データ分析・レコメンド・MAをひとつに
アクティブコアでは、データ分析・レコメンド・マーケティングオートメーション(以下、MA)機能をひとつにまとめた「マーケティングクラウド」を提供している。代表取締役社長を務める山田賢治氏は、同社のマーケティングクラウドの特徴を次のように述べる。
「アクティブコアのマーケティングクラウドは、オンライン・オフラインの行動履歴や、年齢・性別などの顧客属性、購買履歴等、散在するすべての顧客データを統合して管理することができます。蓄積したデータを独自開発したAIで分析し、ユーザー毎に最適なタイミングでアプローチします。そして、MAによってメール配信や、LINE、アドネットワーク等への広告配信などを自動化します」(山田氏)
アクティブコアのレコメンド機能は、ディープラーニングを活用することで、ユーザーの特徴・嗜好から「類似ユーザーが好む商品」をレコメンドできることが特徴だ。
「Amazonのレコメンドエンジンなどで採用されている、『これを見た人はこれも買っています』というのを表示する協調フィルタリングとは別に、ディープラーニングで顧客の特徴を洗い出して、その特徴と類似する人の購入データからレコメンドするという独自のレコメンドエンジンをMAに組み込んでいます。当社の利用企業様の比較では、こちらのエンジンのほうが協調フィルタリングと比べてCVRが20%ほど高くなっています」(山田氏)
AI・ディープラーニングで顧客行動を予測する
データ分析にはAIを活用しており、たとえばサイト訪問したら何点、メルマガから流入したら何点というように、AI側でユーザーの行動に重み付けをしていき、コンバージョンする確率などを予測している。顧客属性や商品情報といった「学習データ」とあわせて、購入した人やコンバージョンした人の情報などの「教師データ」を与えることで学習し、AIの分析精度はどんどん上がっていく。
「このとき、教師データを7割ほどAIに教え、予測モデルを作ります。たとえば、そのモデルの正解率を、残りの3割と照らし合わせて確認します。正解率が高ければ、良いモデルと言えます」(山田氏)
山田氏は、化粧品通販の事例を取り上げ、「教師データの量とAIの正解率」の関係を次のように説明する。
「こちらは、最初に無料サンプルを注文してもらって、本購入で初めて費用が発生し、以降は毎月定期購入してもらうというビジネスモデルの企業です。まず流入経路の情報だけをAIに与えると、予測モデルの正解率は15.7%ととても低くなりました。そして購入者に響いた広告が掲載された媒体やキャッチコピーといった情報を与えたところ、29.1%まで上昇。さらにサイト内の閲覧データなどを与えたら、86.2%と予測モデルの正解率が大幅に上がりました」(山田氏)
「当たり前ではありますが、教師データが多ければ多いほど、AIの予測精度も高くなります。様々なデータを統合する意味は、ここにあります。広告だけ、サイトだけとデータが分断していては、分析・予測の精度が低くなるということです」(山田氏)
嗜好を機械学習し、パーソナライズしたレコメンドを行う
山田氏は、マーケティングクラウドを活用することで、「データドリブンマーケティング」を行ってほしいと述べる。ここで言うデータドリブンマーケティングとは、顧客情報を分析し、見込み客や既存客へ最適な施策を行うことだ。MAを活用すると、ユーザーに適切な情報を適切なタイミングで届けることができる。
「まず、顧客がどのようなきっかけで商品やサービスを選択したのかというのを、分析して可視化していきます。次に、購入回数によって顧客をセグメントします。何年も前からの古いデータを使うよりは、最近のアクションだけを見て行くほうがより現在の顧客状況を把握しやすいと思います。
たとえば最終アクションから180日以上経っている場合を休眠顧客とし、それ以内にアクションのあった顧客を購入回数に応じて優良から未購入までランク分けします。このとき、最終購入日だけではなく、その後にサイト訪問やメルマガ開封をしていたら、それを最終アクションとするのが良いでしょう」(山田氏)
「その分析結果に基づいて、新規顧客の獲得や、『1回購入の顧客を2回へ』『2回以上購入の顧客を優良顧客へ』といった顧客育成のシナリオを立てていきます。その際にお薦めしたいのが、『ステップメール』です。メールを送る際には、タイミングを最適化するだけでなく、中身の一部をパーソナライズすると効果的です。
たとえば会員登録したばかりの顧客はサイト内を回遊することが多いですが、その情報を基にすぐにパーソナライズしたレコメンドメールを送ってしまいます。もし2・3回メルマガで接触しても反応がなかったら、クーポンを出すのがお薦めです。その後、『LINEに登録してください』というアプローチにつなげていくのも良いでしょう」(山田氏)
