ファンを作り出す方法は既存ファンに聞いてはじめてわかる
サービスのファンを増やしていくには、既存のファンが「なぜ好きでいてくれるのか」を知ることが手掛かりになる。しかし、その理由を既存のコールセンターやデジタルの接点から把握するのは難しい。
「お客様がサービスを契約する時と解約する時には接点があるものの、その『真ん中』がわかりづらいことが課題になっていました。なぜ好きでいてくれるのかを、わざわざ教えてくれる人はいません。生の声に触れ続ける理由は、お客さまの『なぜ』を直接聞くことができるからです。私たちは、ここに可能性があると思っています」(杉本氏)

そこでWOWOWは、コンタクトセンター内での新しい取り組みとして、無償で月2回のアンケートに回答してくれる協力的なファンを集めた組織「WOWOWファンボイス(以下、ファンボイス)」を設立。「ファン化」のプロセスに迫っていった。
ファンボイスで明らかになったのは、水際でのリテンション施策で思いとどまってもらっても、そこからファンになる人はごく少数だったということ。よって現在は、電話やメールなど様々な接点を通じてより早い段階でのリテンションを行い、特定の番組に依ることのない「WOWOWブランド」を好きでいてくれるファンを増やすことを意識している。
また、継続的なファンへのアンケートを基に、WOWOWが打ち出すメッセージを変える動きが生まれるなど、「顧客と一緒にサービスを進化させていく」基礎が出来上がりつつあるという。この取り組みは好評で、ファンボイスのメンバーからの要望によって、ファンミーティングも開催された。
ファンボイスで行う調査は、外部の調査会社に委託するのではなく、WOWOWグループ社員が自ら取り組んでいる。これにより、出てきた結果を自分事として捉えられるようになるそうだ。
「この施策で、我々のマーケティングは変わりました」と杉本氏は手ごたえを語った。
デジタルのログと生の声で顧客を捉える

デジタルマーケティングとコールセンターで「加入・解約改善」を行い、ファンボイスによって「WOWOWの良い部分」「ファンを増やすために伸ばすべき部分」を把握する。WOWOWのコンタクトセンターは、これら3つの接点が揃って初めて完成するのだという。杉本氏はWOWOWのマーケティングが目指す姿を次のように述べ、セッションを結んだ。
「デジタルマーケティングによって顧客全体像の8割を掴み、残りの2割をコールセンターとファンボイスで補足していく。デジタルのログのみからお客様を捉えるのではなく、『データと声』によって気持ちを汲み取ることが大切だと考えています。これが実現できる新しいコンタクトセンターを最大限活用し、ファンと共創する放送サービスを目指していきます」(杉本氏)