マーケティングの実務と現場を熟知しているマーケターの方々と編集部が知恵を出し合って、定期誌『MarkeZine』31号(2018年7月号)の特集企画を練り上げていく試みです。編集会議には、Blaboの坂田さん、キリンの島袋さん、スマートニュースの菅原さん、三井住友カードの福田さんにご参加いただきました。

読者のニーズやインサイトから、企画を共創する

安成:読者と一緒に企画を作り上げる共創編集会議をやりたいと思ったきっかけは、Blabo!で商品開発を進めたカルビーさんの事例をMarkeZineで取材したことです(参考記事はこちら)

 一方で、本来なら企画は編集者が考えるべきであり、それを読者や識者に任せるということは、編集者がやるべき職務を放棄しているという思いもあり、悩んだことも事実です。マーケターのみなさんは、率直に行って、今回の共創編集会議や共創マーケティングについてどうお考えでしょうか?

株式会社Blabo 代表取締役CEO 坂田直樹氏

坂田:そもそもモノ作りにおいて、生活者のニーズやインサイトがないと、いい商品は作れないと思うんです。お寿司屋さんで例えれば、いいネタを仕入れないと、美味しいお寿司は握れませんよね。そして、そのネタは生活者(読者)の中にある。編集者の役割は、仕入れたネタをどう握るか=どう編集して読ませるか、ということです。読者が何を求めているのかを明らかにして、それをMarkeZineらしく編集していくことが、読者とのいいつながりを作ることにつながると思います。

福田:うちのような金融業界だと、やはりまだレガシーな体質が残っていて、たとえばソーシャルメディアに対する不安やデジタルへの猜疑心を持つ人も多いんですよ。だからMarkeZineに掲載されている成功事例を読んでいても、こちらの状況と距離があり過ぎて、なかなか自分ごととして考えられないんですよね。そこを自分なりに、実現までの道筋を考えて因数分解してロードマップを描いていますが、レガシー業界に向けた道を示してくれる記事があると、僕らのような業界もすごく喜ぶと思いますね。

菅原:いまだにマーケティングはすべて代理店任せという企業も多いですよね。そういう企業や業界では、そもそもマーケティングに関するメディアには目もくれず、日経新聞しか読まないという人が多い(笑)。ただ、今はいろいろな施策があり、選択肢が増えています。お寿司の例でいえば、ネタがたくさんあって何を選べばいいのかわからない。昔なら、さしずめマグロのように、テレビCM一択が正解だったかもしれませんが、今はマーケティングのやり方も多様化しています。だからこそ、マーケターには目利き力が必要です。今回のような共創アプローチで企画を作るのなら、「実際のところ、何のテーマなら読みたい?」と、ズバリ聞いてしまうのがいいかもしれません。

島袋:私は自社Webメディアやソーシャルメディアの運営を担当しています。その中で、ファンの方と一緒にコンテンツを作ったり、コミュニケーションをとることもあります。このゴールデンウィークも、ファンの方を招いて横浜のビール工場でビール作り体験や工場見学会を実施しました。

 そもそも「読者の声を聞いてメディアを作るということ」は昔からある手法で、『週刊少年ジャンプ』の後ろのページには、読者参加型のハガキコーナーがありましたよね。あれは、読者が主役のページですよね。ラジオ番組も、リスナーからの電話リクエストや“ハガキ職人”が作るコーナーがある。現代においては、デジタルの世界でいえば、お客様のInstagramの投稿をリグラムで使うこともあります。要は、オーディエンスとの対話の場ややり方が変わっているだけで、Blabo!というプラットフォームを使った共創編集会議も、現代的で、とてもいいと思います。

識者は「MarkeZine」についてこう思っている

共創編集会議という初めてのアプローチについて、マーケターのみなさんからは好意的な評価をいただきました。せっかくなので、編集部がかねてより聞いてみたかった質問も投げてみました。それはズバリ……

市川:読者の視点からは、MarkeZineはどういうメディアに見えていますか?

