イントラサイト刷新で営業機動力を強化した富士通
動的CMSを活用すれば、HTMLの知識がなくてもコンテンツを編集できるのはもちろんのこと、顧客ニーズに基づいて情報を適切に出し分けることが可能だ。会員情報、アクセス元のIPアドレスや過去の閲覧履歴を元に顧客像を割り出し、コンテンツを出し分けることが基本的なフレームワークとなる。
富士通はこのフレームワークのもと、社内営業/システムエンジニア(SE)向け社内イントラサイトと、パートナーディーラー向けのBtoB会員制サイトを変革した。
Sitecoreの導入によってコンテンツ作成にかかる工数は8割削減し、クライアントに提案するために有用なコンテンツにアクセスしやすくなったことで、営業プロセスが大幅に効率化した。
「富士通の商材はハードからソフト、セキュリティやAI関連のサービスなど多岐にわたり、情報のアップデートも頻繁にあります。そのため顧客提案用の拡販・技術コンテンツが膨大になります。かつ、Webサイトは商材ごとに乱立していたので、社員もパートナーディーラーも必要な情報を探し当てるのに四苦八苦していました。そのうえコンテンツの見た目や編集方針もバラバラで、サービス名や資料名も不統一でした。
コンテンツへのアクセシビリティを改善することで、営業提案の質を高め機動力を強化できると考えました」と、デジタルマーケティング部 エキスパートの中村修氏は説明する。
だが、膨大なコンテンツを動的CMSで出し分けるといっても、ツールを導入すれば万事解決するほど甘くはない。富士通の成功を決定づけた要因はどこにあったのだろうか。
CMS導入を成功に導いた「コンテンツガイドライン」
変革にあたって富士通が意識したのは、「常に利用者起点で」という合言葉だ。コンテンツを作成する事業部門側の視点ではなく、サイトを利用する営業・SEやパートナーディーラーの視点に立って全体設計を行い、個々のコンテンツが利用者にとって使いやすいものとなるよう工夫を行った。
成功の最大の要因は、コンテンツガイドラインを策定したことにあったという。複数の部門が制作するコンテンツの標準化を進めることで、必要なコンテンツをモレなくダブりなく準備し、利用者が容易にアクセスできるようにした。
コンテンツの標準化にあたっては、以下の項目を具体的に定めたという。
- コンテンツの定義
- 資材や資料の命名規約
- 各ファイルの表紙への情報記載
- プロパティの定義内容
- 秘密情報や著作権表示などの留意事項
- 用語、外来語、用字の使い方
「1. コンテンツの定義」では、コンテンツを富士通の商談プロセスに従って、「企画フェーズ」「選定フェーズ」「導入フェーズ」「運用フェーズ」などに分類した。
たとえば、営業が社内の拡販情報を収集する段階の「企画フェーズ」向けには、ホワイトペーパーやカタログ、導入事例を提供する。商談が進み提案商材を絞り込む「選定フェーズ」の営業には、競合他社比較表やデモ、システム構成図を利用してもらう、といった具合だ。
「こうして商談プロセスに沿ってコンテンツを整備することで、利用者は情報を探しやすくなりますし、動的CMSの機能を用いた『営業プロセスに応じたパーソナライズ』によって有益なコンテンツをタイムリーに発見できるようになります。コンテンツ制作者としても、準備するCMSのテンプレート数を絞り込めます」と中村氏は語る。
ガイドラインの整備によって、ユーザーが求めている資材や内容にアクセスしやすくなるとともに、コンテンツ制作者の負担も軽減された。資料名や目次の書き方を揃え、用語の不揃い・バラツキをなくし、資材ごとの記載内容を明確化したことで、制作プロセスに迷いがなくなり、資材作成を効率的に行えるようになったからだ。
次のページでは、中村氏が言及したパーソナライズが具体的にどのように実践されているかを見ていこう。