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AIが抽出したセグメントに精度高くアプローチ CV増と媒体価値向上を両立した「ヒトサラ」の施策

 “料理人の顔が見えるグルメメディア”と銘打っている「ヒトサラ」。昨年からAIを搭載したカスタマーエンゲージメントプラットフォーム「AIQUA(アイコア)」、そしてデータサイエンスプラットフォーム「AIXON(アイソン)」を導入し、レストラン予約のCVRとコンテンツ回遊による媒体価値向上の両立を図っている。「感覚的に把握していたユーザーの“輪郭”がくっきりしてきた」と手応えを語るUSEN Media(USEN-NEXT GROUP)の長﨑卓史氏と吉田亜美氏に、AI活用の効果と展望を聞いた。

数多あるグルメサイトと一線を画す「ヒトサラ」

――グルメメディア「ヒトサラ」では、AIを搭載した2種類のプラットフォームを併用して、ユーザーとの関係構築に成果を挙げられているそうですね。まず、メディアの特徴を教えてください。

長﨑:「ヒトサラ」は現在7年目になるグルメメディアで、月間1億PV、2,000万UUまで成長しています。店舗情報をカタログにしたグルメサイトではなく、プロの料理人にフォーカスした“グルメメディア”として、編集部が手掛けるハイクオリティなコンテンツに注力しているのが大きな特徴です。掲載店は約1万5,000店舗で、5店未満の中小規模の店舗様が75%ほどを占めています。

――厚みのある料理人のインタビューや、「トップシェフがプライベートで通う店」といった企画コンテンツを中心に、素材やその産地に注目した記事まであるのですね。長﨑さんが統括されているMedia Divisionでは、何を事業成長の目標としているのですか?

長﨑:主力メディアである「ヒトサラ」では、ご契約いただいている飲食店からの月額掲載料と予約手数料の合計売上、そして掲載店舗数を増やすことがメインの事業目標です。同時にメーカーや商業施設、自治体などとのタイアップ事業も展開しています。また、訪日外国人向けグルメサイト「SAVOR JAPAN」も今とても伸びており、「ヒトサラ」に次ぐ事業に育っています。

 一方、掲載のメリットを提供するためには一般ユーザーに支持いただくことが不可欠なので、前述のように魅力的なコンテンツを読んでグルメサイトや検索エンジンとは異なる価値を実感していただき、トラフィックやUU数を伸ばして各メディアの魅力を向上させることも重要なミッションとなります。

USEN Media Media Division 統括課長 兼 プロダクト・マーケティング課長 長﨑卓史氏
USEN Media Media Division 統括課長 兼 プロダクト・マーケティング課長 長﨑卓史氏

エンゲージメント向上のために「AIQUA」導入

――飲食店向けと、一般ユーザー向けの活動を両輪で進められているのですね。御社では昨年、Appierのカスタマーエンゲージメントプラットフォーム「AIQUA(アイコア)」、続いてデータサイエンスプラットフォーム「AIXON(アイソン)」を「ヒトサラ」に導入されたそうですね。その背景にあった課題をうかがえますか?

長﨑:一言でいうと、予約CV数の成長と、掲載飲食店の多様性や独自のコンテンツという価値提案をどう両立すればいいのか。その点を模索していたタイミングでした。

 広告プラットフォームの機械学習を活用すれば、CVRの高いコンテンツを効率的に発信できます。ただ、そうすると露出も偏って、多様な飲食店の存在やその奥深さに気づいてもらえません。これでは、「ヒトサラ」の独自性が打ち出せず、エンゲージメント向上も難しくなります。

――今や、予約だけならGoogle上で完結してしまいますし。

長﨑:そうなんです。これまでも、僕らなりに分析したインサイトやセグメントに基づいて配信を工夫していたのですが、材料となるデータは「ヒトサラ」が把握している属性やサイト内行動に限られていました。

 会員制度はあるものの、ユーザーの利便性から非会員でも予約可能にしているので、非会員のユーザーも多く存在します。したがって、会員やアプリユーザー向けの施策は対象が限定的になります。

