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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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MarkeZine Day 2019 Autumn(AD)

大事なのは生活者を味方に付けること 事例に学ぶ、生活者マーケティングのすすめ

 SNSの台頭やモバイルシフトで、生活者と企業の関係性は、インタラクティブなものに変化している。しかし、企業はこれまでの広告手法や慣習から脱却できず、生活者の変化に対応できていない。生活者視点に合わせたマーケティングで売り上げを伸ばすには、どのような施策が最適なのか。アライドアーキテクツでCPO(最高製品責任者)兼上級執行役員を務める村岡弥真人氏はMarkeZine Day 2019 Autumnで、「複雑化するSNSやモバイルシフトに企業はどう対応すべきか?」をテーマに講演し、変化を続ける生活者を軸にしたマーケティング施策を売り上げにつなげるノウハウを紹介した。

生活者の変化に企業が追い付けない現状

 2005年設立のアライドアーキテクツは、ソーシャルテクノロジーによるマーケティング支援事業を行う企業だ。国内事業だけでなく、中国向けの支援事業や、国外企業向けのクリエイティブ サービスを展開するなど、多角的な事業展開をしている。

 同社の上級執行役員兼CPO(最高製品責任者)の村岡弥真人氏は、現在、多くの企業が実施しているマーケティングについて「生活者を取り巻く情報は多様化しているにもかかわらず、企業はその変化に追い付けていない」と指摘する。

アライドアーキテクツ株式会社 上級執行役員 兼 Chief Product Officer村岡 弥真人氏
アライドアーキテクツ株式会社 上級執行役員 兼 Chief Product Officer 村岡 弥真人氏

 「現在は、以前からあるテレビや新聞に加え、スマホやSNS、各種メディアなど、生活者と情報の接点は多様化し、判断軸も変化しています。しかし、企業は従来の一方通行なメッセージ発信から脱却できていません。その背景には、新規手法の台頭やメディアの複雑化だけでなく、人員不足などによって、多様な施策を実行できないことも挙げられます」(村岡氏)

 村岡氏は現状について、「従来の広告は、もはや意識されていない」と説明する。「AdRoll消費者リサーチ2017調査レポート」によると、「ネット広告を意識しているか」の問いに対しては、52.9%が「あまりしない/ほとんどしない」と回答。「ネット広告をクリックするか」の問いには、56.9%が「あまりしない/ほとんどしない」と回答した。

 また、Olapicの「Facebook&Instagram Advertising With UGC:A Practitioner's Guide」によると、生活者の63%は「購入の前に商品のUGCをSNS上で探している」と回答し、20代から30代の53%は「UGCが購買活動に影響を及ぼした」と明言。加えて、生活者の32%は「一般の人が使用している様子を広告で表現しているほうが購入しやすい」という。

SNS時代に必須なのは「生活者マーケティング」

 そうした状況で必要なのが、「生活者マーケティング」だと村岡氏は主張する。これは「Strategy(施策設計)」「Advertisement(広告宣伝)」「Promotion(販売促進)」「Improvement 施策改善」の4つの軸をベースに、“生活者を味方に付ける”ことでマーケティング施策の効率を向上させる取り組みだ。

 アライドアーキテクツでは、生活者マーケティングを実現するプロダクトとして、以下の4つをリリースしている。

 1. 口コミを生成し、コンテンツとしての活用を支援する「モニプラ ファンブログ」

 2. UGCを活用したクリエイティブ制作を支援する「Letro(レトロ)」

 3. Twitter上での話題化や来店クーポン施策を実施する「echoes(エコーズ)」

 4. ファンマーケティングクラウドの「brandtouch(ブランドタッチ)」

 村岡氏は、「これらのプロダクトは、生活者の体験を生み出し、声を聞き、発信につなげ、それらをマーケティング施策に活用することで、施策効果の改善や強化につなげるもの」と説明する。

生活者マーケティング実現に必要なこととは?

