DataSignは、9月3日にパーソナルデータ管理サービス「paspit(パスピット)」をリリースする。
「paspit」は、生活者個人がパーソナルデータを便利に、かつ安全に管理・活用できるサービス。第一弾として、各種Webサービス等で生活者個人が用いている「ID」「パスワード」を安全に保管するサービスを開始する。様々なところに散らばっている、生活者個人の情報を自動的にPDSに集約・管理が可能になる。
また、情報の内容は秘匿し、データ流通情報をブロックチェーンで管理することにより透明性・信頼性を確保する技術、および、データ提供先ごとに情報をトークン化し、トレーサビリティを確保する技術について特許を出願中だ。
今後、生活者起点での安全な情報流通を実現する機能を順次リリースし、「生活者起点のID・データプラットフォーム」の構築を目指す。また企業向けに、同プラットフォームを活用できる「paspit for X」を提供する。
パーソナルデータストア/情報銀行がマーケティング業界に与える影響は?
同発表に合わせて、DataSignは8月22日にセミナーを開催した。昨今、Web上の行動データをはじめ、パーソナルデータをマーケティングへ活用する動きが活発化している。その一方で、生活者はCookie情報をはじめ、自分の情報がどのように活用されているか、十分に認識していないのが現状だ。
「個人が関与してデータが流通するシステムにしなければ、今後のデータ流通に支障をきたすのではないか。データ活用の透明性の確保と、公正なデータ流通を実現するために弊社を設立した」とDataSignの太田祐一氏は語る。そしてパーソナルデータの流通を取り巻く4つの課題「情報のサイロ化」「Facebook・GoogleのDuopoly(複占)」「個人関与機会の不足(規約同意モデルの限界)」「データ仲介企業の増加」を提示した。
このような状況下で、年初に起きたFacebookのデータ流出事件や、5月に欧州で施行されたGDPRを契機に、これらの問題が一気に顕在化した。これらを契機に、個人を起点にデータを集約し、個人が自分の状況をコントロールできるようにすべきという考え方が世界中に広がった。
今後、パーソナルデータエコシステムが浸透すると、マーケティング業界へはどのような影響があるのだろうか。
――「paspit」をはじめとしたPDS(パーソナルデータストア)を利用することが一般化した未来、データアグリゲーターなどのアドテク企業のビジネスにはどのような影響があるのか?
太田:現状のデータアグリゲーターは、同意取得のハブとしてPDSや情報銀行を活用していくと考えている。まずはデータの流れをいきなり遮断するのではなく、生活者の意志で許可・拒否できる仕組みを企業側が構築していくべき。世の中の動向にあわせて、将来的にはPDSに蓄積されているクロスサイトの行動データを、情報銀行を介してデータアグリゲーターが取得して広告に活用する流れになっていくのではないか。
――企業の知名度やブランドによって、生活者のデータ獲得における格差が出てくるのか?
太田:オーディエンスデータを獲得してマネタイズに成功している企業は、現状ではGoogleとFacebook等の大企業に限られている。今回弊社では、知名度のない企業もメリットを提示することで、オーディエンスデータを活用できる仕組みを提供する予定だ。
そのための仕掛けとしてトークン化技術を用いて、知名度のない(信頼性の低いと考えられる)企業へのデータ提供について、生活者の心理的障壁を緩和することができると考えている。新たなファーストパーティデータを獲得する手段として、paspitを個人と企業のつながりを作る場にしていきたい。
●パーソナルデータ
ある特定の個人に関連する情報やデータのうち、それ自体は単体では個人の特定・識別に繋がらず、かつ、個人を識別するための情報に紐付けられていないもののこと。個人の識別情報から切り離された(匿名化された)位置情報や行動記録、購買履歴などが該当する。
●パーソナルデータストア(PDS)
自分のパーソナルデータを蓄積・管理し、本人の意志のもと、他者(企業を含む)と共有できるシステム。
●情報銀行
「PDS」等のシステムを活用してパーソナルデータを管理するとともに、「情報信託機能」を提供する事業者。