経営層に顧客を理解させるためには?
押久保:また会場からの質問です。「経営層、特にCEOに顧客を理解させるベストな方法を教えてください」とのことです。
西口:僕は今、自分の会社で、スマートニュースの他にも10社ほどサポートさせていただいています。お仕事のご依頼をいただいても、お断りしている場合がけっこう多いんですよ。というのは、トップがその気にならないと企業は変えられないので、基本的にはCEOとやれる案件しか受けていません。そのときCEOの方に最初にやってもらっているのが、顧客インタビューです。それをやって、顧客のことを理解できてくると、ビジネスの成長が加速していきます。これはベンチャーのほうがやりやすいですね。
押久保:経営層と顧客との距離が離れている大企業では難しいものですか?
西口:1社だけ巨大企業でまだ直接CEOにも会えていないクライアントがあります。そこでは、部長クラスの方々と小さなサクセスを作ろうとしています。結果が出たらそれを全社にあげていけば、徐々に変えていけるのではないかと。ただ、時間はかかるでしょうね。質問の答えとしては、そうやって結果を見せることで、CEOが変われそうか見極めるとよいのではないかと思います。どうしても理解することが無理な人は無理ですよね。
榊:そういう経営層の方に「あなたは自社の顧客をわかっていますか」と聞いたら、「わかっている」と答えそうですよね。僕らは、「理解できていないから知ろう」と考えているじゃないですか。本当に顧客に興味を持っていたら、顧客インタビューでも、根ほり葉ほり細かいことまで、競合を利用したプロセスなども聞きたくなるものです。
西口:僕がロート製薬に勤めていた頃の山田会長は、N1(1人の顧客)インタビューをものすごくやっていました。あちこちで話を聞いて、とても現場を見ていました。しかし多くの大企業の経営層は、実際に自社の商品を使っているような顧客層と全然接点がなくなってしまっています。そういった方たちも、数十年前には顧客をものすごく理解した現場で有能な人だったのですが、そこから情報がアップデートされていないんですよ。僕は普段の生活の中で、飲み屋で会った知らない人とかにもインタビューしてみることが少なくありません。「スマートニュースを使っていますか?」と聞いて、もし使っていなければ、この人にスマートニュースを使わせるためには何をしたらいいんだろうと考えると、アイデアがたくさん湧いてきます。
今、何に投資するかを明確に決めるべき
榊:僕がお客様インタビューで気になるのは、この人はこうやったら自社のサービスを使ってくれるだろうとわかっても、その施策で刺さる人が日本に5人しかいなかったら、成果は大きくならいんじゃないかということです。そこは、どう判断していますか?
西口:もちろん定量調査を同時に行ったりもします。ただ、この1人に効くことが10人にしか効かないということはほとんどないんですよ。1万人に効く、10万人に効く、100万人に効くという差は確かにあるんですけど。そもそも「その人にしか響かないこと」なんて、むしろ考えつかないものです。N1を突き詰めていくと、自然と当たりが出てきます。
押久保:最後に、お二人から若手マーケターの方に向けて、一言ずつメッセージをお願いします。
西口:皆さんにやって欲しいなと思うのは、自分のビジネスは全部自分の責任だという気持ちで考え尽くして、とことんやりきることです。お店を始めるのもいいとお話しましたが、たとえば自身が担当している商品を、まだ使っていない身の回りの人に売ってみるということでもいいでしょう。どうやったらこの人に買ってもらえるかを考え抜くことで、擬似的なPL体験ができ、考えが深まっていくかと思います。
榊:今の時代、個の力でいろいろな機会を作っていくことができます。自分の力で自分の人生を作れるということです。上の世代の人がわからないAIやニューテクノロジーといった領域で活路を見出だせることもあるでしょう。今、何に投資をすべきか明確に決めてやっていかれたらいいと思います。一休ではマーケターやデータサイエンティストといった専門職を募集しているので、興味がありましたら是非一緒に働きましょう。
西口:一休のマーケターは榊さんの側で働けるんですよね? それは間違いなくPLの感覚を持てるでしょうし、素晴らしい環境ですよね。
トークセッションの後には、榊氏や一休社員も交えた懇親会も行われた。和やかなムードの中、来場者同士で情報交換する姿や榊氏に直接質問をする様子も見られた。
一休では現在、「マーケター」「データサイエンティスト」などの専門職を募集している。詳しくは、キャリア採用情報ページから。