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AI×MAが実現するパーソナライゼーション/アクティブコア代表の山田氏が語ったAI活用の最前線

2018/11/08 10:00

 顧客行動が多岐に渡る現在、顧客一人ひとりに合わせた施策をどうやって最適化・自動化するかに頭を悩ませる企業も多いだろう。「MarkeZine Day 2018 Autumn」に登壇したアクティブコア 代表取締役社長の山田賢治氏は、「AI×マーケティングオートメーション(MA)」における課題とその解決方法について、活用事例を交えて紹介した。

MA活用で重要なのは顧客の行動を「線」で捉えること

 マーケティングクラウドサービスを提供するアクティブコアの山田賢治氏によれば、MAなどのマーケティングツール活用には、「顧客行動を線で捉えること」が重要なのだという。これによって顧客理解が深まり、精度の高いマーケティングが行えるようになる。

アクティブコア 代表取締役社長 山田賢治氏(以下、山田氏)
アクティブコア 代表取締役社長 山田賢治氏(以下、山田氏)

 山田氏はまた、顧客行動を線で捉えるためには、まず「Web行動履歴と顧客データを紐づける必要があります」と語った。

 「一度購入もしくは会員登録をしていただくと、その後の行動は把握しやすいです。それに比べて、購入や会員登録前の『初回訪問』『再訪問』といった行動は見逃してしまうことが往々にしてあります。データを紐づける前の顧客行動を把握することが、MA活用では重要です」(山田氏)

顧客行動を理解した上でシナリオを定義

 山田氏は続いて、MA活用におけるいくつかの課題を指摘。昨今、MAを導入する企業が増加する一方で、設定した複数のシナリオの定義が連動せず、メールコンテンツの内容が誰に対しても同一のものになってしまうことがあるという。

 「MAが単なるメール自動配信ツールにとどまってしまう企業様もいらっしゃいます」と山田氏は述べた。本来MAは、会員登録からロイヤルカスタマーに至るまでのカスタマージャーニーに沿うようにして、顧客タイミングに合わせた施策を打つことで効果を発揮する。上記のような運用方法では、MAの強みを活かすことはできない。

 また、アプローチ間隔に関しても、「以前使っていたメールの定義がそうだったから」「前任者の定義がそうだったから」「現場の勘で」といった理由で決められるケースが多いことを山田氏は指摘した。

グラフ1

 「ここに初回購入からリピートまでの間隔をグラフ化したものがあります(※グラフ1)。これによると、リピート会員数が最も多いのは初回から1ヵ月の間で、その後は右肩下がりに減少していきます。180日以上が経過すると、ほとんどが休眠会員となってしまいます。

 つまり、初回から1年後に休眠対策のメールを送っても意味がありません。休眠会員になる前にアプローチすることが重要です。また、アプローチ間隔は最初に設定した定義がそのまま継承される傾向にあるため、まずは顧客行動データを分析してから定義を決めたほうが効果的です」(山田氏)

チャネルを横断したデータ分析で顧客理解を促進

 次に山田氏は、「CVRが高いメールは、パーソナライズされたコンテンツがファーストビューの位置に置かれていることが多いです」と、サイト内におけるコンテンツの配置ポジションの重要性を主張した。その他、メールタイトルや最初の数行を変えるだけでも十分な効果の改善が見込めるそうだ。

 また、顧客導線をパーソナライズすることで、効果の高いシナリオを作成できる。たとえば、過去にキャンペーンやイベントに参加した人をターゲットとして抽出し、パーソナライズされたメールを送る。そして、Webサイトを訪れた際に、再度その顧客に対して今度はパーソナライズされたバナーを提示。

 このような導線を設計したある企業では、通常5~6%ほどだったCVRが31%に向上した。山田氏によれば、メールとWebのバナーで伝えるメッセージが合致し、連動していることが重要だという。

 ECの領域では、商品をカートに投入するも購入まで至らなかった「かご落ち」や、商品の閲覧のみで離脱した「ブラウザ離脱」に対してもMAを活用することができる。

 ECでのCVRは、「ブラウザ離脱」は「かご落ち」に比べて4%と圧倒的に低い。ただ、興味深いことに、CVRと購入数の人数を計算した場合、購入客数は「かご落ち」と比べても大差がないことがわかる。また、離脱後7日以内に店舗で購入した人数を見てみると、「ブラウザ離脱」をした人のほうが「かご落ち」をした人よりもはるかに多い。

 「Webでは購入せず、店舗で購入するパターンです。ショールーミングならぬ『Webルーミング』といったところでしょうか。Webが店舗誘導の役割を果たしていることを証明しています」と山田氏は語った。

 他にも、アプリの行動ログと顧客データを紐づけることで、会員の理解を深めることができる。たとえば、顧客のアプリ内のアクションを可視化するためにパラメータをつけ、「アクションに対する売上金額」や「レジ客数でどの程度店舗へ流入したか」を把握するといった取り組みだ。現在、こういったMAの活用法は加速し、「LINE」においてもMAを利用したセグメント配信が増えてきているそうだ。

施策やシナリオごとに貢献度を検証

 「顧客は点ではなく線で行動している」という考えをもとにした検証方法が、昨今では進んでいる。山田氏によると、アクティブコアを導入する企業では施策やシナリオ単位での分析が行われているという。

 たとえばリスティング広告を出稿した場合、着目するのはCVRだけではない。特定のシナリオや新規顧客獲得のための施策、休眠顧客へのアプローチ施策など、一連の施策を1つの単位として考える。その上で、1ヵ月後や3ヵ月後に顧客がどう推移したかをグラフで可視化。これによって、どの施策がどの程度貢献したかを、長期間な視点で検証できるようになるという。

