顕在層の獲得から潜在層へのリーチが課題に
MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、今回#TikTokスポーツライフにGDOが協賛した背景、狙いについて教えてください。
岡部:我々はここ数年、ゴルフのスコア管理・分析アプリの「GDOスコア」のプロモーションを強化しており、その戦略の1つとして潜在層との接点を強化しています。今回#TikTokスポーツライフに協賛したのも、その戦略に合致するためです。
MZ:GDOにとっての潜在層とは、どのような人を指しますか。
岡部:ゴルフはするけどGDOを知らない人や、ゴルフにまだ関心がない人などです。これまでは、獲得型のアプローチを中心に行っていましたが、それだけではダウンロード数の増加に限界がありました。
また、国内のゴルフマーケット規模が縮小傾向にあることを見据えた新たな施策が必要だったのも、取り組みの背景にはあります。潜在層をターゲットにした施策を2020年1月から3月にかけて実施してきましたが、思うほどの成果にはつながりませんでした。
そして、4月から見直しをするタイミングで、今回の協賛の話を広告代理店のTORIHADAさん経由でいただきました。内容を拝見したとき、TikTokであればこれまでまったくアプローチできていなかった層にリーチでき、かつ今回スポーツをテーマにしていたパッケージだったので、我々との相性も良いと思い協賛を決めました。
TikTokで必要なのはユーザーネイティブなアプローチ
MZ:TikTok For Business Japanの方から、スポンサーシップコラボパッケージ「#TikTokスポーツライフ」を企画した背景を教えてください。
秦:2つあって、1つはTikTokならではのネイティブなアプローチが必要だと考えたためです。これまで我々が行ってきた調査で、TikTokのユーザーは見た瞬間いかにも広告っぽい広告を嫌う傾向にあることがわかっています。
そのため、これまでのように企業が伝えたいメッセージを広告で届けるのではなく、ユーザーのコミュニティに共鳴したブランドコンテンツを我々と広告主、広告代理店の3者で作り、新たなコミュニケーションを生み出すべく今回のような協賛パッケージを企画いたしました。
そして、もう1つ背景にあるのは、スポーツとTikTokの親和性が非常に高いということです。日々TikTokには、フィットネスや様々な球技などに関する動画が投稿されており、ゴルフに関する動画も数多く上がっています。そのため、スポーツを絡めた協賛パッケージがユーザーにとっても、広告主にとってもメリットが大きいと考えました。
MZ:では、#TikTokスポーツライフはどのような座組で行われているのでしょうか。
河野:TikTokでは、夏祭りやハロウィンなど、時期ごとにテーマを決めて、それに沿った投稿をユーザーに促すキャンペーンを定期的に実行しています。その一環として#TikTokスポーツライフを4月29日~5月13日に実施しました。
アンバサダーにはプロサッカー選手の槙野智章選手を起用し、同選手を使ったクリエイティブなどを掲載しました。また、TikTokアプリ内でも目立つ位置にバナーなども配置し、アプリ内の広告でも告知するため、TikTok内でも大きな盛り上がりを見せています。
広告主の皆さまが協賛するメリットは3つあります。1つ目はキャンペーンの盛り上げをTikTokに任せることができることです。こういったキャンペーンは、投稿を盛り上げるためにクリエイターやプレゼントキャンペーンを活用するなど戦略的な施策が必要ですが、その部分はTikTokが主体的に行います。これにより広告主様は、「ユーザーの投稿を促すこと」や「話題化すること」を担保した上でキャンペーンを実施できます。
2つ目は、投稿してくれたユーザーに対してプレゼントキャンペーンが行えることです。これにより、具体的なインセンティブをユーザーに提示することができ、自社のサービスや商品の認知度を向上させることができます。
3つ目は、キャンペーン実施に必要な費用や工数など広告主様の負担を軽減できることです。協賛していただく企業様にはTikTok用に動画を用意していただくだけなので、協賛時の手間がほとんどかかりません。
TikTokに企業が投稿すべき動画とは
MZ:キャンペーンを通じて意識していたことはありますか。
岡部:今回は、潜在層との接点の拡大に向けて、ユーザーがブランドを認知し、興味を持ち、理解するというフェーズまで到達することを目標にしました。
そのため、動画のクリエイティブ制作では「TikTokユーザーはGDOスコアを知らない」と仮定し、サービス訴求を強めるのではなく、ゴルフをやらない人でも好意的に見てもらえ、さらにゴルフをやってみようかなという興味やニーズを喚起できるように意識しました。クリエイティブに関しては広告代理店のTORIHADA様の支援に頼った部分が大きかったです。
さらに、顧客接点の連動を図るため、他の広告キャンペーンやプラットフォームのクリエイティブとは異なる訴求内容でも、TikTokと同じサービスだと印象付けるためのクリエイティブ設計を行いました。
MZ:ゴルフをやらない人でも興味を持ってもらえるクリエイティブとのことですが、TORIHADAはどのように企画を行ったのでしょうか。