スマートニュース株式会社 ブランド広告責任者 菅原健一氏

菅原:先ほどもいったように、今はいろいろな施策があるので、メディアの記事も施策のデパートのようになっている印象があります。もう少し概念的な話があるといいな、ということで、年初に「あなたは気づいているか?2018年マーケターが捉えなければならない5つの潮流」 という記事を書かせていただきました。

 ただ、福田さんからもお話があったように、いろいろなものが並んでいて、何を選べばいいか悩む人も多いと思います。するとやはり、施策を選ぶ前段階として「そもそもあなたはどういう情報を求めているのか、何が必要なのか」を整理することも有効ではないでしょうか。

福田:自分が何を求めているのかわからなくなっていますからね(笑)。とりあえず、これをやれば間違いないというランキングのようなコンテンツがあると便利かもしれません(一同爆笑)。

坂田:何を(what)、なぜ(why)、どうやって(how)というテーマは、それこそ因数分解して記事にすることはとても難しいと思います。どうしても属人的な部分が入るため、そこをどう解決したかというテーマは、記事よりも対話から生まれやすいのではないでしょうか。これからMarkeZineもコミュニティのような役割が求められるかもしれませんね。

菅原:whyやhowに関しては、確かにコミュニティの役割になるでしょうね。特にwhyについては、企業ごとに要件が異なるので、そういうものを羅列するのはコミュニティが向いています。そこからhowに落とし込む分科会が必要になる。

 雑誌というメディアは、そうした具体論ではなく、文字で読んでストックできるので、より抽象度が高い記事を出すといいと思います。抽象的な概念を本や雑誌で理解し、その上で何をやるのか決める。抽象度の高い記事が多いといいですね。全体を俯瞰できる地図や索引に相当するコンテンツも必要です。

島袋:あとはレベル感を統一することですね。先日、あるセミナーイベントに行ったら、「1年〜2年目の新人マーケター向け」「中堅向け」など、自分の立ち位置とレベルを合わせてプログラムをくんであり、とても役立ちました。

福田:社内で「マーケティングについて知りたいけど、どのメディアを読めばいいかわからない」と相談を受けることが多いんです。MarkeZineと、あといくつかの媒体を紹介するのですが、本当に初心者だと、読み方がわからないというケースもあるんです。「どういう順番で、何から勉強すればいいのかわからない」と。こういう読者向けに、菅原さんがいうような整理された地図があるとありがたいです。

募集した企画から選んだテーマは「口コミ」

識者の方々から、MarkeZineに対する指摘や評価をいただいたところで、いよいよ本題の編集会議です。1ヵ月弱という期間で、Blabo!に集まった次号テーマ候補はなんと47案。この中から、編集部が選んだテーマが「口コミ」です。なぜ口コミなのか。このテーマを選んだ背景には、「かつてと比べ、今口コミの力が揺らいでいるのではないか」という問題意識がありました。

アイデアを採用させていただいたmonaさんのコメント

「この度は、企画会議賞をいただきありがとうございます。自分のアイデアを選んでいただけるとは思ってもみなかったので、受賞の一報をいただいた時は大変うれしかったです。

 今回賞をいただいた「口コミマーケティング」のアイデアは、休日の出かけ先をSNSを利用して調べていたことがきっかけで思い浮かびました。インスタグラムでハッシュタグの多い場所の写真やコメントを読み、出かける場所を考えていたとき、SNSの台頭によって口コミの影響力が益々強くなってきていると思いました。そして近年の情報社会の中で企業が口コミの影響力をどのようにマーケティングし、利用しているのかを知りたいと思ったのでこのアイデアを提案させていただきました。

(Blabo!ユーザーのmonaさん/杉山奈々美さん)

monaさん(杉山奈々美さん)をはじめ、アイデアを投稿していただいた47名のみなさま、ありがとうございました!みなさまとのコメントのやり取り、一つひとつがとても楽しく印象的なものばかりでした。

