矢野経済研究所は、国内のネット広告市場を調査。市場概況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
市場概況:スマホ広告が伸びを牽引
ネット広告市場は年々拡大しており、2020年度には2兆円を超えると見込まれている。デバイス別でみると、PCブラウザ向け広告に比べ、スマートフォン広告が市場を牽引しており、2019年度には全体の約7割強になる見込みである。
広告種類別でみると、検索連動型広告やアドネットワーク、DSP、インフィード広告、動画広告などの運用型広告が拡大傾向にある。中でも、動画広告は特に拡大している。
動向:事業領域拡大に向けた経営統合の増加
ネット広告提供事業者の経営統合が進んでいる。背景には、大企業によるブランディングを目的とした案件が増えるなか、ブランドリフトのような、ダイレクトレスポンスに留まらないネット広告へのニーズが多様化している点が挙げられる。
また、消費者の消費行動やメディア接点の多様化にともない、マスメディアとネット広告の組み合わせや、DMPやCRMなどのデータ活用、屋外デジタル広告(主にデジタルサイネージ)、実店舗の来店解析など、幅広いサービスを提供することが求められている。そのため、各分野で強みを有する事業者同士が、経営統合という形で提供サービス範囲の拡大、強化を図っている状況が見られる。
動向:実店舗における効果測定が増加
近年、実店舗における来店者計測を実施するとともに、実店舗で得られたデータとネット上のデータを統合することで、出稿したネット広告の効果測定を実施するケースが増えている。
O2Oのデータ統合は、広告代理店やアドテク事業者などが提供するDMPで実施されるケースが多い。また、来店者計測に関しては、カメラやBeacon、Wi-Fi、赤外線センサーなどを使った来店計測ソリューションベンダが実施するケースが多いとみられる。
将来展望:市場規模は2023年度には約2.8兆円に
ネット広告国内市場規模は2023年度には約2.8兆円まで拡大すると予測。今後もソーシャルメディア広告や動画広告などの運用型広告のさらなる拡大に加え、アプリ広告や屋外デジタル広告などが拡大することから、ネット広告国内市場は拡大基調と予想される。
【調査概要】
調査主体:矢野経済研究所
調査期間:2019年3月~7月
調査対象: ネット広告代理店、メディアレップ、アドテクノロジー提供事業者、メディアなど
調査方法: 同社専門研究員による直接面接取材を主体に、一部アンケート調査を併用
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