谷:TikTokはユーザーとの距離が近いプラットフォームなので、コンテンツライクであるものを大前提に作りました。具体的には、動画に起用するキャストに20代から30代に人気のあるTikTokクリエイターを4人キャスティングしました。
動画内では、その4人がホールを回って、様々なハプニングに遭遇するのですが、その楽しくゴルフをプレイする姿にユーザーが親近感を持てるような内容になっています。また、4人のTikTokクリエイターも仲が良い人同士を集めたり、撮影もスマートフォンで行ったりと、リアルな楽しさがにじみ出るクリエイティブ作りを心がけました。
@gdo_score GDOスコアは##tiktokスポーツライフ を応援してます。@@ibukidayo8484 @@kyokasan123 @@hyuga.0707 @@_maria.holic_
♬ オリジナル楽曲 - GDOスコア
狙っていた層のアプリ利用者が増加
MZ:今回の協賛によって、どのような成果が得られましたか。
岡部:アプリのインストール数とインストール後の新規会員登録数をKPIとしていますが、ともに良い成果が見られました。インストール数は、前年同時期比138%となり、アプリ経由の新規会員数も前年同時期比で141%伸長しました。GDOスコアアプリ経由の新規会員が新規会員全体の約半分を占めるため、同時期に会社全体の新規会員数も伸長しました。
また、自社会員全体でみると40代以上がボリュームゾーンなのに対し、このキャンペーン以降アプリ経由の会員は20代~30代の割合が50%超まで伸びており、これが1番大きな成果だと捉えています。
またこのキャンペーン実施期間とその翌月、運用型広告のパフォーマンス改善が見られました。認知向上を目的とした施策と獲得を目的とした施策を組み合わせて実施することで、獲得数の最大化につながることを実感しています。
谷:スポンサーシップコラボパッケージでは、ブランドリフト調査もセットで付いてくるのですが、その結果も非常に良かったです。ブランド認知は22%、広告の記憶度も12.8%まで増加していたので、非常に良い結果だったと捉えています。
MZ:TikTok For Business Japanから見て、今回の結果が得られた要因はどこにあると思いますか。
河野:クリエイターの今回の投稿が、「TikTokでの普段の投稿に近い形式でゴルフの楽しさを伝えた」ことが大きいと思います。普段TikTokで見かけるクリエイターがゴルフを楽しくプレイする内容だったので、ユーザーにとってネイティブな動画視聴体験をもたらしました。このようにネイティブな形でユーザーに届けることで、アッパーファネルのユーザーの具体的なアクションを引き出していくことができます。
たとえば、このクリエイティブにより#TikTokスポーツライフのキャンペーンでのゴルフ動画もかなりの数が投稿されていました。ゴルフのレッスン動画からゴルフボールでリフティングをする動画、中にはゴルファー向けのマッサージ動画まで、多岐にわたる動画が投稿されており、GDO様の動画がキャンペーン中のゴルフ動画を増やす要因になったと認識しています。
新しいもの・ことの訴求に効くTikTok
MZ:今回はアプリインストールの増加にも寄与する結果となりましたが、今後はTikTokをマーケティングにどう活用していきたいですか。
岡部:9月から11月は、ゴルフの楽しみやすい季節になるので、その時期に今回のようなスポーツに関連したキャンペーンなどがあればぜひ協賛したいですね。潜在層向けに私たちがゴルフの楽しさを伝えられる場所にはどんどんアプローチしていきたいので、TikTokもその1つとして活用できればと思います。
谷:TikTokは機械学習でコンテンツがレコメンドされるのが大きな特徴です。誰かの動画を見るのではなく、新しい動画と偶然出会う・知るために動画を見ていることが多いので、広告主がアプローチする際も新しいこと・ものを訴求していくことが重要だと思っています。そのため、GDO様はもちろん、他のクライアント様とも目的に沿った形でTikTokの新たな活用法を見出していきたいです。
MZ:#TikTokスポーツライフは、非常に反響の大きい企画だったと思いますが、今後もこのようなスポンサーシップコラボパッケージは作っていく予定なのでしょうか。
秦:TikTokでは、引き続きユーザーのトレンドを追いながら、新しいスポンサーシップコラボパッケージを作りたいと考えています。直近も母の日や夏祭りなど、様々なテーマでTikTokを盛り上げるキャンペーンを行ってきました。また、今後はハロウィンに関するキャンペーンも予定しておりますので、そこでも広告主様のビジネスに貢献できるパッケージが作れたらと考えています。
そして、これからの時代は単純にメディアに広告掲載するだけではない、新しいコミュニケーションが生まれると考えています。具体的には、多くのユーザーが楽しめて、世のトレンドをリアルタイムにキャッチしてうまく乗れるような、よりネイティブなスポンサーシップコラボパッケージが求められてくるはずです。そのため、今後TikTok For Business Japanが新たな形を提案できるよう、スポンサーシップコラボパッケージの企画に励みたいと思います。