DX時代における新規事業開発のポイント
これまでの議論を踏まえ、「顧客にとっての新たな価値」つまり、自社に閉じない“DX時代”の新規事業開発では、以下の3つのポイントを押さえる必要があります(図表4)。
(1) Purpose=「自社の存在意義」の明確化
(2) Value=顧客が真に求める提供価値づくり
(3) Model&Alliance=新たな収益をもたらすビジネスモデルと仲間づくり(顧客や他企業)
これらのプロセスをウォーターフォールに進めるのではなく、行きつ戻りつしながら、アジャイルに複数の事業案を設計し、その後は複数のチームに分かれてスピーディーに事業検討を進め、ポートフォリオでそれぞれの進捗を管理していくべきと考えます。
自己変革に悩む日本企業
電通デジタルDX調査2019年の中で、最も興味深いデータがここにあります。DXを阻む“壁”について経営層に聞いたところ「既存のビジネスモデルや事業の存在」との回答が昨年より約20%も増えており、次いで「企業文化」との答えも見られました(図表5)。これは、これまで自社の資産であったものが変革を妨げる要因になっていることを示しています。つまり、敵は外部ではなく実は内部にあり、従来の自分たちそのものであるという皮肉な結果となっています。
今回の調査では、DX成果創出企業の特徴も明らかになりました。特徴は明確で、経営トップのコミットメント(ビジョンの提示、予算化、組織変革、中期的な成果期待)が差を分けています。さらに、DX成果創出企業は非創出企業に比べ、顧客データを積極的に活用していることも数字で表れています。
つまり(1)経営層がコミットすることで“壁“を破り、(2)デジタルを活用しながら既存事業の顧客を基盤化し、(3)新しいビジネスモデルをその上に走らせる。日本企業が、新たな価値を顧客に提供し、成長を得る“ビジネストランスフォーメーション“を成し遂げるためには、この3つの要素が今こそ必要なのではないでしょうか。