 では、情報ソースが多様化し、生活者に情報を届けることが難しい現在、企業が実行すべき生活者マーケティングとはどのようなものなのか。

 村岡氏は「今、生活者に影響を与えているのは(その消費者にとって)身近な情報です。それの最たるものが『UGC(User Generated Contents)』。生活者のUGCに対する信頼度は高く、商品購入の決定に、重要な役割を果たしています」と指摘する。

 UGCとは、インターネット上でユーザーが制作・生成し、投稿したコンテンツを指す。InstagramやTwitter、FacebookといったSNSに投稿された書き込み(コンテンツ)のほか、ポータルサイトや口コミサイトに投稿した内容、商品レビューなどもUGCに包含される。

 村岡氏は、UGCのように生活者の目線に近いコンテンツをマーケティングに取り入れる重要性を、これまでのマーケティングと比較して解説した。

 「従来のマーケティングは、完成版の商品や施策を起点としており、なるべく多くの人にリーチすることが目的でした。しかし、こうしたマーケティング手法は、勝率が確率論で先行投資が大きく、失敗した際のリスクが大きい。そもそも、生活者は(企業から一方的に提供される)広告を信じておらず、企業からの独りよがりのメッセージは届きません。それよりも生活者の体験や声を起点に、生活者のライフスタイルや感性に合致したマーケティング施策を実行することが生活者に響きます

生活者目線のマーケティングPDCAの秘訣

 生活者のライフスタイルや感性に合致したマーケティング施策とは、生活者が求めている製品や売り場、メッセージを把握し、生活者(購入者)が情報を発信したくなる環境を構築することだ。生活者が能動的にプロモーションに参画したくなる製品や売り場を作り、生活者を軸としたマーケティングのP(Plan)D(Do)C(Check)A(Action)を回す。

 具体的には、生活者(ユーザー)と直接つながれる環境を構築し、商品や施策に対する直接的なフィードバックを得られる関係を作る。その上で、SNSを通じて生活者(ユーザー)にマーケティングに参画してもらう。これにより、生活者の発信を活用し、PRや販売促進の効果向上を狙えるというわけだ。

 ただし、こうした施策を実施するには様々な課題もある。まずは、生活者との関係構築だ。そもそも多くの企業は、顧客との直接的な接点を持っていない。顧客データを持っていたとしても、既存の手法で収集した顧客データからは、顧客の心理や具体的な嗜好性、ライフスタイルなどを読み解くことは難しい。さらに、これまで実施したリサーチ結果のデータを、マーケティング施策に活用できている企業は少数派だ。

菊水、花王、BULK HOMMEが取り組む「生活者マーケティング」

 続いて村岡氏は、生活者マーケティングを取り入れ課題を克服した企業の事例を紹介した。

菊水酒造:マストバイを起点に、顧客のインサイト情報の獲得に成功

 酒造メーカーの菊水酒造は、商品ブランド力はあるものの、顧客の消費行動や嗜好を正確に把握することに苦労していた。その上、メルマガやハガキなどで顧客データは得られていたものの、顧客との接点としては限定的で、長期的なコミュニケーションも続けられていなかった。

 そこで同社は、QRコードを読み取り応募するマストバイ形式のアンケートキャンペーンを実施。参加者の定性情報や購入の理由を把握し、これまで難しかった顧客の「購入し続けてくれる理由」の可視化を狙った。その結果、1万2,000人以上の応募が集まり、マーケティング施策や商品開発のヒントになるような情報を得ることに成功した。

 また同社は、キャンペーン参加者向けにコミュニケーションとしてTwitter上で参加型の企画を行った。参加型の企画は「ふなぐちツイッター飲み会」と題し、菊水とおつまみの写真に「#ふなぐち」を付けて投稿してもらうという、仕掛けとしてはそこまで難しくないものだが、同社顧客に非常に人気な企画になった。参加者同士の盛り上がりはもちろん、Twitter上の拡散により広告ではリーチが難しい新規層への商品の訴求につながった。

