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キーパーソンと語る共創の本質

商品開発自体がマーケティング カルビー地元チップスの取り組みから見える共創の本質

 「共創」というコンセプトが注目されて久しいが昨今そのやり方が進化を遂げている。デジタルプラットフォームを介して生活者の「生の声」を見える化することで、新たな気付きが得られる新しいやり方だ。この共創コンセプトを実践し、47都道府県の地元の味をポテトチップスで再現する取り組みを進めているのがカルビーだ。従来の商品開発やマーケティングでは実現できない、共創の大きな効果とは何か。カルビー マーケティング本部 小代剛氏と、日本最大の共創プラットフォーム「Blabo!」を運営し、カルビー地元チップスの開発に協力しているBlabo 代表取締役社長 坂田直樹氏が語り合った。

郷土料理味のチップスが「共創」を本格化するきっかけに

カルビー 小代剛氏(写真左)Blabo 坂田直樹氏(写真右)
カルビー 小代剛氏(写真左)Blabo 坂田直樹氏(写真右)

小代:おかげさまで、2017年から取り組んでいる「カルビーポテトチップス47都道府県の味」がいろいろなところで話題になっています。

 これは日本全国の地元ならではの味を開発する「♥ JPN(ラブ ジャパン)」というプロジェクトから生まれた商品ですが、当初は各都道府県の県庁・市役所や地元を代表する機関・企業等のご支援を受け、共同で開発していた取り組みから一歩進み、今回は地元の方からも意見を募り、本当に一人ひとりの消費者の方と協力して商品開発に取り組むことになりました。

 坂田さんには本当に感謝しています。これまで以上に反響が大きく、発売前から商品を楽しみにしている声をあちこちからいただいています。

坂田:こちらこそ、ありがとうございます。当社はいち消費者と手を取り合って製品や市場を創造していく「共創」というコンセプトを提唱していますが、カルビーさんをはじめ、こうした新しい市場創造のやり方に共感していただく企業が増え、うれしいかぎりです。

小代:確かに最近、共創という考え方がより注目されてきてますよね。実は当社は、共創という言葉が浸透する前から、そうした概念に基づいて製品を開発してきた歴史があります。実はその流れが、今回の地元チップス誕生につながっているのです。

坂田:その話を詳しく教えてください。

小代:私自身は2015年にカルビーに入社し、当初はサッポロポテトなどを担当していました。その当時、小学生に実際に新しいサッポロポテトを企画してもらうといった取り組みもしています。また、じゃがりこや、堅あげポテト等でも共創の歴史は古いです。

 今回の「カルビーポテトチップス47都道府県の味」を取り組むきっかけとなったのは、2016年に発表した「ポテトチップス いかにんじん味」でした。これは福島の郷土料理「いかにんじん」の味わいを再現したもので、当社の社長が福島の出身ということもあり、2016年に福島市と共同で開発したのです。これが爆発的に売れて、結果的にその年最も売れた商品となりました(参考情報)。

 そこで、どういう人が購入しているかを調査したところ、商品名や社名は知っていても、実際にポテトチップスを食べたことがないノンユーザーの方や、しばらくポテトチップスから遠ざかっていたライトユーザーの方が購入していることがわかったのです。

 私が所属するポテトチップス部ベーシック課では、まさにこうしたノンユーザーやライトユーザーにどうリーチするかが課題だったので、こうした「ご当地の味」を47都道府県に広げ、新しい市場開拓を目指すことになったのです。

 県を代表する味なので、もちろん県の方の協力が必須になります。2017年度の商品は県庁の方などにご協力をいただき大成功を収めていますが、2018年度にむけては、やはり地元の味を最もわかっている地域の方々も巻き込み、県庁・県民・当社の三位一体で商品開発を進めたいと思い、2017年9月、坂田さんにご協力をお願いしたわけです。

アンケート調査には限界がある

坂田:私も外資系消費財メーカーでマーケティングを経験してきましたが、小代さんもアップル社などでマーケターとしてのキャリアをスタートされていますよね。そうした経験から、やはり通常の消費者アンケートや調査には限界を感じていたのですか。

小代:調査も必要ですが、中には調査慣れした方もいらっしゃいますし、それだけに頼るのはどうかという疑問はありました。また対象年代の中には、元々パネル数が少ないため、調査会社を変えても結局同じ方にご回答いただくことも多く、限界を感じていたのは確かです。

坂田:おっしゃるとおり、調査慣れしている人もいますね。また、金銭などのインセンティブが発生すると、調査対象の方に「おもしろい意見を言おう」という心理が働き、“普通の声”が挙がらなくなります。

 私自身も「普通の人の生の声を聞くのは難しい」という課題を抱えていました。しかし、聞き取りが難しい、普通の人が持つワクワク感や期待感が具体的な声になれば、企業側も気付きやアイデアを得ることができます。そうした共創のスタイルをずっと追求してきました。

 今回のような、47都道府県の「地元の味」を再現するということは、まさにその「普通の生活の中にある、普通のもの」をあぶり出す取り組みです。子供のころ、母親が作ってくれた料理の味だったり、学校帰りに食べたものの味だったりする、そんな声を拾って商品を開発するという取り組みには、私自身もワクワクしました。

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/02/02 08:00 https://markezine.jp/article/detail/27717

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