統合的な広告効果測定で直面した三つの課題
統合評価のための統計学的な方針を決めた明峯氏だが、課題は他にもあったという。避けたかったのは、「現実を反映していない分析」「意思決定に時間がかかる分析」「現場主義ではない分析」の三つだ。
現実を反映していない分析とは
従来の効果測定では、すべての施策を並列に評価する場合が多い。だが、家電製品の場合、テレビ、雑誌、Webに広告を展開したとしても、それぞれの施策が効いてくるには時間差がある。家電製品は単価が高いため、生活者はテレビや雑誌を見てもすぐに購入せず、Webで調べてから購入する。すると、購買意思決定に近いチャネルであるWebが最も効果的と判断され、テレビや雑誌での接触の貢献度を正当に評価できなくなってしまう。
実際はテレビや雑誌がWebの閲覧を誘発するのに、Webの効果を過大評価して投資を優先的に配分するのは不適切と明峯氏は指摘。バランスのとれた施策評価をするには、製品のカスタマージャーニーを意識し、意思決定の階層構造を考えるべきだとした。
意思決定に時間がかかる分析とは
他部署から分析用にデータをもらったのはいいが、欠損が多かったり、ファイルごとにフォーマットが違っていたりしたことはないだろうか。
実はデータ解析そのものよりも、各部署に散らばったデータベースからデータを抽出して、分析できる形に整える、いわゆる「前処理」に最も時間がかかる。この前処理でよくあるのが、意思決定までの時間が長くなることと、初めての解析ではがんばってやり遂げることができても、二回目以降の解析ではデータ更新処理をやる気力がわかず、分析に継続性が生まれないことだ。
したがって、前処理にリソースを奪われず、本来やるべきデータ解析と解釈に時間を振り向けるために、データを一箇所に集約し、必要なデータを使いたい時に抽出できるようにする必要がある。明峯氏は、ツールとデータベースを直接つなぎ、分析の前処理に時間をかけないようにすることを推奨した。
現場主義ではない分析とは
分析が終わり、マーケティング部門に結果を渡すと色々な要望をもらうことだろう。その要望に合わせて再分析を行う際、分析結果を提出するタイミングが依頼元にとって遅すぎると、分析結果がやがて使われなくなってしまう。
そうならないようにするには、フィードバックを分析にすばやく反映する仕組みが必要であり、その上で、マーケティング部門とのコミュニケーション時間の確保を優先するべきだと明峯氏は訴えた。