CROに着目しファネルの着地点を広げる
検索データを改めて活用することの意義を、山崎氏はCRO(Conversion Rate Optimization)の概念をもって示す。訳すとコンバージョン率の最適化であり、購買までのファネルの絞り込み率を最大化しようという発想だ。広告接触者を100%とした際、サイト来訪、検索、そして購買に至るまでに、通常ファネルはぎゅっとすぼまっていく。
「これまでは、上部の広告接触者の数を増やそうとするアプローチが一般的でした。でも考えてみれば、間のステップでの離脱率を減らすほうが費用対効果が高い。サイト来訪した人へのアプローチを工夫してコンバージョン率が改善されれば、売上は大きく伸びるでしょう。そのために必要なポイントのひとつが検索です」
検索で購買率を上げる具体的な策のひとつは、ユーザーが求める結果を返すことだ。ユーザーがどのように検索し、その後どういった振る舞いをしているのかをデータで把握して分析することで、検索結果を最適化し、ユーザーが望む買い物をする手助けをすることができる。
山崎氏はECでのサイト内検索について「リアル店舗の店員の接客と同じ」と話す。優秀な店員なら、仮に顧客の指定する商品がなくても代替品を提案したり、よりニーズに応える商品を提案したりする。逆に、ずばり指定する商品がないからといって「ない」とだけ答えるのは、接客としては最悪だ。
だが、ECサイトでは同様のことが多く起こっているという。ユーザーの意図を汲んで、プラスアルファの提案ができれば、離脱するユーザーを減らすことができるにもかかわらずだ。
透明性と健全性を提供し、購買の成功を助ける
加えて山崎氏が提案するのは、検索データとレビューデータを相互補完的に利用してユーザーの満足度を高めることだ。ある調査によると、ECサイトの商品レビューが0件から1件付くだけで購買率が売上が1.1倍になり、10件で1.5倍、50件付くと2倍にもなったという(※出典:The impact of customer reviews and ratings on conversion rates)。
購買の後押しになるレビューデータは同時に、商品の検索にも役に立つ。たとえばゴルフクラブで、飛距離や操作性といった切り口ごとに点数がつけられていたら、飛距離重視のユーザーはその情報を軸に並び替えて、自分の要望に合った選択をすることができるからだ。更に、レビューという口コミはオーガニックコンテンツなので、GoogleのSEOでも上位にランキングされることも利点だろう。
「当社の『ZETA CX シリーズ』 でも、検索エンジン『ZETA SEARCH』の継続率が98%だと伝えることが、最も導入に効果的だったりします。他者の評価は昨日今日では集められません。更に他社からもどんどん引き離されるので、早く着手すべき」と山崎氏は話す。
レビューという第三者の意見を企業が積極的に集め、次なるユーザーに開示することは、ある意味で勇気がいる。だが、欧米では既にレビューの充実を通したユーザーへの公正な情報の開示が一般化し、大きく支持される要因になっており、日本でもAmazonレビューが購買を左右している状況をみても、この傾向は明らかだ。
企業よりむしろユーザーのほうが情報強者になっている現在、データ回帰の潮流と相まって、検索とレビューというデータを使って透明性と健全性の提供に努めることが、確実に業績を伸ばす道だといえる。