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MarkeZine Day 2019 Autumn(AD)

社員7人で自社開発ツールを850社に導入 顧客と向き合う“非効率な営業”を支える「SATORI」活用

 従業員数7人のエクストは、自社開発の社内コミュニケーションツールを約850社に導入した実績をもつ。それを支えているのは、「プロダクト・マーケット・フィット」の考え方を徹底的に取り入れた開発プロセスと、マーケティングオートメーションツール「SATORI」による販促活動の効率化だ。2019年9月12日の「MarkeZine Day 2019 Autumn」に同社の高畑氏が登壇し、その詳細を語った。

社員7名でツールを自社開発し、850社への導入を達成

株式会社エクスト 代表取締役 高畑欽哉氏
株式会社エクスト 代表取締役 高畑欽哉氏

 大阪市に本社を構えるエクストは、総従業員数7名の少数精鋭チームだ。ITを活用して企業の生産性向上に寄与すべく、Web制作に関する開発/コンサルティングを手掛ける一方、マーケティングオートメーション(以下、MA)ツール「SATORI」のパートナーも務めている。

 さらに同社は、社内コミュニケーションツール「SONR.(ソナー)」を自社開発し、広告費をかけずに850社を超える企業に採用された実績も有する。

「SONR.」の導入社数
「SONR.」の導入社数

 ツールの導入企業数を右肩上がりに拡大させながらも、3年以上前から社員の残業はゼロで、有給休暇取得率も100%を維持。ITを活用して生産性を高めることで、限られた時間で高い利益を上げる好循環を生み出している。

 同社 代表取締役の高畑欽哉氏は、「新サービスを850社に導入したプロダクト・マーケット・フィットの現実~小さなチームから始めるセールス&マーケティング~」と題した講演で、新規プロダクトの開発・提供において重要な考え方と、成果を支えるマーケティングとセールスの仕組み構築について明かした。

商品と市場ニーズのマッチングが突破口に

 順風満帆に見える同社だが、高畑氏曰く「最初から成功していたわけではなかった」。2002年の創業時を振り返ると、リリースした事業の9割は失敗し、1割でその時々の利益を稼ぐ状態が続いていたという。しかしある考え方を知ったことで、潮目が大きく変わったそうだ。

 「新規サービスを成功させるためには何が必要なのか。それを学んでいた過程で『プロダクト・マーケット・フィット』という考え方に出会ったのです」(高畑氏)

 プロダクト・マーケット・フィットとは、顧客の課題を解消する商品を提供し、それが適切な市場に受け入れられている状態を指す。

 プロダクト開発の第一歩は、社会や顧客の課題に目を向け、「何に困っているのか」「それを解決するためには何が必要なのか」を見出すことだ。プロダクト・マーケット・フィットの考え方を意識しながら、開発する商品に市場性があるかを見極め、商品と市場ニーズをマッチさせる。その上で、販売促進によるシェアの拡大を狙っていく。

 たとえば、「プロダクトのコンセプトは優れているものの、市場投入のタイミングが早かった」「スピードを重視するあまり、技術が不十分なままリリースしてしまい、バグの修正に膨大な時間とコストがかかってしまった」といった状態は、プロダクト・マーケット・フィットが確立しているとは言いがたい。

 続いて高畑氏は、こうした事態を避けるために欠かせないもう一つの考え方を紹介した。

イノベーター理論に則り、商品とニーズのマッチングを進める

 プロダクト・マーケット・フィットを取り入れる上で役に立つのが「イノベーター理論」だ。これは、新商品や新サービスが市場に普及する過程を5段階に分類した考え方である。

 「イノベーター理論」では、アーリーアダプター(初期ユーザー)からアーリーマジョリティ(メインユーザー)に普及が広がるまでは、時間がかかるとされている。多くのユーザーは安心・安定を優先するため、確証がなければ新商品を採用しないからだ。彼らは初期ユーザーの反応を見ながら、導入を検討する。

 高畑氏は、プロダクト・マーケット・フィットとイノベーター理論の両方を踏まえた「新プロダクト開発を成功させるためのポイント」を、次のように述べた。

 「新プロダクトのリリースにチャレンジする際には、商品と市場ニーズのマッチングの段階で、ユーザーの声を徹底的に聞くことが重要です。その上で、メインユーザーへの普及促進を図るためにも、初期ユーザーの満足度を最大化できるよう改善を重ねていく。『優れたプロダクトを顧客と一緒に作り上げる』という気概で、開発を進めることが大切です」(高畑氏)

