「インフルエンサー」は有名人に限らない
SNSのフォロワーが多いタレントをInstagramやYouTubeを使ったプロモーションに起用するのも、インフルエンサーマーケティングのひとつの手法だ。しかしここで注意しておきたいのは、世間的な知名度や人気があるタレントだけが「インフルエンサー」ではないということである。
たとえば世間的には無名だが、Twitter上のあるコミュニティで美容に関する情報発信が活発な美容師が、ある会社のシャンプーのUGCを投稿したとしよう。その投稿を見た美容コミュニティ内のユーザーたちは、「●●さんが良いといっているシャンプーなのだから、きっと良いのだろう」と商品を購入してくれる。
誰もが知る有名人ではなくても、そのコミュニティでは発信力のある人物からのクチコミによって、商品は売れるのだ。
また、特定のジャンルの情報ばかりを発信しているわけではない一般人のUGCからも商品は売れる。某お菓子メーカーでは、アレルギーに対応したクリスマスケーキが一般人のUGCによって拡散された事例がある。アレルギーによりケーキを食べられなかった子どもに「この商品のおかげで初めてケーキを食べさせてあげられた」という趣旨のツイートは、あっという間に2,000を超えるリツイートがされた。ツイート主と同じようにアレルギーを持つ子どもの保護者や子どものころに自分もアレルギーが原因でケーキを食べられなかった人たちなどによって、拡散が広がったのだ。
拡散の発端となったツイート主のアカウントは100人ほどのフォロワーしかいなかった。この事例からは、発信力が強くはない人も大きな影響力を持っていることがわかる。
「自社にとってのインフルエンサー」は誰なのか?
一方、多くの企業は「知名度の高いタレントやフォロワーが多い人物の起用」のみが、インフルエンサーマーケティングの手法と思ってしまいがちである。
しかし、インフルエンサーマーケティング施策の本来の目的は「売上アップ」にあるはずだと考えると、必ずしもタレントやフォロワーが多い人物の起用という「手段」にこだわる必要はない。「自社にとってのインフルエンサー」にフォロワーになってもらうことも、手段なのだ。
そもそもの話だが、フォロワーが多い芸能人や有名人は「自社にとってのインフルエンサー」になりうるのだろうか?
Twitterで何十万人単位のフォロワーがいる芸能人や有名人は、確かにインフルエンサーではある。だが、「万人にとっての」インフルエンサーではない。
もし彼らが万人にとってのインフルエンサーならば、自分のタイムラインには彼らのツイートが常に流れてくるはずだし、自分と親しい間柄の人のタイムラインにも常に拡散されているはずだ。しかし、実際はそうではない。その点を見落としてしまうことで、「世間一般に知られているインフルエンサーを起用すれば、自社のインフルエンサーマーケティングも成功するのでは?」という思考になってしまいがちなのである。