レベニューモデルの構築理由と基本となる4つの考え方
マーケティング、インサイドセールス、営業の3部門で「売り上げ」の数字以外の共通の目標というものが存在しなかった。そこで相関するKPIを持つことで、同一プロセスにおいて数字以外の共通言語設定を図ろうとしたのが、レベニューモデルのはじまりだ。
ワークフローシステムの販売・開発を手掛けるエイトレッドでは、組織で活動するにあたって「共通言語化」や「共通認識」を大切にしている。そのためにも、マーケティング領域のあらゆるデータの可視化や、既存ツールの再定義、デジタルマーケティング全体の再設計を行う必要があった。
こうすることで、立場の異なるメンバーが同じ数字を理解し、同じ目標に向かう広い視点が持てるようになると考えたからだという。
こうした考えのもと「以下の4項目を基本にレベニューモデルを構成した」と日高氏は語った。
1.一気通貫で数字を可視化できる形を作成
2.活動の見える化による共通認識を強化
3.空いている穴を見つける
4.穴を塞いで最適な施策を実施して売り上げを最大化
マーケティングプロセスの穴を見つけ、塞ぐために必要な施策は何か。これらを一気通貫で可視化して確認する方法を形成し、その情報をもとに活動することで売り上げの最大化を図ることが基本となっている。
レベニューモデル構築におけるフレームワーク
レベニューモデル構築にあたり、最初に行うのは、目標達成に必要な課題を洗い出し、因数分解を行うことだ。「課題」「阻害要因」「解決」「結果」の4つの項目からなるフレームワークに沿って組み合わせていく。
まずは実際に行った4つの課題の洗い出しと、それに対する阻害要因の因数分解を紹介する。
1つめは、顧客の獲得から商談完了までのステージの設計に一貫性を持たせること。これは「設計の不備」を洗い出して解決する糸口となる。
2つめは、顧客の流入経路を正しく理解すること。日々の業務の「運用の不備」を洗い出すには、流入経路を把握することが必要であり、予算投下の判断をするうえでも重要なポイントだ。
3つめは、商談まで活動の関連性を可視化することだ。顧客のリードを確度の高いものにするための「データの整備」を行い、見える形にしてインサイドセールスに渡していくことが大切だ。
最後の4つ目の課題が、「データの一元管理」だ。複数のツールを利用していると、データの格納先が複数にまたがり煩雑化していることが多い。データの不備も含めて整備しつつ、最終的には可視化するツールを使って解決に導いていかなければいけない。
「こうした課題に対しマーケティング部では、大きく4つの役割を担っています。マーケティングファネルの流れにおいて、それぞれに担当が付き活動をしています。実際にそれらを統合し下支えをしてくれているMAツールがMarketo Engageです」(日高氏)
阻害要因の解決方法と考え方
1つめの課題として挙がっていた「設計の不備」に関する解決の糸口として、プロセスを各部門が理解して同じ土台に立って会話する必要があった。そのためマーケティング、インサイドセールス、営業それぞれの担当領域を改めて明確化させた。
そして、リード創出のタイミングも明確化するために、「エイトレッドリード」と「パートナーリード」の2つに分けて定義をした。
エイトレッドリードの創出タイミングは主にWebでの問い合わせや資料請求。パートナーリードは実際にアカウント営業への相談が入ったときと、、商談化とほぼ同じリード創出タイミングとなっている。最終的なデータの可視化を目指すためにも、リード創出の理由やタイミングの認識を合わせて把握することが必要だった。
「全体のリード創出から商談受注までのプロセスの理解と整理を行い、各部門が理解することで、共通認識を持てるようになりました」(高岡氏)
2つめに、日々の業務の「運用の不備」を洗い出すために、マーケティングファネルを定義し、Marketo Engageのライフサイクルモデル機能を活用して、運用の最適化を行った。Marketo Engageのライフサイクルモデルとは、企業ごとに設定したマーケティングファネルをシステムに置き換える機能だ。一つひとつのフォルダがファネルステージとなり、これらをシステム化することで、自社のリードがどのファネルに位置しているのかが可視化される。
毎月のリード数やステージごとのコンバージョン率、それぞれの滞在日数もわかるので、ステージ別に顧客の状況を把握でき、最適な施策の分析、実行へとつなげることができた。
「自動取得できない部分は、営業担当者の手動入力を含め、すべての流入経路を洗い出して、漏れなく流入チャネルの明確化を行いました。弊社はこのような仕組みを様々なツールを組み合わせて実現しています」(高岡氏)