「かご落ち」「ブラウザ離脱」から購入につなげる
ECサイトの課題として、カートに商品を入れたまま離脱してしまう「かご落ち」と、サイトを回遊したけれど何も購入しなかった「ブラウザ離脱」がある。そうした顧客に対しても、CVRを30%以上に高める方法があるという。
「かご落ちをした場合、翌日にメールをするというパターンが多いですが、30分〜1時間後くらいにメールを出すというのが、当社の利用企業様では主流になってきています。顧客の購買欲が熱いうちにというのもありますし、その間に競合他社のサイトを見ている可能性も高いためです。
もしそこで購入されなかったら、1〜2日後にさらにレコメンドメールを送り、もうひと押しします。2度のメールの成果を合わせると、かご落ちしていた顧客のCVRは30%以上にもなりました」(山田氏)
さらに、ブラウザ離脱には「店舗誘導」も有効だという。
「ECと実店舗の両方をもっている場合に、意外と効果があるのが、ブラウザ離脱した顧客への店舗誘導です。かご落ちよりは人数としては少なくなりますが、購入金額が高くなるという傾向がありますので、やらない手はありません」(山田氏)
休眠顧客を掘り起こすための広告配信
先述のように、アクティブコアのMAには、ディープラーニングで顧客の特徴を洗い出して、その特徴と類似する人の購入データからレコメンドするという独自のレコメンドエンジンが組み込まれている。これは、ECサイトの休眠顧客向け施策に有効だという。山田氏は、クライアント企業の実例を基に、具体的な施策と結果を次のように説明した。
「ECサイトの休眠顧客向け施策を行う際には、まず休眠顧客の特徴を分析することから始めます。以下は実際のクライアント企業の調査結果になります。具体的な金額は企業の商材やターゲット層によって変わってきますが、基本的に購入金額が少ないほど休眠顧客の割合が多くなることがわかっています」(山田氏)
また商材カテゴリーが複数あるショップの場合、単一カテゴリーでしか購入していない顧客よりも、複数カテゴリーで購入している顧客のほうが休眠顧客になりづらいという。
こうしたデータに基づいて、複数カテゴリーで購入した後に休眠化してしまった顧客に向けては、その人と類似のユーザーが購入したものをレコメンドする広告配信を行った。また単一カテゴリーで3,000円以下の購入の休眠顧客には、その人ごとにレコメンドした広告を配信。その結果、7.1%の顧客が再度購入に至ったという。
「これは広告配信の成果としては大変大きなものですし、ターゲットを絞ることで広告費用も抑えられます。データに基づいて顧客をセグメントすることが、マーケティングの成果を上げていくうえで大事だと言えるでしょう」(山田氏)
退会ユーザー予防のための施策
購入だけでなく、退会を防ぐためのマーケティングにも、データ活用は有効だ。アクティブコアは、退会の原因を探るため、クライアント企業のECサイト退会ユーザーの特徴を分析したという。
「退会ユーザーの特徴を分析・可視化したところ、『最後のサイトアクセスからの経過日数が多い』『最終購入日からの経過日数が多い』『累計購入金額が少ない』といった結果が出ました。また、退会前にWeb訪問する人が78.8%いたので、その方たちがどのページを閲覧したかを調べました。そこから、退会ユーザーの51.2%がお問い合わせTOPを、38.7%がよくある質問(FAQ)を見ていて、何か気になっていることがあることがわかりました。これらのデータから、退会しそうな顧客を予測していきます」(山田氏)
「FAQを見たけれど退会につながらなかった顧客が見ていたページや、行動パターンをAIに学習させ、退会が予想される顧客にそれらをレコメンド表示するという対策を行いました。それとあわせて、よくある質問のページにチャットを連携させ、すぐに質問をできるようにしました。こうして、顧客が持っている悩みやクレームに関する情報を探すことなく表示、問い合わせできるようにしました」(山田氏)
ここまでAIやMAの有用性を語ってきた山田氏だが、セッションの最後は次のような言葉で締めくくった。
「AIやMAはツールにすぎません。これまで属人的に手動で行ってき分析を、データ統合、分析、可視化することは得意です。しかし、実際にその施策を行うかという部分では、必ず人の判断が必要となります。あくまで分析等の作業をするためのツールと捉え、ジャッジは人がするものだと考えて活用していくと良いでしょう」(山田氏)