SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

花王廣澤氏が若手視点で聞く、これまでとこれからのマーケティング

日本ならではのマーケティング、考えたことはありますか?【花王廣澤氏×OB本間氏対談】

 花王のマーケターである廣澤祐氏が、業界で活躍しているキーパーソンと対談する本連載。現代のマーケティングは複雑化していないか、と疑問を抱いていた廣澤氏が今回対談相手として選んだのは、花王OBで2017年に『シングル&シンプルマーケティング』(宣伝会議)を上梓した本間充氏だ。「テクノロジーありきではない、日本独自の新しいマーケティング手法が必要ではないか」と語る同氏との対談で出てきた、今後のマーケティングのヒントとは。

消費行動は複雑化していない

廣澤:今回は、マーケティングの複雑化について考えます。私はマーケティングの複雑化が年々進んでいると考えているのですが、本間さんは『シングル&シンプルマーケティング』で、「マーケターとお客様との関係をシンプルに」と語っています。なぜ「シンプル」という言葉を使ったのでしょうか。

左:花王株式会社 コンシューマープロダクツ事業部門 キュレル事業部 廣澤 祐氏
右:本間 充氏

本間:私が提唱する「シンプル」とは、複雑な(コンプレックス)技術をたくさん使うマーケティングから、人の熱量を感じられる関係性を構築しようという意味があります。そのためには「シングル」、つまり個人ベースでお客様を理解していくことが求められているのです。

 廣澤さんが感じている通り、インターネットが登場して以降、マーケティングが複雑化したと言われることは多いと思います。しかし、そう考えているのはマーケターだけではないでしょうか。

廣澤:それは、お客様の消費行動自体は、複雑にはなっていないということでしょうか。

本間:私はそう考えています。改めて、日本におけるマーケティングの歴史を振り返ってみましょう。戦後、「マーケティング」という言葉が日本に登場してからバブルが崩壊するまで、日本の市場は右肩上がりでした。その中で、マーケターのゴールは売上拡大と利益確保であるという認識が作られてきました。

廣澤:その後、2008年に日本の人口はピークを迎え、人口ベースで見ると日本市場は縮小していると言えます。この点を見ると、規模の力で市場の占有率を確保するビジネスが難しくなってきた、という大きな変化が起きているのを感じていますが、いかがでしょうか。

本間:たとえば、廣澤さんが現在勤めている花王が提供している日用消費財で考えても、新製品や新カテゴリーを生み出し新たな顧客を獲得するのはとても難しいでしょう。であれば、市場が拡大しないことを前提とした、新しいマーケティングを考えなければなりません。

 しかし、最近の日本のマーケターは海外から来るマーケティングのトレンドやアドテクノロジーを追うことに必死な印象があります。その現状に対し私は、成熟した市場へ向けた日本独自のマーケティングのために「シングル&シンプルマーケティング」と言葉を作り、世の中に問いかけてみたのです。

インダストリー4.0に必要なマーケティングとは

廣澤:ここまで、市場規模の縮小という視点からお話ししていただきましたが、産業構造の変化という視点ではいかがでしょうか。

 日本は多くの場合、製造からプロモーション、場合によっては店頭販促までをメーカーが一括管理します。ゆえに、効率性の高い大量生産を前提としたインダストリー3.0の流れを汲んだマーケティングが主流かと思います。しかし、インダストリー4.0が登場し品種と生産量を柔軟にコントロールすることが求められている現状を考えると、ビジネスやマーケティングの設計がズレてくるのではないか、と思うのですが。

本間:インダストリー4.0の世界では、生産の自動化や最適化が進み、廣澤さんが言うように品種数と生産量を自在にコントロールできるようになります。つまり、大量生産・低単価ではなく、少量生産・高単価で売ることも可能になるし、それを踏まえたマーケティングも可能なはずです。

 マーケターも、このような環境の変化は理解すべきですね。日本も、IoTやAIで経済発展と社会的課題を解決するSociety5.0を打ち出しています。 この産業構造の変化を想定したマーケティングが、日本企業にはできているでしょうか。とても、心配になります。

廣澤:よく言われることですが、モノやサービスを提供する際に2つのスタイルがあります。1つは、マーケットインの考えでプロダクトを設計するスタイル。もう1つは、プロダクトアウトの考えで数年かけて技術開発を行い、満を持して市場へ投入するスタイル。産業構造の変化を踏まえると、今の環境に適しているのは前者だと感じます。さらに、現代ではモノとサービスを分断して考えてはいけないのかもしれません。

本間:日本のマーケターもモノに体験を含めて売らないと、今後生き残れないと気づいているはず。今こそ、現状の産業構造と消費行動を理解する必要があると思います。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
デジタルマーケティングとマーケティングのデジタル化は違う

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
花王廣澤氏が若手視点で聞く、これまでとこれからのマーケティング連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

廣澤 祐(ひろさわ ゆう)

花王株式会社 DX戦略部門

2015年に花王株式会社へ入社し、デジタルマーケティングを経験したのち化粧品ブランドのマーケティングに従事。2021年からDX担当部門としてデジタル活用の推進に従事。2020年より公益社団法人日本アドバタイザーズ協会デジタルマーケティング研究機構 U35プロジェクト幹事を務め...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2019/01/25 09:00 https://markezine.jp/article/detail/30119

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング