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GA360でOMOデータ基盤を構築 電通デジタルがドライブするオン×オフデータ統合によるLTV最大化

 「売って終わり」の時代は過去となった――顧客と長期的な関係を築くことで、事業成長を目指す企業が増えてきている。LTVが最重要指標のひとつとして追求され、オンラインとオフラインが融合した世界における顧客理解を重視する”OMO”がそのカギといわれる。そもそもOMOとは何か? どのようなメリットがあるのか? Googleのテクノロジーを用いてOMOプラットフォームを構築するプロセスに精通する、電通デジタル データ/テクノロジー部門に所属する高野正臣氏、滝口絵美氏のお二人に話をうかがった。

オン/オフの垣根を超えて顧客行動データを収集する

――このところOMOというキーワードがよく聞かれます。OMOの定義は何で、LTVを成長させるにあたってなぜOMOが重要と言われているのでしょうか?

滝口:OMOは"Online Marges with Offline"の頭文字をとった言葉で、“オンラインとオフラインの融合”と定義できます。

 LTVを成長させるにあたって、まずは顧客と良好な関係を築く必要があります。そのためには顧客一人ひとりの趣味嗜好やニーズ、行動特性に対する深い理解が欠かせません。

電通デジタル データ/テクノロジー部門 ソリューションディベロップメント事業部 コンサルタント 滝口絵美氏
電通デジタル データ/テクノロジー部門 ソリューションディベロップメント事業部 コンサルタント 滝口絵美氏

 具体的には、デジタル広告やアクセス解析といったオンライン行動データに、リアル店舗での購買などのオフライン行動データを統合して、顧客行動を把握することが求められています。

BtoC物販における店舗購入額比率は94%

――オンラインとオフラインを横断するという点で「O2O」という概念がありました。OMOとO2Oの違いはどこにありますか?

滝口:O2OとOMOでは重視するポイントが異なります。

 O2Oは"Online to Offline"の略で、オンラインからオフラインへの店舗送客を目的としているので、企業目線の取り組みと言えます。対するOMOは顧客目線で、顧客がオンラインとオフラインを行き来しながら購買に至るまでの一連の体験の質を高めてLTVを成長させることが目的です。

 リアル店舗でスマートフォンを使って商品について口コミを調べて、帰宅してからECで購入するといったように、現代の消費者はオンラインとオフラインを意識することなくデジタルと常に接触しながら購買行動を進めます。企業側はオンラインとオフラインにおけるデータやコミュニケーションをシームレスにつないで、顧客のニーズにタイムリーに対応していくべきです。

 経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、国内のEC市場規模は約18兆円。市場規模は年々拡大していますが、BtoCの物販分野のEC化率は約6%にとどまり、消費者の多くは実店舗で購入しているのが現実です。しかも、店舗で購入する消費者の47%はオンライン上のチャネルから情報収集していることが電通の調査でわかっています。OMOがいかに重要かを物語る調査結果ではないでしょうか。

OMOを「実現」するためのシステムを構築する

――OMOを実現するマーケティングプラットフォームのポイントはありますか?

滝口:OMOでオンライン・オフラインを意識しない優れた購買体験を提供するためには、以下の3つのポイントをチェックする必要があるでしょう。

  1. 収集したオン/オフデータを顧客軸で統合管理する環境を用意する
  2. 統合したデータを最適なタイミングとチャネルでアプローチできる
  3. PDCAサイクルが高速で回されて、常に最適化されて施策が実行できる

高野:滝口が挙げた3点に関連して、オンラインとオフラインのデータを統合し活用できる環境が整ってきたのは企業にとって追い風です。

 まずは、企業が所有するファーストパーティデータの保存場所が、オンプレミスからクラウドに移行しつつあります。Salesforce Marketing CloudやGoogle Cloud Platform(以下、GCP)のBigQueryなどの環境でデータを管理する企業も増えており、グローバルソリューションとシームレスにつながるようになってきました。物理サーバーとつなぐとなるとエンジニアリング力が求められるため、組織にとってハードルとなっていたところが解消されつつあります。

電通デジタル データ/テクノロジー部門 データマネジメント事業部 部長 高野正臣氏
電通デジタル データ/テクノロジー部門 データマネジメント事業部 部長 高野正臣氏

 これに合わせてマーケティングソリューションやアドテクソリューションも進化しています。たとえばGoogle 広告などは位置情報を推定した来店計測ソリューションを提供しています。

 そして、企業が顧客情報を集める環境も改善しています。アプリも進化していますし、オンライン決済やキャッシュレスも普及が進み、すべてデジタルで完結できる環境が揃っています。個人を特定できる情報は匿名化するなどプライバシーへの配慮が前提ですが、情報を収集しやすい環境が整ってきています。

OMO実現の強い味方となるGoogle Cloud Platform

――OMOプラットフォームの構築にあたって、Google アナリティクス 360(以下、GA 360)などマーケターには馴染みのある存在であるGoogle マーケティング プラットフォーム(以下、GMP)系をどのように活用することができるのでしょうか?