 そこで、もっと確証を持ってアプローチでき、着実にエンゲージメント向上ができるツールとして、アイコアの導入に行き着きました。

プッシュ通知をブロックするユーザーをエンゲージする4つの方法

 「ヒトサラ」ではプッシュ通知を巧みに活用して、クオリティの高い記事に読者を誘導してエンゲージメントを強化しています。プッシュ通知はこのように強力なチャネルですが、そのポテンシャルを活かすにはブロックしたユーザーを再度オプトインさせることが必要です。そのために有効なメソッドをご紹介します。

ユーザーの自社サイト外の行動や興味関心がつかめる

――アイコアは、どのような経緯で知ったのですか?

長﨑:アイコアはAI搭載のカスタマーエンゲージメントプラットフォームですが、はじめはWebプッシュ通知ができるツールを探していて、その過程で知りました。多様なコンテンツを会員・非会員を問わずセグメントして提案するなら、Webプッシュ通知が有効だと考えていたので。

――Webプッシュ通知ができるツールは各種ありますが、アイコアを選ばれたのはどういった理由からなのでしょうか。

長﨑:そうですね、通知するだけなら無料でも十分ですし、それこそ自社開発でもできます。アイコアを具体的に検討する中で決め手になったのは、AIによって、自社のWebサイトやアプリなどを横断した行動履歴に加え、外部サイトでの閲覧履歴などを統合して精度の高いアプローチができることでした。外部サイトでのインタレストやキーワードを取得して施策に活かせること、レコメンドからその後の分析までのPDCAを回しやすいことにも期待しました。

USEN Media Media Division プロダクト・マーケティング課 吉田亜美氏
USEN Media Media Division プロダクト・マーケティング課 吉田亜美氏

――現在は、どのように活用されているのですか?

吉田:“カスタマーエンゲージメントプラットフォーム”という言葉の通り、ユーザーとのコミュニケーションを密にしていく様々な打ち手を展開できています。プッシュ通知やメール配信、サイト内のある行動をトリガーとするキャンペーンなど、パーソナライズした上で幅広くアクションを実施していますね。

 最初に取り組んだWebプッシュ通知も、週1~3回の配信を続けて、半年間で開封率が最高36%まで上がるようになり、サイトのPVも大幅に伸びています。

サイト外からの潜在ユーザーの誘導もできる「AIXON」

――目に見える成果が得られているんですね。

長﨑:そうですね。以前は先ほどお話しした通り、あくまで僕らなりの不確かな仮説や印象でセグメントを切っていましたが、アプローチの精度が上がってはっきりと数値で結果が表れたことで社内への説明もしやすくなり、知見も蓄えられるようになりました。

吉田:また、アイコアではPCやスマホ、タブレットなどデバイスをまたいだユーザーの紐付けができることも、成果の要因だと思います。設定画面のUIもとても直感的に使えるので、アクションそのものも速くできるようになりました。

――アイコアの導入に続いて、昨年末にデータサイエンスプラットフォーム「AIXON(アイソン)」も導入されています。この導入理由は?

長﨑:アイコアがユーザーへのアクションに有効なツールだとすると、アイソンはアクションの基盤となる分析ツールだと捉えています。今、僕らもファーストパーティーデータをどんどんアイソンに集約して、CDPのような使い方をしています。異なるデータソースの統合処理もAIが助けてくれるので導入はとても簡単でした。

 当社はアクションに課題があったので先にアイコアを入れましたが、アイソンは多様なデータソースを統合し、オーディエンス拡張を通してサイト外からCV見込みの高い潜在ユーザーを誘導できることが、とても魅力に感じています。今、当社で有しているファーストパーティーデータと、Appier社が提携しているサードパーティーデータを合わせて分析した上でパーソナライズしたアプローチを実践しています。

プッシュ通知をブロックするユーザーをエンゲージする4つの方法

 「ヒトサラ」ではプッシュ通知を巧みに活用して、クオリティの高い記事に読者を誘導してエンゲージメントを強化しています。プッシュ通知はこのように強力なチャネルですが、そのポテンシャルを活かすにはブロックしたユーザーを再度オプトインさせることが必要です。そのために有効なメソッドをご紹介します。

ユーザーの姿を細かい粒度で捉えられるようになった

――両方を活用することで、どのような分析やアウトプットが可能になっているのでしょうか?

