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カスタマーエクスペリエンスを巡る(AD)

ボルボの“フラグを逃さない”コミュニケーション設計/8年に一度の購入タイミングを逃さない方法とは?

 CX――カスタマーエクスペリエンスという言葉が定着し、重要視する企業が増えている。ただ、一元的に測定できる指標も定石もないのが現状だ。CXプラットフォーム「KARTE」を提供するプレイドが、CXについて先進的な知見や事例を探る本連載。今回は、ボルボ・カー・ジャパンのマーケティング部を訪問。「社長の知人の強い勧めでKARTEを導入したが、今ではなくてはならない存在」と語る同社の関口憲義氏に、ボルボの理想とする顧客体験とKARTEの活用法について聞いた。

「お客様の大切なものすべてを守りたい」

――自動車は購入サイクルが非常に長い高価格帯商材だと思うのですが、まず自動車市場のマーケティングの特徴をうかがえますか?

関口:おっしゃる通り、自動車は平均して8年に一度しか購入されない、購入スパンの長い商品です。特に日本は、国産メーカーだけでも8ブランドの競合があり、グローバルでも類のない激戦市場なんですね。加えて都市部は公共交通網が発達し、地方では日本特有の軽自動車というユニークな車が便利に使われている。購入サイクルの長さと相まって、なかなか他の業界にはない難しさがありますね。

 また、自動車業界は顧客との接点が「販売店中心」ということも特徴のひとつで、基本的な顧客情報は、ディーラーが管理しています。ディーラー同士は競合でもあるので、我々のようなインポーターやメーカー側が「顧客情報を一元管理する」というのがかなり難しいという側面があります。

ボルボ・カー・ジャパン株式会社 マーケティング部 ディレクター 関口憲義氏
ボルボ・カー・ジャパン株式会社 マーケティング部 ディレクター 関口憲義氏

――なるほど。その中で、ボルボ・カー・ジャパン(以下、ボルボ)はどういった顧客体験の提供を目指していらっしゃるのですか?

関口:プレミアムブランドの中では比較的多くの方に親しまれている存在として、我々の提供する価値に共鳴し共感いただけるお客様に満足していただくことを目指しています。その価値とは、多くの方に選ばれる第一の理由でもある「セーフティー」を根幹に置いたもの。運転する方の安全だけでなく、一緒に車に乗られるご家族の安全、さらには直接的な安全性だけでなく、生活や資産といった部分も視野に入れています。我々が提供するサービスを通して、「お客様の大切なものをお守りする」ということをビジョンに掲げています。

「オフラインtoオンライン」でのデジタル活用

――非常に長いスパンでお客様との関係性を考えられているのですね。ビジョン実現のために、具体的にどういったアプローチをされているのでしょうか?

関口:先ほどお話しした通り、一般的に自動車業界では、顧客をいちばんよく知っているのは販売店であり、担当セールスパーソンになります。担当者の手帳に、車を販売した大切な顧客の情報が、それこそご家族の誕生日まで記されている。「今度お子さんが大学に入られるから、お祝いをしよう」とか、「お子さんが巣立たれると大きな車が要らなくなるから、コンパクトカーをお勧めしよう」など、CRMという概念が日本に入ってくるずっと前から、自動車業界ではそういった取り組みが行われてきました。

 “Born CRM”と私は言っているのですが、自動車業界のマーケティングは生まれながらにしてCRM的な観点を含んでいるんです。ボルボでも、このような「アナログな接点」はこれからも大事にしていこうと思っています。ですがその一方で、これだけデジタルが発展して、それこそ「KARTE」のようにテクノロジーでCRMをカバーできるようになっているなら、それらを活用してより多くのお客様に我々の提供価値を感じていただきたい。そう思い、デジタル施策にも注力しているところです。

――手帳に書かれたアナログなデータを、デジタルに展開していくということですね。

関口:はい、ただ自動車は車検や点検が必ず発生するので、店舗とのアナログな関わりは基本的に途絶えないんですよね。よくいわれるO2Oは、まずWebで接点をもってリアルに送客する「オンラインtoオフライン」のケースが多いと思いますが、我々の業界だと「オフラインtoオンライン」なんです。

販売店中心の業界で、なぜボルボは顧客データを集約できたのか?

――オフラインからオンラインへ、というのは確かに珍しいですね。

関口:そうですよね。ですので、以前からシンプルなEメールマーケティングのツールは導入していたのですが、そこまで強力なツールにはなっていませんでした。オフラインからオンラインへ転換できるサポートシステムをうまく取り込めないか……と思っていたところに、たまたま当社代表の懇意にしている方からKARTEを勧められまして。実は、最初はあまり戦略的に導入したわけではなく、「とりあえず使ってみて、何ができるかを模索していこう」という考えでした。

――そうだったんですね。先ほどのお話を踏まえると、自動車業界ではメーカーやインポーター側が顧客情報を把握しづらい環境にあるということでしたが、なぜボルボはKARTEを導入できたのでしょうか?

