電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、世界59カ国・地域から収集したデータに基づき、「世界の広告費成長率予測」(※1)を発表した。本予測は毎年2回、改定と新規予測を行っており、今回は2018年実績の確定と、2019年・2020年予測の改定を行った。
2019年の世界の広告費成長率は3.6%(2019年1月の前回予測は3.8%)、2020年は4.1%(前回予測は4.3%)と予測した(図表1参照)。全体としてはデジタル広告を中心に成長が続くとしたうえで、先行き不透明な経済状況が及ぼす消費活動への影響と中国、ロシア等における成長の減速を背景に、2019年の成長率を0.2ポイント下方修正した。
2018年にテレビを上回ったデジタル広告は2019年にシェア4割へ
世界のデジタル広告費の成長率は、2018年に14.9%(実績)、2019年に11.5%(前回予測は12.0%)、2020年に11.0%(前回予測は10.8%)と、二桁成長が続く見通し(図表2参照)。その主要因はオンライン動画広告とソーシャルメディア広告の成長であり、デバイスとしてはモバイルの成長率が21.4%と大きい。
世界の総広告費に占めるデジタル広告費の割合は、2018年実績が39.0%(※2)と、初めてテレビ広告費の34.9%を上回った。その割合は2019年には4割を超えて41.8%となり、2020年には44.5%へと伸長する見通しだという(図表3参照)。
なお、対象59カ国・地域のうち、2019年には26カ国・地域(2018年は21カ国・地域)で、デジタルが媒体別広告費の構成比でトップになる見込み。
テレビがマイナス成長へ
世界の広告費成長率は3.6%(前回予測は3.8%)、広告費は6,099億ドルに達すると予測。不透明な経済状況が及ぼす消費活動への影響と中国、ロシア等における成長減速はあるものの、インド、ブラジル、英国、カナダ等は高成長率で好調を続けており、全般的には引き続き安定した成長が見込まれる。
媒体別では、世界各地で引き続きデジタルが広告市場成長を牽引。新聞が成長率で△7.7%、雑誌が△7.4%、テレビが△0.1%と厳しい状況が続くものの、屋外/交通広告は4.3%、ラジオは1.7%の成長が見込まれるという。テレビは前回予測では2018年が0.8%、2019年が0.5%だったが、2018年実績が-0.2%、2019年予測が-0.1%と下方修正されマイナス成長に転じた。2020年にはテレビは0.6%(前回予測は1.6%)に回復すると予測している。
2019年の日本市場はデジタル広告が全世界の11.5%を上回る14.5%ペースで成長
2018年の広告費成長率(実績)は、前回予測の0.2%から2.2%へと大幅に上昇した(※3)。その主要因としては、想定を上回るペースで伸長したデジタルの運用型広告、マス4媒体社が提供するデジタル広告を追加したことが挙げられるという。
2019年は、2018年実績を基準に前回予測の0.6%から上方修正し、1.2%で堅調に成長すると予測した。デジタル広告が運用型広告を中心に引き続き二桁成長(14.5%)する見通しで、とりわけモバイル(21.2%)、オンライン動画(29.2%)が成長を牽引する見込み。
2020年は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催等があるため、成長率は2019年を上回る1.8%と予測している。
※1 電通イージス・ネットワーク(DAN)は、世界ネットワークを通じて収集した情報に基づき、59カ国・地域の広告費の成長率を独自に分析・推計して年に2回公表している。対象媒体には、テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、映画館(シネアド)、屋外/交通、デジタルが含まれる。
※2 日本の広告市場のみ、上記※1記載以外の媒体の広告費(折込、DM、フリーペーパー/フリーマガジン、POP等)が含まれるため、媒体別のシェア予測においては、その項目を除外した数値を「世界の総広告費」とした上で、各媒体のシェアを割り出している。
※3 電通は2019年2月28日に発表したニュースリリース「2018年 日本の広告費」において、2018年の日本の総広告費の対前年比(実績)が102.2%であったことを公表している。
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