“ヲタ活”がマス化し、アイデンティティの一部に
長田:エンタメコンテンツが充実したこともあり、この5年で“ヲタ活”の存在感は本当に大きくなりましたね。これまではニッチなクラスタで、ネガティブに捉えられがちだった“ヲタ”も、若者のあいだではポジティブなイメージに変化。ヲタであることをオープンにする人が増えています。
要因としては、SNSの影響はもちろん、応援上映など、コンテンツの楽しみ方が多様化したことも大きいと思います。

崔:ヲタ活の対象は様々ですが、今の若者を語る上でヲタ活は外せない要素ですよね。“○○ヲタ”のジャンルも一気に広がっています。2015年頃はまだヲタ活に恥ずかしさを抱いている若者もいたかもしれませんが、どんどん市民権を得ていったように感じます。
長田:SHIBUYA109 lab.が2019年に行ったWeb調査(対象:15〜24歳の女性230人)でも、7割以上が自分を何らかのヲタだと思っていることが明らかになっています。
今の若者は、みんなすごくポジティブにヲタ活をしていますね。もはや「推し(応援している人のこと)」がいることが一種のアイデンティティになっていて、「ヲタ活は自分のパーソナリティの一部」と話す子も多いです。「ヲタ活は息をするのと同じこと」なんて語ってくれる子も!

崔:そこまでヲタ活がメジャーになっているんですね。SNOWでも、2017年~2018年頃からタレントさんなど、いわゆる“推し”とツーショットを撮れるキャンペーンをやっているのですが、いつも盛況です。若者の熱量を感じています。
【ポイント】
・“応援上映”など、エンタメコンテンツの楽しみ方が拡大
・今の若者は“推し”がいることが当たり前。“ヲタ活”が市民権を得た
・若者がエンタメコンテンツにかける熱量は高く、“ヲタ活をしていること”がアイデンティティに
「応援したい気持ち」が消費を後押し
長田:ヲタ活には今の若者の消費価値観の特性が凝縮されています。
一番の特徴は「応援消費」。CDやグッズを買うなどして、貢献しようと考えています。ヲタ活をしている若者は「自分が貢献することによって推しが大成することがすごく嬉しい」とよく話しており、応援する気持ちが消費を生んでいることがわかっています。
崔:「応援できる要素」は、日本でも話題になっている韓国のアイドルオーディション番組に顕著に表れていますね。最近だと『Nizi Project』は大人の方もイメージが付くのではないでしょうか?

長田:そうなんです! 今の若者は特に、まだ完成されていない「推し」がどんどん成長していく姿に共感したり、励まされたりしているようです。「推しの成長のために貢献したい、全力を尽くしたい」という気持ちが本当に強いんですよね。
また、SNSによって推しとの接点が増えたことで、推しをより身近に感じることができ、さらにヲタ活をはかどらせています。練習風景など、ステージの裏側が発信されることで親近感を感じ、応援したい気持ちが加速しているように感じます。
InstagramやYouTubeなどでの推しのライブ配信でコメントを送ると、自分のコメントを読んでもらえることも。
崔:若者の価値観をくすぐる仕掛けが充実していますよね。
【ポイント】・ヲタ活に注がれている熱量。その背景には若者の価値観の特徴である「貢献意識の強さ」
・推しの成長のために貢献したい気持ちが「応援消費」を生んでいる
・裏側やSNSでの身近な接点増加が親近感を生み、応援意欲を加速させている