関口:そこがおそらく大きなポイントで、我々は先ほどお話ししたような業界の一般的な状況とはかけ離れた、例外的な存在なんです。実は、我々は各ディーラーとお客様情報を連携し、顧客のセントラルデータベースを構築しています。

 なぜこのようなことが実現できているかというと、昔から各ディーラーと我々インポーターが非常に良好な関係を築けているからです。ディーラーの皆さんを含め、手前味噌ですが我々本社スタッフも、「ボルボ好き」という価値観でつながっている。働いている人が、いい人ばかりなんですよね(笑)。

車も“Web上で絞り込む”時代に

――それは関口さんの雰囲気からも、なんだかとても感じられる気がします(笑)。その顧客のセントラルデータベースは、いつごろから構築されているんですか?

関口:取り組みはとても早くて、1993年ごろからです。ただ、当初はあくまで車検のための「車のデータベース」でした。そのデータベースを元に「顧客の情報」を加えていったのが、今使っているデータベースの基盤になっています。

――なるほど。先ほど、以前からEメールマーケティングのツールは入れられていたというお話がありましたが、KARTEを導入してどういった変化がありましたか?

関口:長年、セントラルデータベースはあったのですが、顧客への積極的なアプローチや理想の顧客体験の実現を目的にして、意識的にメールアドレスやクッキー情報を蓄積し始めたのは3年ほど前からのことです。その後にKARTEを導入して、まずそれらが加速度的に貯まるようになりました。

 またデジタルの浸透で、購入に至るまでの顧客行動も大きく変化しました。たとえば、以前は車を購入するまでに平均して2〜3ヵ月かかると言われていました。お客様は直接ディーラーを回って検討していたので、そのくらいの時間がかかっていたんです。しかし、今では事前にWebで情報収集を行ったうえで、ディーラーに行く。実車を見て検討する段階では、もう2つか3つの車に絞り込んでいる、というのが常です。そのため、最近では初来店から、平均して2週間ほどで成約に至ると言われています。

Webで掴んだ“フラグ”を逃さない

――それは随分違いますね!

関口:圧倒的に「Webでの接点」が購入を左右するようになっているんですよね。裏を返せば、お客様の気持ちは、ディーラーに足を運ぶというリアルなアクションが取られる前に、Web上でかなり決まっているということです。当然、我々はそのWeb上の行動をぜひ把握したいですし、前述のように購入サイクルが非常に長い商品なので、これまでも細かく中間KPIを設定してナーチャリングに注力してきました。

 8年に一度といっても人生で4、5回は買う商材だと思うと、潜在ユーザーへのアプローチはもちろん大事ですが、同時に「買い替えのタイミングを逃さない」ことが大事です。今、KARTEを導入して、購入した方のパターンや、その人それぞれのきっかけとなった“フラグ”がだんだんわかるようになっています。またKARTEを使うと、Webサイト上でリアルタイムにポップアップなど様々な施策で柔軟にコミュニケーションができますが、それは既存のマーケティング手法にはない特長なので、とても助けられていますね。

――なるほど。今おっしゃった“フラグ”をはじめとして、購入のきっかけを捉えるには、どうされているのですか?

関口:これがとても難しいところで、いわゆる購入に向けたファネル移行のセオリー通りにいかないのが自動車業界です。大まかにご説明すると、きっかけの過半数は車検や、事故・故障などのアクシデントが該当します。これはマーケティングで狙えるところではないので、我々が注視しているのは、購入きっかけの2番、3番目に比重の大きい「ライフステージの変遷」にある方々と、「ボルボが好き」という方々を捉えることです。

人生に寄り添う自動車ブランドへ

――ライフステージの変遷をどう捉えるかが、既存顧客のリテンションに非常に有効だと?

関口:そうですね、後者のブランドビルディングには普段から腐心していますし、前者の“タイミングをどう捉えるか”という点にはKARTEはとても有効です。たとえば当社のWebサイトには、チャイルドセーフティーに特化したページがあるので、そうしたページを閲覧されていたら「お子さんが生まれたのでは」と推測できます。その場合には、KARTE上で施策(アクション)を作りWebサイトで配信する機能がとても役立っていますね。

見積もりシミュレーション時の車種診断施策
顧客毎の診断結果もデータとしてKARTEに蓄積される

関口:もっというと、Web上の動きを追うことで、まだ一度も買っていただいていない潜在顧客の動向も、既存顧客と同じくらいの規模で把握できます。これからは、そういった方々のフラグも逃さないようにしたいと考えているところです。

――なかなか難しい自動車業界にあって、ボルボが自社の強みを活かしてさらに顧客との関係構築に動かれている様子がよくわかりました。最後に、今後の展望をうかがえますか?

関口:ブランドビルディングも、既存顧客や潜在顧客のライフステージ変遷を捉えることも、まだまだ道半ばなので、今後も地道に力を入れていきたいです。KARTEを導入してからまだ間もないですが、2018年3月からはWeb起点のお客様に関しては成約までの行動履歴をすべて追えるようになり、その数が相当数貯まってきています。いわば「正解」データともいえるこの行動データは、非常に重要な顧客情報です。その中で、「どういうフラグが立てば、ご成約に結びつくか」という分析も進んでいます。

 デジタル上でわかること、そしてアナログな接点から得られることを掛け合わせて、今後も様々なタイミングで、「ボルボは、自分の人生に寄り添っていてくれているんだな」とお客様に感じていただけたら嬉しいですね。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/12/06 10:00 https://markezine.jp/article/detail/29749