Twitterでの投稿後、販売台数は約7倍に成長
――『食パンミニベッド』では、ネット上での話題後どういった影響がありましたか?
八木:『食パンソファベッド』関連の投稿で何度か話題になっているのですが、話題となる以前の同商品の販売台数は年間で約460台でした。話題となってからの1年間では、約7倍となる合計3,200台以上を販売しました。メディアなどの取材オファーも、8件ほどありましたね。最も反響が大きかったのは、YouTuberのヒカキンさんに取り上げていただいたことです。
――ユーザーからはどういった声が上がっているのでしょうか?
八木:一番嬉しかったのは、「欲しい!」と言っていただいた方がクラウドファンディング開始時にご懐妊され、生まれてくる赤ちゃんのために出資していただいたことです。妊娠・出産と、人生において大切なイベントの瞬間に立ち会える素敵な機会となりました。
その他にも、自宅のペットにプレゼントしてあげたいという声や、自宅のドール用ソファとして欲しいという変わった意見もいただきました。どれも今後の商品展開にとても参考になる意見です。
――『食パンミニベッド』に限らず、貴社のプロダクトは食パンモチーフのものが目立ちます。八木さん自身パンがお好きということですが、好きなものを商品化する上で意識されていることはありますか?
八木:好きなものを商品につなげるためには、当然売り上げなどで結果を出すことが求められます。私の場合は「好き」をより強く、深く追求することで共感していただける方を獲得し、結果に結びつけることができました。「何となく食パンが好き」という程度では、実現しなかったと思います。結局は「好き」という思いを精一杯伝えることが何よりも重要なのではないでしょうか。
「バズって終わり」にならないために
――最後に、MarkeZine読者のヒントになるようなアドバイスがあればお願いします。
八木:ネットの話題は瞬発力が非常にある反面、終息もあっという間です。長くて3日程度、早い場合だと数時間で終了というケースもあります。重要なのはおよそ3日間の話題をどのように価値に変えるかだと思っています。戦略なしに放っておけば、ネットの話題は泡のようにすぐに消えてしまいます。
そのような考えから、バズマーケティングにおいては、具体的な数値を戦略上の指標として明確に持っていることが重要だと考えています。採用アカウントとして運営をしていますが、バズらせる場合は1回につき300万円の回収を目標として掲げ、それを達成するための施策を徹底しています。回収できた資金は、採用のためのキャンペーン予算などに使っています。
――どうもありがとうございました。
ボツ商品をネットで話題になるように仕掛け、反響を見た上で即座にクラウドファンディングで資金調達を展開。クラウドファンディング上での資金調達を達成した後は、量産体制に取りかかるなど、当初からこういう流れを想定していたとしか思えないストーリーです。当然、これはひとつの成功例であり、ネットを活用した戦略が思った通りに運ばないことも多いにあるでしょう。結果がどうであれ、成功確率を上げるために肝要なのは、八木さんの言うように、明確なゴールを設定した上で逆算しながら戦略を固めていくことです。