奥谷孝司:本気でデジタル改革したいなら一見の価値あり
Adobe Summit2019に参加した感想
Adobe傘下に集まるツールの充実化により、BtoC、BtoB問わず顧客体験の可視化と理解が益々進化しているという印象。オンラインデータだけでなく、オフラインデータを取り込み、データの融合を進めるAdobeユーザー企業の多くの事例から見えてきたのは、Adobe製品を中心にデジタルマーケティングからトラディショナルなマーケティング施策までの結果の管理が一元化できる可能性が高まってきたように思います。
まさに顧客体験を可視化、理解できるエクスペリエンスセンターの構築ができるのではないかと夢が膨らみました。数年前から顧客経験の重要性を提唱してきたAdobeではあるが、オンラインとオフラインを行き来するお客様に提供するべきものは「体験」であり、商品やサービスではないという強いメッセージが骨太になってきています。

本イベントで最も強調されたキーワードだった
特に印象に残ったセッションやキーワード・トピックとその理由
Contents Velocity:お客様が接触するデジタルタッチポイントの増加にともない、彼らに提供するデジタルコンテンツの必要量は現在の3~5倍必要であると話すスピーカーが多数登壇しました。Adobeのサイトを調べてみるとこの言葉を「より多くのコンテンツを迅速に作り出し、適切なターゲットに届け、パフォーマンスの結果につなげること」と定義しています。
お客様がどこにいてもデジタルでつながることができる時代。オフラインを中心にビジネスを展開する企業も、店頭のVMD(Visual Merchandising)や交通広告を変えるスピードと、デジタルコンテンツを適宜提供することのスピード感の違いと重要性を改めて再認識してもらいたいと思います。
Adobe SummitおよびAdobe製品群に対して今後求めること
システム上でできることが充実化したAdobe製品群ですが、まだフル活用できている企業事例は少ない印象です。そのためには現在強化しているという伴走型のコンサルテーションサービスの充実も急ぐ必要があります。また多くの海外事例が聞けるこの場に日本企業のAdobeユーザーが登壇し、情報を提供してもらいたいです。
海外の事例だけが正しいわけではないし、彼らがすべてを語っているわけではありません。日本の優れたマーケティング事例を世界に発信していくことをサポートしてもらいたいし、より多くのCクラスレベルの参加者がこの場に参加して、「デジタルと経営」を考える機会を作ってもらいたいです。現場の人間が行くだけでなく、世界TOPクラスの経営者が登壇する場でもある本サミットに、経営者自らが刺激を受けに行く価値のあるカンファレンスです。本気のデジタル改革を進めるなら一見の価値がある場であることは私が保証します。

オイシックス・ラ・大地 執行役員 Chief Omni-Channel Officer/顧客時間 共同CEO 奥谷 孝司氏
Adobe Summitへの参加回数:1回
1997年良品計画入社。店舗勤務や取引先商社への出向(ドイツ勤務)、World MUJI企画、企画デザイン室などを経て、2005年、衣料雑貨のカテゴリーマネージャーとして「足なり直角靴下」を開発して定番ヒット商品に育てる。10年、WEB事業部長に就き、「MUJI passport」をプロデュース。15年10月にオイシックス(現オイシックス・ラ・大地)に入社し、現職に。早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了(MBA)。17年4月から一橋大学大学院商学研究科博士後期課程在籍中。同年10月、Engagement Commerce Lab設立。18年9月、顧客時間共同CEO/取締役に就任。日本マーケティング学会理事。著書に『世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略』(共著、日経BP社) がある。