AKAISHI:サンプリングきっかけにコンテンツやコピーの制作を支援するサポーターを獲得

 外反母趾にやさしいコンフォートシューズの製造販売を手掛けるAKAISHIは、製品の特性を正しく伝えられていないという課題を抱えていた。そこで、メディア上で継続的に商品をサンプリングし、サンプリングに協力してくれた生活者と継続的にコミュニケーションできるデータベースを作成してマーケティングの施策設計に活用した(同事例の詳細が知りたい方はこちら)。

 その結果、SNSから商品体験コメントが得られるようになり、体験コメントをブランドコピーとして活用したところ、売り上げ拡大につながったとのことだ。さらに、投稿されたコンテンツをLINE@の受け皿LPに活用するなど、施策に活用できるアセットが貯まるようになった。

花王:非購入者の意見を取り入れたマーケティングを

 「従来のサンプリングでは、商品体験後の施策に活用できるデータを蓄積できていなかったり、コミュニケーションが継続できていなかったりする企業は多い」と村岡氏は指摘する。

 花王でも、こうした課題を抱えていた。そこで同社では、肌質や化粧品にかける予算をアンケートで聞き、顧客像に近しい生活者に商品を配布。その上でサンプリングした生活者に事後アンケートを実施し、購入者と非購入者のペルソナを明確化した。このデータをもとに、購入のポテンシャルがある生活者層を割り出し、主に非購入者の意見を参考にマーケティング施策を実施した。

 たとえば、「製品は気に入ったが、今利用している化粧品がある(から購入しない)」と回答した生活者に対しては、利用している化粧品が切れるタイミングを見計らってサンプルを送付。従来取得ができていなかったデータを活用することで、生活者にマッチしやすい施策の設計ができるようになった。

BULK HOMME:顧客獲得単価を従来の3分の1、獲得件数は10倍に

 村岡氏はさらに、陥りがちな課題として「クリエイティブ素材の枯渇」と、「UGCやTwitter施策における費用対効果算出の難しさ」を挙げ、その解決策を以下のように説明する。

 「クリエイティブ素材の枯渇対策は、消費者のSNSアカウントから投稿されたコンテンツを“クリエイティブ”として見せるようにすればよい。日常生活品や化粧品などの購買決定は、同じ目線の生活者の口コミやレコメンドが決め手となる」

 実際、メンズスキンケアブランドのBULK HOMME(バルクオム)は、Instagram上にアップされたユーザーのコンテンツも積極的に活用する、UGCを活用したSNS広告でクリエイティブを拡大するなどしたところ、顧客獲得単価は従来の3分の1に。顧客の獲得件数は従来の10倍になったとのことだ(同事例の詳細が知りたい方はこちら)。

 最後に村岡氏は、「生活者マーケティングのキーワードは『UGC』と『Twitter』です。私たちは両者を活用したマーケティングプロダクトと、その活用のノウハウを有しています。様々な業種/業界で導入実績があるので、このような課題を抱えている企業の方は、ぜひご相談ください」と語り、セッションを締めくくった。

イベントで語りきれなかったUGC活用ノウハウが明らかに

 今回の講演では事例が多く紹介されましたが、UGCを効果的に活用するためには、どのようなステップを踏めば良いのでしょうか? そのUGCの活用ステップについて、アライドアーキテクツがまとめました! 詳細はこちら

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この記事の著者

鈴木 恭子(スズキ キョウコ)

 東京都出身。週刊誌記者などを経て、2001年IDGジャパンに入社。「Windows Server World」「Computerworld」などの記者・編集を経て2013年にITジャーナリストとして独立。主な専門分野は組込系セキュリティ。現在はIT(Information Technology)とOT(Opera...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/10/10 10:00 https://markezine.jp/article/detail/32053