顧客との接点をすべて洗い出し可視化する
3つめに、商談受注になったリードの創出経路をデータ化し、「データの整備」をするために、まずは顧客との接点の洗い出しを行った。なぜなら、最重要データとして見るべき数値は、「マーケティング施策別の商談から受注結果」だからだ。
よくあるマーケティングのKPIとして、リードの獲得数、メールの開封率、セミナーの申し込み状況、単発施策の実行結果といった様々な獲得数字をKPIとしている例を耳にする。しかし、本来見るべき数値は、マーケティング施策別の商談作成から受注結果だと高岡氏は語る。
具体的には、ホワイトペーパーやカタログなどの資料のダウンロードや、名刺の交換とセミナーの申し込みなど、顧客の接点をすべて洗い出した。これらがWeb経由でのリードの場合は、広告か自然流入かも追える設計を行っていった。これによって、Web施策のどこに予算を投下すべきかが明確になるという。
チャネルとしてリード取得数が多くても、商談の受注には寄与していない場合も多々ある。商談の創出数、または受注金額のところまで俯瞰して見なければ、効果測定ができたとはいえない。企業によってどこに重きを置くかは異なる。しかし、データの整備によって最終目標に対しての現状把握、改善に向けての費用の投下先、投資すべきマーケティングチャネルは明確となってくる。
「データの整備は、チャネルの明確化とデータ入力を適切に行うことで、効果のあるチャネルが明確にわかるようになりました」(高岡氏)
最後に「データの一元管理」を実現させるため、レベニューモデルで構築した仕組みをBIで構築した。
Marketo EngageとSalesforceのデータを一元的に見る機能がある。これを使うことでチャネル別の商談獲得件数、新規リード数や受注件数などのキャッチアップが可能となった。
導入後、注目していなかった施策の商談化率が高く、効果的だったことが判明した。このようにチャネル別の効果を細分化してウォッチすると、今まで見えていなかった施策実績が分析できるようになる。
「BIツールを活用することによって、数値を一気通貫で可視化しました。これらを実行してエイトレッドレベニューモデルが完成となりました」(高岡氏)
エイトレッドは、このレベニューモデルを通して「共通言語化」をしていくことで部署をまたがって同じ言葉で再定義を行ってきた。
レベニューモデルを使ってKPIを設置する
こうすることでKPIを的確に設定できるようになる。では、エイトレッドはレベニューモデルを提唱しつつ、どのようにKPIを設置しているのか。
上の図はよくあるKPI設計の流れだが、特に重要な点が2つある。
1つめが「商談をリサイクル」することだ(点線部分)。こういった人を改めてMQL(Marketing Qualified Lead:見込み客)に戻していくことが大切だ。
インサイドセールスが架電したが、アポイントが取れなかった。未商談で終わってしまったなど、受注まで至らずに失注した見込み顧客を見落としがちで、忘れてしまうことが多い。このような項目を再度トラッキングできる形にして、再アプローチから受注につなげていっている。
2つめがレベニューモデルの特徴の1つでもある、チャネル別効果を組み合わせることで、マーケティング効果を可視化することだ。実際に売り上げに貢献した施策を確認しつつ、無駄なく効率的にお客様を獲得しながら、さらに醸成をしている。
その後も、インサイドがどれ位TQL(Teleprospecting Qualified Leads:インサイドセールスに渡せるリード)に引き上げられていて、商談化、受注できているのかも確認し、各領域との連携も図っているとのことだ。
質の良いリードで商談化率を200%アップ
レベニューモデルが構築できた結果、獲得リード数は昨年対比で250%アップ。商談化率は直近3ヵ月と比較して200%アップ。非常に大きな成果を得ることができた。
しかし、これらはレベニューモデルにおける、デジタルマーケティングの再設計のみの効果ではなく、基本の4つの考え方に基づいて、効果的なチャネルを見つけ、必要な予算を適切なチャネルへ投下することによって、短期間で伸ばすことができたのだ。
「レベニューモデルによって、マーケティングとインサイドセールスが同じ言語で話しながら、同じ目標を持っていくと、今まで以上に密で上質なコミュニケーションが生まれ、コンテンツ作成のために必要な情報設計もさらに良いものへとつながってくる」と日高氏はセッションを締めくくった。