2020年以降、“進化”の方向性は?
最後に川添氏は、今後目指す進化の方向性について両者に質問した。
5G(第5世代移動通信システム)サービスが開始し、リアルとデジタルの融合は一層進んでいく見通しだ。一方で、オリンピック・パラリンピックの開催が延期になるなど、混沌とした状態が続く。さらにコロナウィルスの世界的な蔓延で、経済活動や国際情勢も従来の秩序が根底から揺らいでいる。不確定要素が多く、先が見通せない状況の中、両社はどのようにビジネスを進化させていくのか。
篠塚氏は「私の考えでは、2つの進化の方向性があります。それは『モノをさらに進化させること』と『ビジネスを進化させること』です」とし、以下のように説明する。
「ワコールの原点はモノ作りで、お客様の手元に残るのは商品です。ですから、時代が必要としている商品で、かつ、長く愛されるモノを生み出すことが原点であり、(モノ作りを)進化させなければなりません。もう1つは、会社のミッションである『世の女性に美しくなってもらう』に則って、新規ビジネスを創造する進化です。具体的には、ボディデータを軸に、新たな美しさを創造するようなサービスを考えています。こうした施策は、様々な会社と協業し、実現する方向も見据えています」(篠塚氏)
一方、澤邊氏は「リアルとオンラインの融合によりSCは、一層多目的な方向に進化するでしょう」と指摘する。
「SCは“場”を提供し、その対価として賃料をもらっていました。今は、そのビジネスモデルが変化しています。たとえば、ライブ配信スタジオでは番組を制作したり、現在のようにイベントが中止になる状況では(バーチャルの)ライブ会場にもなったりします。こうした事象が増加することで、新たなコミュニケーションの形が発生すると考えています」(澤邊氏)