ソーシャルリスニングで生活者のリアルに迫る
初めまして。ソーシャルボイスの分析を起点に戦略立案を行う「65dB TOKYO」の代表を務める金清雄太と申します。本連載では「SNS人格図鑑」と題し、私が業務のなかで出会ったSNS上の行動や振る舞いがとても魅力的な人物クラスタについて分析、解説を行います。
ブランド、事業会社にとって顧客の理解は、今、そしてこれからのニーズの変化を占うために必要不可欠です。ビッグデータを分析・活用することで、顧客の行動実態を読み解くアプローチは様々ありますが、それだけでは「顧客のブランドや商品に対する思い、価値観などは分析できない」という課題もブランド担当者から多く耳にします。
Twitterの月間アクティブ利用者数は4,500万人、Instagramは3,300万人(2019年11月時点)と、多くの日本人が利用するSNS。このSNS利用者の行動や発言を細かく分析することで、ブランドや事業にとっての新しい示唆を得ることができるのではないか? と考え、取り組んでいるのが私たち65dB TOKYOです。
本連載では、ソーシャルリスニングツールを用いて抽出をした分析データを見ながら、現代の生活者のリアル、ホンネに迫ります。この連載での学びが、様々な業界の方にとっての、明日の戦略やアイデア発想のヒントになれば幸いです。
リアルよりも精細なSNS人格
皆様は、“コスメ垢”という言葉をご存知でしょうか? 趣味垢、勉強垢などとともに、Twitter内のアカウントの種類を指す名称のひとつであり、特にコスメに関する情報を積極的に発信し、受け取るアカウントを称しています。
試しに、Twitter内のキーワード検索欄に“コスメ垢”と入力してみてください。アカウント名やプロフィール欄にコスメ垢と表示する、大量のコスメ垢を見つけることができます。
コスメ垢を見つける事ができたら、今度は彼女たちのプロフィールに注目してみましょう。
複数見てみると、1つの大きな傾向を発見する事ができると思います。それは、年齢、職業、大まかな在住エリア、肌のタイプや自分の好きなコスメブランドまで、あらゆる情報を詳細に入力しているということです。
自分の身の回りの人を思い浮かべてみてください。正確な肌の色や服の好み、職業やどんな価格帯の商品を購買するかを、把握している知人がどれくらい浮かびますか? 親しい間柄でないと、ここまで詳細な情報、嗜好を聞くことは難しいのではないでしょうか。それが他人の趣味嗜好の情報ともなれば、通常は調査をしないと得られないような情報であるように思います。
個人を特定されないとはいえ、年齢と職業を公開して、SNS上で発言をすれば、その人がどんな日々を送っているか、どんな悩みを抱えているか、どんな環境で暮らしているのか、そのアカウントについて想像を膨らます事ができてしまいます。だからこそ、SNS利用ユーザーは余程のメリットを享受出来なければ極力自分のパーソナルに関わる情報は公開したくないのではないか? という風に筆者は考えています。これを前提とするならば、コスメ垢にとって、自分のプロフィールを赤裸々に公開することで得られる有益な情報がSNSにはあるという事です。
では、コスメ垢はSNS上で何を発信し、何を得ているのでしょうか?