安成:口コミする機会は、InstagramやTwitterなどが登場したこともあり、増えていると思います。その一方で、ここ数年はステマ問題が取り沙汰されるように、口コミの信頼性が低くなってきている状況があります。なぜこうした状況が起こったのか、そしてそんな口コミを企業はどう活用していくのか。企業がコントロールできない口コミというものに、どう向き合えばいいのか。そうしたことを、定期誌の特集で掘り下げたいと考えています。

キリン株式会社 デジタルマーケティング部 島袋孝一氏

島袋:今は購買行動プロセスの中で、口コミは欠かせない存在になっていますよね。「私は何か買う時、口コミは気にしないよ」と表向きには言いつつも、無意識のうちにネットショッピングで星の数やレビューを見てしまう。商品の比較サイトや飲食店を選ぶ時、口コミを見ない人のほうが少ないかもしれません。

菅原:業種別に入り方は違っても、必ず口コミというチャネルは通りますよね。レビューだったり星の数だったり、形式は問わないけれど、そういうものをチェックしてから決めるというパターンが、消費者行動に入ってきています。

坂田:消費者は、購買ファネルのどこで口コミを見るのかを明らかにするとおもしろいかもしれませんね。

企業は口コミをどう活用しているのか

口コミは、「購入者が商品やサービスをレビューするもの」であるため、企業はこれをうまく活用し、購買へのモチベーションや流行(バズる)につなげたいと考えています。その一方、編集会議では「口コミを社内のモチベーション向上に活用したい」というアイデアも出てきました。

安成:クレジットカードのような商品だと、口コミで入会が左右されるケースも多いと思いますが、福田さんは口コミというテーマについてどうお考えですか?

三井住友カード株式会社 統合マーケティング部 インサイトマーケティンググループ 福田保範氏

福田:金融業界は口コミのパワーが強力なので、会社として口コミコンテンツを作るということに抵抗があります。口コミを活用するシーンとしては、社員の意識改善や勇気付けが多いですね。具体的には、「カードを紛失した時に、こんな対応をしていただいたというお褒めの言葉がありました!」という感じです。

 もう1つ、口コミを通じて自社商品の良さを確認するということもあるんです。社員が三井住友カードの良さを外部に説明する時に、「うちのカードの強みは何だろう」「信頼と安心以外に、どんなメリットがあるのだろう」ということを、口コミを分析して認識する。そういう意味では、共創マーケティングの社内版になりますが、三井住友カードのファンを集めて社員向けに口コミを集約し、モチベーションを高めたり、製品の強みを確認したりする試みもやっていきたいと思っているんですよ。

菅原:プロダクトづくりは、「どう作るか」と同時に「今のプロダクトをどう見てもらったら、一番だと思ってもらえるか」も考える必要があります。そういう意味では、口コミを分析して自社製品の評価軸を知り、「ナンバーワン」の切り口を探すというのは有効だと思います。口コミには媒介となる言葉が必要なので、商品の良さを表す言葉があまり長いものはNGですけど。

島袋:弊社は、ソーシャルリスニングツールを使って、積極的に生活者の声を傾聴していこうとしています。ソーシャルの分析をして、企業が伝えたいメッセージと、生活者が抱いているブランドイメージ。その現状理解と、中長期的なコミュニケーションの深耕が狙いです。これは今まさに取り組み始めたところで、今後の大きな目標ですね。

 あとはテキストではない(言語化されていない)口コミ、Instagramの画像解析で「声にならない声」も拾っています。Instagramのユーザーが全員、自社の商品名のハッシュタグをつけて投稿するわけではないので、「edison.ai」という画像解析でテキストがなくても、「一番搾りはいつどんな場所でよく飲まれているのか」「どういう時に飲みたくなるのか」などを調べたことがあります。言語・テキストの「口コミ」で見えているのは「氷山の一角」で、その他の部分を見える化するというイメージです。 

口コミというテーマでどういう誌面を作るのか

編集会議も佳境に入り、「口コミ」というテーマをどういう切り口でコンテンツに落とし込むのかが議題となりました。
MarkeZine編集部

菅原:ひとことで口コミといいますが、コミュニティマーケティングやインフルエンサーマーケティングと口コミは切っても切り離せないと思います。特集では、これらの関係をどうフォーカスするのですか?