吉田:これまでは自社サイトに来訪したユーザーを対象に、「20代の女性にはこんなコンテンツはどうか」といった粗い粒度のセグメントと打ち手に留まっていました。それが自社データとサードパーティーデータをつなぎ、サイト内だけでなくサイト外の行動、興味関心やキーワードを含めてAIが分析するようになったことで、人のバイアスが入らない科学的なアプローチが可能になりました。

 たとえば、ターゲットやペルソナを作るとき、居住地が都心か地方か、男性か女性か、どれくらいの年代か、などをもとに凝り固まったイメージ像を持ってしまうことがあると思います。一方、アイソンのAIはそのようなデモグラに左右されないユーザー個々の興味関心など、思いもよらないセグメントも提案するので、こちらの仮説がぐっと具体的になってユーザー像が以前より見えるようになり、打ち手を考える幅が広がりました。

――仮説が具体的になる、というのは?

吉田:たとえば「5,000円以上の店を予約したことがある人」をセグメントすると、そのユーザー群の興味関心を追って「旅行好き」や「ブランドコスメ」などのキーワードがわかります。さらにそのセグメントと同じ行動を起こす可能性が高いユーザー群も生成でき、アクションした際の予測CVRまで表示されます。それらをアイコアで打ち手に転換すると、予測通りCVRが上がることが多いです。

 各種のキーワードが、どのくらい強くセグメントに紐付いているかといった関連度もわかるので、それらも含めて想像ベースで模索していた以前と比べると、格段に細かい粒度でユーザーを捉えられるようになりました。

外部パートナー企業と協業する際の武器に

――ユーザーの姿が、よりクリアになったんですね。

長﨑:まさに、そうですね。これまでの自分たちの類推が合っていた場合は肌感に自信を持てますし、まったく違っていたときはやはり科学的なアプローチの力を感じます。言語化できていなかったユーザーの輪郭がつかめてきた手応えがありますし、新しい視点を与えてくれることが刺激にもなっています。

――2つのツールを導入して、最もよかったと思う点は?

長﨑:今お話ししたユーザー理解や数値上の成果、示唆を得られる点もそうですが、プロダクトとしての武器が増えたと思える点がいちばん大きいです。

 「ヒトサラ」に限らず、当社のメディアでは様々な業種のパートナーと連携していますが、裏側では必ずデータ連携や活用の議論が発生します。そのとき、データ連携が容易で打ち手も多様なアイソンとアイコアがあると、実現の“絵”がとても描きやすい。それがプロダクトの強みになり、かつ交渉優位にもなるので、この可能性の広がりを今後のビジネスの推進力にしたいです。

――では今後の展望をうかがえますか?

吉田:直近では、広告プラットフォームとつないで外部広告配信を最適化すること、また導入予定のメール配信サービスとの連携を進めます。今の勢いを止めず、ユーザーと密にコミュニケーションを取りながら、技術的にも習熟していきたいです。

長﨑:今、「ヒトサラ」だけなく前述の「SAVOR JAPAN」にもアイコアとアイソンを導入しており、ウェディングメディア「ウエコレ」など他の自社メディアへも検討中です。共通ユーザーも一定数いるはずなので、メディア間の効果的な連携も図れればと思います。また、USEN-NEXT GROUP全体では相当量の顧客データベースがあるので、グループでの活用も考えてみたいですね。

プッシュ通知をブロックするユーザーをエンゲージする4つの方法

 「ヒトサラ」ではプッシュ通知を巧みに活用して、クオリティの高い記事に読者を誘導してエンゲージメントを強化しています。プッシュ通知はこのように強力なチャネルですが、そのポテンシャルを活かすにはブロックしたユーザーを再度オプトインさせることが必要です。そのために有効なメソッドをご紹介します。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/03/26 13:36 https://markezine.jp/article/detail/32969