従来不可能だった、消費活動シーンでの訴求を可能に
そして、肝心の「cookpad storeTV」におけるマネタイズについて、現在は動画広告を提供している。サイネージ動画は15秒の料理動画がループ再生する仕様になっているが、5回のうち1回をCM枠として販売し、1週間単位で端末をジャックするという広告設計だ。広告クリエイティブは、商品そのものを紹介するものもあれば、レシピ内で商品の利用方法やレシピを紹介するものもある。
たとえば、魚売り場でヨーグルトの訴求をするならば、調味料や料理の隠し味でヨーグルトを使うレシピを紹介する。売り場に違和感を生まないクリエイティブがカギとなる。従来の広告では不可能だった、まさに消費活動をしている顧客への訴求が可能になることのメリットは大きい。さらに、メーカーと流通チェーンが共同して売り場作りに取り組むなどの相乗効果も出てきているそうだ。
「生鮮食品売り場のスペースは限られていますので、お肉やお魚のコーナーで調味料の訴求をするのは難しい場合もあります。ですが、『cookpad storeTV』でなら、色々な売り場で様々な商品のプロモーションができます。これを決め手に、出稿を決められたメーカーさんもいらっしゃいますね」(本澤氏)
また、サイネージではカメラによる顔認識を行っている。個人情報を特定できない範囲で視聴人数をカウントしており、今後のデータ活用にも期待が広がる。
動画という手段へのこだわりはない
最後に、LIVE事業にも少し触れておきたい。
クッキングLIVEアプリ「cookpadTV」の大きな特徴は、ユーザー層にある。クックパッドは、20~40代の子育て層が多いのに比べ、「cookpadTV」は20代の比較的自由で時間のある世代が多くを占める。視聴時間も20時以降に増える傾向があり、長い時には1時間近くLIVE配信することもあるそうだが、離脱率は低いという。
「cookpadTV」では、LIVE配信中に双方向でコミュニケーションを取ることができ、この体験がユーザーに受け入れられているのではと岩下氏。新規ユーザーの獲得施策を大きく打ち出している「cookpadTV」は、今後課金モデルによるマネタイズを目指している。
「初めての料理が失敗体験になってしまうと、料理が縁遠いものになってしまいます。料理が成功体験となるきっかけを生み出すことが、LIVE事業の大きなビジョンです」(岩下氏)

動画を軸に、クックパッドの資産から新しいバリューを生み出しているCookpadTVだが、岩下氏は動画事業の展望について、次のように話した。
「料理に関するユーザーの課題を解決し、新しい価値提供をする際、今は動画というフォーマットが最も魅力的です。が、裏を返すと、動画でなくてはいけないということではありません。ユーザーがもっと便利に献立を決め、料理を楽しめる環境作りに集中し、様々なチャレンジをしていきたいと考えています。また、今年8月に三菱商事とCookpadTVは、資本提携を実施しました。グローバルに食品関連事業を展開する三菱商事のネットワークやノウハウを掛け合わせて、さらに成長を加速させていきます!」(岩下氏)
スマホを取り出さずとも店頭でレシピを決められる「cookpad storeTV」と、料理の楽しさを提案する「cookpadTV」。確かな開発力と入念な準備のもと、仮説検証・改善を繰り返し着実に成長している両サービスには、改めてクックパッドが築いてきたブランドの強さがうかがえる。
