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元日本マクドナルドの足立氏が明かす、新しい顧客体験の創造が進まないダメな企業の特徴3つ


エクスペリエンスメーカーが活躍できないダメな企業の特徴3つ

 ここから足立氏は、エクスペリエンスメーカーが活躍する組織を解説するために、エクスペリエンスメーカーが活躍できない組織に見られる3つの特徴を説明した。

NGその1:過去の遺物上司がいる企業

 一つ目に挙げられたのは、“過去の遺物上司がいる企業”だ。わかりやすく説明すると、「俺の時代はこうだった……」というようなことを永遠と言っている上司がいる企業は危ない。では、過去の遺物上司がいる企業は、どのように変化していけばよいのだろうか。

 まず、マネジメント層は「お客様にとって新しいことをやろう」という文化を醸成することが必要だ。当たり前だと思われるかもしれないが、これができている企業は多くないという。

 このような文化を作っていくために足立氏は、役職が一番下の人から意見を聞くようにしているそうだ。「マネジメント層の方にはよく理解してほしいのですが、エクスペリエンス=カスタマーエクスペリエンスです。そして、お客様に近いのは、マネジメント層よりも間違いなく現場の方です。ですので、一番役職の低い方またはお客様に一番近い人から意見を言うことで、お客様にとって一番正しい意見が出やすいことがあります」とそのメリットを話す。

 次に、現場担当者ができることは、「正しくないと思ったことを、上司に言われたからという理由でやらない」こと。現場担当者が、これは上手くいかないだろうと思った施策は、上手くいかないことが多く、自分のキャリアにもならない。

 ここまで話した後で、「とは言え上司は上司ですから、尊重してくださいね」と笑いを誘った。

NGその2:過度の完璧主義企業

 2つ目に挙げられたのは、“過度の完璧主義”の傾向がある企業だ。考えて考えて考え抜いた一つの施策を大きく動かす、という企業は実は多い。

 このような企業では、どんどん新しいことにトライする人が評価されるような人事制度や目標値を設定することが大切だと足立氏。減点主義では、現場担当者のやり損になってしまい、新しいことをやろうというモチベーションが起きないからだ。

 実際に足立氏も、日本マクドナルドでマーケティングを統括していた時、マーケティング部に新しいKPIを加えている。マクドナルドでは、グローバルでマーケティング部のKPIを「売上」と「顧客数」に設定しているが、足立氏は、ソーシャルでの話題化をKPIに追加した。新商品をプレス発表してから発売までの約1週間に、どれくらいソーシャルで話題化できるかをKPIとして数字で示すと、各自その数字を増やそうと動き始めたそうだ。新しくトライしたいことがある場合は、それに合った目標値や人事制度を整えることが重要だとわかる。

 一方、現場担当者ができることは、「失敗しても見つからない場所で戦う」ことだ。やっても見つからないこと・承認がいらないことも意外とある。たとえば、ソーシャルの活用はコストも低く、失敗すると話題にならないこともあり、取り組みやすい。スモールスタートで、自分のできることを探してみると良いだろう。

NGその3:業界のしがらみや習慣がある企業

 最後に足立氏は、“業界のしがらみや習慣がある企業”へアドバイスした。新しいことが抵抗される環境下では、「新しいことをやってもいいんだ」という象徴的な振り切った企画をマネジメント層が承認すると、環境に変化が起こる

 日本マクドナルドは、足立氏がマクドナルドに入って約3ヵ月後、プロモーション施策に横綱の白鵬関を起用した。グランドビッグマックという商品に合うタレントとしてエージェンシーが提案してきた候補の中から、足立氏が白鵬関の企画を承認したのだ。

 実は、マクドナルドではグローバルで、肥満を連想させるプロモーションはNGとされている。足立氏はそういった事情を知らなかったこともあり、企画を承認したのだが、提案したエージェンシー側も驚いていたそうだ。だがそれ以降、次々と新しいことが提案されるようになり、新しい風を起こすことができたという。

 対して現場担当者へのアドバイスは非常に明快なもので、「新しいと言わない」ことだ。ブルーカレント・ジャパンの本田哲也氏も「戦略PRを社内で通すために一番良い方法は、戦略PRと言わないこと。普通のPRだと言って通すこと」だと話している。新しいことが過度に抵抗されるのであれば、新しいと言わずやってしまえばよい。

 もう一つ現場担当者がやれることは、「自分の決済権限を最大限活用する」こと。日本マクドナルドでポケモンGOとコラボレーションした時に足立氏は、自身が持つ決裁権限の中でどんどん企画を進めてしまったそうだ。ポケモンGOが話題化し広く知られた今、同じ企画をやろうとすると、色々なステークホルダーの合意が必要になり実現は難しいのではないかと話す。

 エクスペリエンスメーカーが活躍できない組織の特徴3つに沿って、マネジメント層と現場担当者それぞれにアドバイスをした足立氏。基調講演では足立氏の講演に続き、3名のエクスペリエンスメーカーによるパネルディスカッションが行われた。

アスクル、花王、三井住友カードの3社のマーケターが集結したパネルディスカッションの内容は、9月21日(金)の8時に掲載する予定です。

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この記事の著者

松崎 美紗子(編集部)(マツザキ ミサコ)

1995年生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、新卒で翔泳社に入社。新入社員として、日々奮闘中です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/09/26 13:13 https://markezine.jp/article/detail/29199

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