ユーザーの緻密な心理分析から仮説を抽出
――FACE LOGでの肌撮影には、何か特別な技術が必要なのでしょうか?
杉井:いえ、撮影自体はアプリを起動してカメラを向ければ自動で撮影されるので、かなり簡単です。ただ、インカメラで撮る自撮りと違い、より精度の高い解析を実現するために背面カメラを使います。撮影方法はアプリストアでも、アプリ内チュートリアルでも解説しているのですが、自分自身を撮影する=インカメラを使うという認識が根強いことから、撮影の際に躓かれてしまうユーザー様も多かったのかもしれません。
――なるほど。定性調査も行ったとのことですが、ユーザーからは、たとえばどのような意見があったのでしょうか?
星野:初回に撮影をしたけれど次に進まなかったユーザーや撮影に成功していないユーザーからは、「最初の撮影に手間取った」という声が複数聞かれていました。このネックになっている課題を解消すると同時に、継続的に利用するとどのようなメリットがあるかをもっと訴求すれば、継続利用に結び付くのではと考えました。
――では、実際に配信したターゲットとクリエイティブについてうかがえますか?
星野:ターゲットは「インストール後、まだ一回も撮影をしていない人」とし、そこから動画広告を配信するユーザー群と、配信しないユーザー群をランダムに抽出して、Facebookと、Instagramのタイムラインとストーリーズで配信しました。
クリエイティブは3種類で、前述の「肌撮影の方法が十分に理解されていないのでは」という仮説を基に制作した、撮影方法のステップをイラストのアニメーションで紹介する動画のほか、肌チェックの大切さにフォーカスした動画、使用シーンを紹介した動画を制作しました。
広告を配信したターゲットは肌撮影率20%増
――リテンション広告を配信した結果は、どうでしたか?
星野:配信したユーザー群は、対照群と比較してその後の肌撮影率が20%向上しました。3種類のクリエイティブは、肌撮影率という観点ではそこまで差がありませんでしたが、クリック率がいちばん高かったのはやはり撮影方法を解説する動画でした。撮影方法が十分に伝わっていないのでは、という仮説が正しかったこと、またそれをしっかり解決できる内容になっていたことで、高い効果が得られたのだろうと思います。
鈴木:肌撮影をまだできていない人を対象に、「なぜ撮影していないのか?」というボトルネックの分析をしっかり行えたので、最適なコミュニケーション設計とクリエイティブ制作ができ、手応えがありましたね。
――仮説の精度が高かったから、続くプロセスでも方針がぶれずに高い効果が上げられたということですね。
鈴木:そうですね。この施策で得られた知見を踏まえて、たとえば「肌撮影をしたことがあるが離れてしまった人」に対してなど、今はもう少し違うセグメントを切り出して広告を最適化し、配信している最中です。