動画ビジネスに革新を!相次ぐ新規企業の登場
最初のインタビューは、オープンエイトの髙松社長だ。髙松氏は、@cosmeを運営するアイスタイルの取締役兼COOなどを経て、2015年にオープンエイトを創業している。インタビューを通して、当初から髙松氏が、動画(を含むリッチコンテンツ)の普及を見越していたことがわかった。同社が提供するAI自動動画編集クラウド「VIDEO BRAIN(ビデオブレイン)」は、動画コンテンツの民主化のために作られたものであり、しかも世界市場を念頭に置いているという。

髙松氏が動画ビジネスの構想を持ち始めたのは、@cosmeにいた頃だという。
「4・5年前までは、インターネットを使うのは『目的意識の高い人』でした。つまり、『コスメを買う』と決めてから、検索エンジン等を活用していたということです。しかし、スマートフォンの登場でリッチコンテンツが増え、『目的がなくても情報にふれる機会』というものが増えました。これからは『態度変容のすべて』がインターネットで起きるようになり、かつ態度変容を促すリッチコンテンツの最たるものが動画であると考えたのです」(髙松氏)
髙松氏がオープンエイトを設立したのは2015年4月だが、その頃相次いで動画を活用したベンチャー(C CHANNEL、dely、エブリー、3ミニッツなど)が登場した。
「当時、動画ビジネスとして成り立っていたのはYouTubeくらいでしたが、この頃から動画ビジネスに注力する企業が増え、今やアプリでも広告でも動画を使うのが当たり前になりました」(髙松氏)
誰でも簡単に動画編集ができるように
髙松氏は「動画(を始めとするリッチコンテンツ)の普及には、編集作業の手間や煩雑さを省く必要がある」と考えたそうだ。その発想から生まれた同社のサービスは、「機能に関しては高度なものを要求しつつも、動画編集ソフトを使い慣れていない人でも簡単に使えるツールを目指している」と髙松氏。最新のアップデートでは、「プレビューの待ち時間がゼロになった」ということである。
実は、同サービスが生まれた背景には、おでかけ動画マガジン「ルトロン」運営での、ある苦労体験が存在する。ルトロンの立ち上げ当初、編集作業の手間と複雑さを痛感した髙松氏は、「AIで自動化できることはAIに任せれば動画制作はもっと簡単になる。そして、その仕組みを外販すれば大きなビジネスチャンスになる」と思い、シンガポールのAIチームと開発を進める。ここから、テロップ入れを含む自動編集技術が生まれたのだ。

髙松氏は、動画への「テロップ」活用の重要性も指摘する。一般的にスマートフォンによる動画視聴では音声の再生率が低いため、インタビュー映像などは音声の自動認識機能でテキスト化し、テロップを流すことで、音がなくてもコンテンツが成立するのだ。
今後も進化し続ける動画市場とサービス
同じ動画でも、スマートフォンとテレビでは作り方がまったく異なる。髙松氏は「ルトロンでもいろいろと実験をしている」と話す。
筆者の経験からも、縦横比や音声vsテロップ、長さや画面構成などは、それを映すデバイスによって適性があると考える。たとえば筆者の仮説では、縦型動画は人物中心の短尺が合っていると考える。人は縦に立っているシチュエーションが多いので、縦型でも違和感がない。しかし、人間の目は横に付いているため、縦型動画を長時間見ていると脳が疲れてしまうのだ。そのため、縦型にする場合は短い時間がいいだろう。
また、進化するのはフォーマットだけではない。テレビでは6秒CMの実証実験が行われており、一定の成果が出てきている。コンテンツとしてはもちろんであるが、情報量が圧倒的に多い動画をマーケティングに活用できれば、その効果は多大になるはずである。そのためには、嗜好を考えた配信や見た人の反応を知る必要がある。
動画広告の計測も、スマートフォンのインカメラ経由でAIが表情を解析するツールなどが登場している。次回も引き続き「動画」をテーマに、拡大するその活用法を「マーケティング視点」で解明していく。