リアル店舗からモバイルへ進出する外食業界
街中のあらゆるところに飲食店が並び、生活者の食事環境は豊かになり、多様な選択肢が増えています。また、2019年10月に施行された消費増税、外食業界には2つの税率が適用されます。店内での飲食は嗜好品扱いとなり10%の消費税となる一方で、テイクアウトは食品扱いとなり8%の軽減税率が適用されることもあり、今後のフードデリバリー需要の増加が推察されます。
今回は日本でも広がりつつある「デリバリー」において、主にファストフード業界のモバイルの取り組みに着目。App Annieのデータをもとに、同業界の今後のマーケティングに迫る危機について考察します。
外食業界では、リアルな店舗を持ち、その店舗に集客をしてサービスを提供する形態が一般的でした。そしてこの10年、多くの生活者の手に行き渡ったスマホをデジタルとリアルの架け橋として積極的に取り入れ、生活者が店舗に足を運ぶようにするだけではなく、デジタルだけで生活者の体験が完結する設計を推進する企業が世界各国で増えています。
App Annieによると、2018年のiOS、Google Playにおけるフード&ドリンクカテゴリーのアプリセッション数(利用回数)は2016年対比で130%増(2.3倍)へと急成長しました。国ごとのセッション数増加率でみると、フランスが首位(325%)で、オーストラリア(300%)、韓国(230%)と続き、インドも120%と大きく増加しました。こうした増加を後押ししているのは、ファストフードのアプリと新興のフードデリバリーサービス、両分野の成長です。
たとえばインドでは2018年のAndroidのフード&ドリンクカテゴリーにおいて、最も月間アクティブユーザー数(MAU)が多かったアプリは「Zomato」というアプリでした。このアプリを簡単に表現すると「食べログ+Uber Eats」ですが、多くの日本のアプリと最も大きく異なる点はバージョンアップの頻度です。少なくとも週に1度、多いときは週に2度のアップデートをしており、2019年9月時点で300万人以上のレビューを得ながらもレビュースコアは4.27というRatingとなっています。
モバイルビジネスにおいては、生活者からのフィードバックを得ながら迅速に反映させることが満足度向上に非常に重要です。この部分を企業目線でプロダクトアウトの発想でやっていくとすぐにユーザーが離れてしまうため、運用面で日本企業も参考にするべきアプリの好例でしょう。
またインドではUber Eatsが急激にユーザー数を伸ばしており、インドの外食業界のモバイル活用は熾烈な競争環境に突入しています。ZomatoやSwiggy Food Deliveryといった国内勢 対 Uberという構図は現在どの国でも見る競争環境となっていますが、拡大スピードを見るとUber Eatsが逆転する日もそう遠くないと思われます。どのくらいのスピードかというと、AndroidにおけるZomatoの2018年の平均MAUに対して、Uber Eatsは約3分の1程度でしたが、2019年上半期の平均MAUを見るとUber EatsはZomatoの約2分の1程度まで迫ってきています。この勢いが続くと、2019年が終わる頃にはUber Eatsがインドのフード&ドリンクカテゴリーで利用人数No.1になる可能性があります。