リタゲ偏重から脱却した、最先端の広告予算最適化戦略
ヤフーは、2019年度より、広告をはじめとする「Yahoo!マーケティングソリューション」を運用する現場担当者、マネージャー層に向けたイベントを開催している。10月11日に開催された第3回目のイベントでは、「脱リタゲが効果的?ヤフーの分析チームが検証した最先端の広告予算の最適化戦略とは」というテーマが掲げられた。
効果は高いけれども、リターゲティング広告への偏重傾向は、日本のデジタル広告の長年の課題だ。同時に、グローバルでのGDPR(General Data Protection Regulation/一般データ保護規則)やApple社のITP(Intelligent Tracking Prevention)をはじめ、広告配信における個人情報の取り扱い規制が厳格化している。
このような背景もあり、将来的にリターゲティングという配信手法に依存せずに、新たな手法でビジネス成果を出していくことは、運用担当者や事業主にとって重要な課題だ。そこから脱却するために、リターゲティング広告の真の効果を探求し、次の一手を示す取り組みが始まった。
「弊社の分析チームの協力のもと、リターゲティング広告の真の効果を測定し、その結果を踏まえて限られた予算の中で売上やCV獲得数を増やす方法を探った。検証の結果、ある一定の見解が得られたので、今日はそれを共有したい」(酒向氏)
従来、日本のWebマーケティングはユーザーのロイヤルティを高めて、ロイヤルユーザーの関与度をより高めていく手法がメインだった。しかし昨今は、「ダブルジョパティの法則が注目されている」と酒向氏は指摘する。
ダブルジョパディの法則は、市場でのマーケットシェアを高めることで、同時に購買頻度などのロイヤルティを高め、離反率を改善できるという新しい理論のこと。既存のロイヤルカスタマー向けの施策とは異なる。
たとえば上図(表2-2)は、イギリスの粉末洗剤ブランドの例。グラフから、市場占有率(マーケットシェア)と購買頻度が正比例の関係にあることがわかる。これはつまり、マーケットシェアが向上すると、購買頻度を表すロイヤルティも向上することを示している。
また、大規模ブランドと小規模ブランドの顧客離反率を検証したのが上図(図3-1)だ。たとえば同じブランドの中で100人の顧客がブランドスイッチをしたとする。同じ100人でも、大規模ブランドからみた100名と、小規模ブランドからみた100名だと、小規模ブランドにおいて離反率が高くなる。つまり、マーケットシェアを高めることで、離反率を改善できるということだ。
「従来の指名配信やリターゲティングをはじめとした、ロイヤルカスタマー向けの施策は非常に重要で、それ自体は続けたほうがいい。ただ、従来のロイヤリティの高い消費者のみをターゲットとした手法だけでなく、ダブルジョパディの法則やGDPRなどの世の中の動きを押さえて、ライトユーザーや新規顧客を多く囲い込み、マーケットシェアを高める手法にシフトチェンジしていく必要がある」(酒向氏)
そして酒向氏は、下記の仮説を提示。自社の分析チームと連携し、リターゲティングの本当の意味での広告効果を知った上で、適切な予算プランニングを実現し、限られた予算の中でより多くのコンバージョンや売上貢献ができるという仮説を持ち、検証に挑んだ。
●一度サイトに訪問したユーザーは、広告を配信しなくても、その後自然に再訪してコンバージョンする可能性が高いのではないか?
●リターゲティング広告を配信しなくともコンバージョンしたであろう人の数を除くと、純粋なリターゲティングによる効果を明らかにすることができるのではないか?
上記の仮説にもとづき、今回はミクロ・マクロの両側面から、2つの分析を行った。
1、金融業界から見るコンバージョン数の真実
2、リターゲティング による本当のコンバージョン数はどのくらい?