AIが実現するデータドリブンな予測モデル

 セッションの後半では、「AIで特徴を可視化する」というテーマが語られた。

 アクティブコアでは現在、MAやAIの活用をテーマに、同社が提供するサービスのユーザーと意見交換をする場を定期的に持っている。山田氏はその中で、「AIでこれから実施したいこと」についてのヒアリングを行った。その結果、大きく分けて「予測」「特徴量の可視化」「顧客抽出・オファー」という3つの意見が寄せられたという。

 1つ目の項目「予測」とは、ニューラルネットワークのスコアによるものだ。

 スコアによる予測をするためにはまず、サイト訪問やキャンペーン閲覧、メルマガ流入といった顧客の行動があった際、それぞれに「点数」と「重み」をつける。そして、それを掛け算して出た数字を合計。次に、出た値とあらかじめ決めておいた「しきい値(ある値以上で効果が現れ、それ以下では効果が現れないことを指す値)」を比較する。

 しきい値が計算結果よりも高い場合は、「この顧客はコンバージョンする」という予測が立てられるというものだ。典型的なBtoBにおけるMAスコアリングの手法ではあるが、「点数」と「重み」のスコアをどういった理屈で決めたのかが不明瞭な点が課題として挙げられている。

 現在のAIでは、こうした手法をさらに発展。「ディープニューラルネットワーク」や「ディープラーニング」による予測が可能となっている。最大の違いは、これまで人間がつけていた「重み」の数字をAIがつけ、更新まで行うことだという。

 最初の「重み」はAIが自動でつけ、中間層を複数作成する。そして、そこに再び「重み」をつけた上で、実際にコンバージョンするかどうかを予測。ここに正解のデータを当てることで、誤差に応じて「重み」の数字を調整し、正解の値に近づけていく。

 「分析や修正だけでなく、途中のスコアを自動的に更新できる点が現在のAIの特徴です。誤差の修正は一度にすべて行わず、小数点以下の僅かな差を何度も更新しながら調整していきます」(山田氏)

AIの予測精度を左右する「特徴量」とは?

 2つ目の項目は「特徴量の可視化」だ。そもそも「特徴量」とは何か。これはたとえば、コンバージョンするかしないか、退会するかしないかなど、「結果に関係するデータ」のことを指す。山田氏によれば、この「特徴量」を適切に選択することで、AIの精度が決まるという。

 山田氏は、「これまでのAIでは、『特徴量』を人間が指定する必要がありました。しかし現在のAIでは、データから自動的にポイントとなる『特徴量』を抽出することができます」と語った。

 続いて山田氏は、AIを使った予測の事例を紹介した。

 あるBtoB企業がAIを活用し、コンバージョンが予測される顧客を抽出。AIに与えたデータは、「コンテンツの閲覧履歴」「業種」「役職」「接触イベント」などだ。結果、最もコンバージョンに影響した「特徴量」は「コンテンツの閲覧履歴」だった。そして、予測の正解率は75%だったという。さらに、「閲覧回数」を「閲覧時間」に変えたところ、正解率は90%に上がった。

 「回数よりも、どのくらいの時間コンテンツを閲覧しているかが、精度向上には重要だということが明らかになった実例です。この場合、『特徴量』は『コンテンツの閲覧時間』ということになります」(山田氏)

 「AIのスコアには、プラスの特徴に加えて、マイナスの特徴があります。プラスの特徴にあたるのは、『セミナー』『事例ノウハウ』『製品ページ』『コラムA』などです。一方、マイナスの特徴としては、『サイトマップ』『コラムB』『コラムC』などが挙げられます。これは、『サイトマップ』を見たということは本来閲覧をしたかったコンテンツにたどり着けなかったと予測されるためです。コラムも、コンテンツによってプラス・マイナスが異なります。このように、サイト内の様々な要素に対してプラスやマイナスのスコアをつけます。そのスコアに応じて、AIが予測を立てるという仕組みです」(山田氏)

 こうした予測モデルの構築によって、これまで30~40%だったメールの開封率が54%まで向上したケースもあるという。その他、1~1.2%だったCVRが6.6%まで向上したという報告も受けているそうだ。「AIの予測精度の高さを証明できる数字だと思います」と山田氏は述べた。

アプリ内の行動をもとに購入確率を予測

 最後に山田氏は、アプリ行動を起点にAIで行える購入確率予測を紹介した。

 アプリ操作後2週間以内に店舗で購入する確率が約4割だった顧客に対し、アプリの行動パターンに基づく購入確率がどう推移するかをAIが予測。たとえば、店舗情報を見た場合、購入確率の予測は40%ほどになる。さらに「商品検索」「商品詳細の閲覧」「欲しいものリストに登録」と、アプリ内での行動が重なれば、購入確率は75%以上にまで向上する。

 最も購入確率が高くなると予測される行動パターンは、「過去に購入した商品と同じカテゴリーに分類される商品のリスト登録」。この場合、2週間以内に店舗で購入確率は90%だ。こうした具体的な予測値がAIによって導き出されることで、MAでアプローチするべき顧客は明確になる。

 また、上述の「実施したい項目」の3つ目にあった「顧客抽出・オファー」のように、退会しそうな顧客の抽出も、「特徴量」を活用して行えるようになる。

 山田氏は最後に、「これまでは、分散されていたデータをそれぞれ集計した分析が主でした。現在は、データを統合しつつ、AIを活かした『特徴量』の可視化が実現できます。ここに人間のセンスや判断を加えることで、より効果的なマーケティング施策の自動化が可能になります」とAI活用の可能性を述べ、講演を締めくくった。

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