大勢を少し喜ばせるより、少人数を「猛烈に」喜ばせる

 続いて高畑氏は、社内コミュニケーションツール「SONR.」の開発プロセスを例に、自社が2つの考え方をいかに取り入れてきたかを語った。

 新プロダクト開発にあたり、同社ではまず、課題と解決手法をマッチングすべく、自分たちが実際に困っていることを洗い出した。そして浮かび上がったのが、「社内コラボレーションに対するストレス」だった。日々発生する共有のタスクが可視化されておらず、見落としが発生していたほか、他社とのコミュニケーションもうまく進まず、非効率な作業を繰り返していたそうだ。

 こうした課題意識から、現場に即したシンプルで使いやすいコミュニケーションツールの開発に至った。ところが、リリース直後は販売に苦戦したという。当時の状況を、高畑氏は次のように振り返る。

 「コミュニケーションツールは全社導入が基本となるため、“売りにくい”モノだと気づきました。さらに顧客企業の業種や業態によって、重要視するポイントが異なります。私たちがセールスポイントにしていた機能が顧客に響かないこともありましたし、興味をもってもらえたとしても導入に至るケースは少なかったのです」(高畑氏)

 このとき同社が参照したのが、イノベーター理論だ。具体的には、適切なフィードバックをもらえると予想した業種の異なるイノベーター(先駆者)4社のみにアプローチし、彼らのフィードバックを聞きながら、機能改善を繰り返した

 イノベーターの満足度を向上させ、ツールのファンになってもらったら、口コミや紹介でツールの情報をアーリーアダプターに拡散してもらえるよう働きかけるとともに、自社でも販売活動を開始。訪問による説明やイベントを通じてメインユーザーに訴求することで、顧客を拡大していった。

 「イノベーター理論を実践して学んだのは、先駆者に密着し、強烈なファンになってもらうこと。大人数を少し喜ばせるより、少人数を猛烈に喜ばせることが重要で、そのために必要なのは、プロダクトを作り込まず、顧客とともに改善させていくことだったのです」(高畑氏)

「SATORI」で業務を効率化し、顧客に向き合う時間を確保

 販促活動を行う過程で、高畑氏が重視しているのが、顧客に会い、生の声を聴く「非効率な営業活動」だ。少ない従業員数でもそのリソースを確保するため、同社はコンテンツマーケティング強化とMAツール「SATORI」の活用によって、セールスとマーケティングの仕組みを再構築した。

 コンテンツマーケティングでは、顧客と“温度感”を合わせることを意識し、興味がありそうな情報を最適なタイミングで提供する仕組みを整備。セミナーやダウンロード資料の提供、ブログ・メルマガでの情報発信など、状況に応じたコンテンツを用意している。

 また同社は、「SATORI」を活用することで、見込み客の集客と育成を自動化。資料ダウンロードやサイトの閲覧といったアクションを引き金として、自動的に顧客へのアプローチを行えるよう、シナリオを設定している。加えて、送信したメールに対する顧客の反応やサイトの閲覧状況を可視化することで、さらなる効率化に結び付けている。

 こうした仕組みにより、同社はとことん顧客の声を聞くために、足繁く訪問する「非効率な営業姿勢」を貫くことができているという。

エクストのセールス体制(※)SATORIのロゴは2019年10月1日より変更
エクストのセールス体制
(※)SATORIのロゴは2019年10月1日より変更

 高畑氏は、「非効率な営業活動を実践したことで、宣伝広告だけではリーチできないターゲット層に対して“超接近戦”のセールスが可能になりました。数々のフィードバックをいただき、改善を重ねて開発した『SONR.』は、お客様と一緒に育てたサービスです。これからも、自らを成長させることで、お客様の成果の最大化を実現していきます」と語り、講演を締めくくった。

※SATORIは2019年10月1日、新たなコーポレートアイデンティティを発表。

シンプルなデザインのロゴには、多様な力を受け入れながら成長していくという同社の決意が込められている。

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この記事の著者

鈴木 恭子(スズキ キョウコ)

 東京都出身。週刊誌記者などを経て、2001年IDGジャパンに入社。「Windows Server World」「Computerworld」などの記者・編集を経て2013年にITジャーナリストとして独立。主な専門分野は組込系セキュリティ。現在はIT(Information Technology)とOT(Opera...

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MarkeZine(マーケジン)
2019/10/16 13:32 https://markezine.jp/article/detail/32065