滝口:オンラインの広告、アプリの閲覧などの情報を収集するには、GA 360やアプリ開発プラットフォームのFirebaseは非常に有効です。2017年にGoogleとSalesforce社がグローバル戦略パートナーシップを結んでおり、GA 360とSalesforce Marketing Cloudをシームレスに連携できるようになりました。GA 360で作ったセグメントに対してMarketing Cloudからメール、LINE、DMでアプローチできます。

 これにBigQueryなどのGCPのサービスを組み合わせることで、可能性がさらに広がります。

 GCPのマーケティング活用というと、これまではGA 360のローデータをBigQueryに格納して分析するケースが主でしたが、このところ店舗への来店、購入、イベント参加などのオフラインデータもGCPに格納して、顧客のオンライン/オフライン行動を把握しようという企業が増えています。GMP側でも来店計測などできることは多いものの、購入などのトランザクション系データまでは蓄積しにくいことを考えると、GCPはハイレベルなOMO実現のための重要な要素と言えます。

 具体的な活用イメージとしては、以下のプロセスをGMPとGCPでサポートでき、LTVの改善につなげることができます。

  1. Display&Video 360とGoogle 広告で顧客にセール情報をお知らせ
  2. Optimize 360で自社サイト上に店舗限定のクーポンバナーを提示して実店舗へ送客
  3. 店舗在庫切れなどでコンバージョンに至らなかった顧客に対して、Google 広告を使って売り切れ商品が再入荷したことをお知らせしてECに送客

高野:ビジネスがECサイトに完全に閉じていれば売上データを加味した分析まである程度GA 360側で実行できますが、実店舗があり顧客が実際に来店するサイトや、定期購入サイトであれば、WebでのCVだけを追うのでは不十分です。GA 360で取得できない売上データをGCP上に置き、Web、アプリの行動ログなどのデータとつなげて顧客を理解する――ここはOMOの肝でありGCPのパワーが発揮される領域です。

データを施策に結びつけやすいのが強み

――GMPとGCPを組み合わせることで得られるメリットを具体的に教えてください。

高野:GMPとGCPの強みは、データ活用の「出口」があるという点でしょう。データを貯める箱はあっても、データを施策につなげる部分が作れていないという状況に陥りやすいのですが、GMPとGCPの場合はGoogle 広告やDisplay&Video 360などの広告プラットフォーム、オウンドメディア最適化のOptimize 360など施策系のソリューションと連携しているので安心して取り組めると思います。

 データ基盤構築で一番難しい点は各種のデータをつなぐこと(データパイプライン構築)ですが、4月に米国サンフランシスコで行われたGoogle Cloud Next '19においてCloud Data Fusion(2019年11月時点ではベータ版)が発表され、GCP以外の各種外部サービスとBigQueryなどは、コードを書くことなくGUI上で連携できるようになり、非エンジニアでもデータパイプライン構築ができるようになってきているのもマーケティング担当者にとって朗報なのではないでしょうか。

滝口:GCPは機械学習の機能も備えているので、膨大なデータから最適なセグメントを抽出できます。抽出したセグメントに対し最適な広告を配信したり、Optimizeを使ってパーソナライズしたコンテンツを表示できるのも魅力と言えるでしょう。

自動車会社とアパレル企業の事例

――GMPとGCPで構築したOMOプラットフォームの事例は出てきているのでしょうか。

滝口:大手自動車会社様では、オンライン上での広告クリック、資料請求や試乗予約などといったWebでのCVデータをベースにした広告のリターゲティングを実施しており、来店までの送客効果はある程度見込めていたものの、送客したユーザーが契約に至ったかどうかはわからないという課題がありました。

 そこでGCPに格納した来店や契約などオフラインのコンバージョンデータをGMPに連携し、オンライン施策がどれだけ店舗売り上げに寄与しているのかをデータポータルで可視化しました。さらには、店舗での契約につながりやすいユーザーセグメントをGCPの機械学習機能で作成し、類似ユーザーに対して広告配信することで、オフラインCVRが向上した実績もあります。

 また、別のアパレル企業様では、GCPに収めたオフラインとオンラインの顧客行動データ・購買データを分析し、機械学習機能を利用してLTVが高いセグメントと低いセグメントを作成して、GA 360のリマーケティングリストと連携させて広告を出し分けることで、ロイヤルティの高い顧客の満足度を高めるとともに広告の費用対効果を改善しました。

――こうした事業会社のOMOプラットフォーム構築にあたって、電通デジタルではどのようなチーム構成、体制で支援しているのでしょうか?

滝口:支援にあたっては、マーケティング施策のプランニング、プラットフォームの設計・実装、施策の運用・改善支援といった各領域のスペシャリストかつGoogleやSalesforceの各種ソリューションへの深い定見を持ち合わせたメンバーをアサインし、プロジェクトチームを構成します。広告からCRMまでワンストップで提供できる電通デジタルの強みを活かして、オン×オフデータの統合によるLTV最大化に貢献していきたいと思います。

※Google Cloud Platform、GCP、BigQuery および Firebase は Google LLC の商標です。

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーライター

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/24 10:00 https://markezine.jp/article/detail/32397