安成:まず問題意識としてもっているのは、口コミの価値が変わってきているということです。その前提に立ち、生活者の意思決定で口コミの存在はどのように変化しているのかを企画に落とし見たいと考えています。

坂田:「口コミを起こすハウツー」なのか「意思決定に口コミがどう関わっているのか」になるのか、そこを編集者がどう読み解くかがポイントですね。

菅原:そこで必要になるのは、先ほど話に出た「地図」ですね。特集で描く「口コミ」についての情報体系を最初に示すことがポイントです。口コミとは何かを解説し、それを明らかにすれば、そこから「口コミを誘発するにはどうすれば良いか」「商品をバズるにはどうするか」「選んでもらうために口コミをどう活用するか」「社内のモチベーション向上に口コミを活用するには」など、様々な問題意識に分化していくと思うんです。そこで初めて、読者は必要なことを知ることができる。

福田:当社だと、まだなかなか口コミ活用まではできませんが、「口コミを通じて企業やサービスを応援してくれる流れを作るにはどうすればいいか」があれば、読みたいと思います。

島袋:口コミをテーマにするなら、取材候補者もいろいろ考えられますね。東京工科大学講師の藤崎実さんは私も影響を受けた方ですし、Twitterの口コミ分析とソーシャルメディアマーケティングに詳しいホットリンクの桧野安弘さんも、おもしろい話を伺えると思います。

安成:ありがとうございます。あとは口コミのプラットフォームの方にも取材したいと考えているのですが、皆さんのご意見はいかがでしょうか。

坂田:マーケターなら、今活発化している良いプラットフォームについての情報は知りたいと思います。活発化している口コミプラットフォームは、参加者が発言しやすい環境が整っていますね。たとえばウィメンズパークやママリのように、出産・子育てとテーマを切っているプラットフォームは、「情報を知りたい人」と「子育て経験があり、教えてくれる人」が集まって、真剣に情報を交換しています。知りたいと思っていることに真摯に答える土壌があるので、ステマもありません。

安成:様々な視点からの意見、とても参考になります。 今回の編集会議を経て、さらに具体的な企画に落とし込み、7月25日刊行の定期誌『MarkeZine』31号の特集を作っていきます!本日はありがとうございました。

定期誌『MarkeZine』31号の特集をチラ見せ!

 今回の共創企画プロジェクトで得たアドバイスをもとに、定期誌『MarkeZine』31号の特集「口コミのメカニズム」を下記の構成で進めています。刊行の7月25日(水)に向けて、絶賛編集中です。ご期待ください!

第一部:生活者の意思決定における口コミの影響(仮)
東京工科大学 メディア学部 講師 藤崎実氏

第二部:口コミの真価と可能性を探る
(プラットフォーマ―)アイスタイル(@cosme/ウェディングパーク/コネヒト(ママリ)/Twitter Japan/フェイスブック ジャパン(Instagram)/リクルートライフスタイル(ホットペッパービューティー)/Retty
(BtoC)栃木サッカークラブ/ハーゲンダッツ ジャパン/メルカリ/ローソン/Zebra Japan(フライングタイガー)
(BtoB)セールスフォース・ドットコム/トレジャーデータ/ブレインパッド/マルケト

定期誌『MarkeZine』の最新情報はこちら

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/12 14:22 https://markezine.jp/article/detail/28498